「落下するココロ」
ボウガンの矢を放つ私の脳裏に浮かんだ一瞬のフラッシュバック。
お姉ちゃんと仲良く笑いながら登校している名雪さん。
倒れて動かない血塗れのお姉ちゃん。
あゆさんと漫才の様な絶妙な掛け合いをしている楽しそうな祐一さん。
そして私の肩を優しく抱いてくれたあの日のお姉ちゃん……
「鞄〜かばん〜、あゆちゃんの鞄〜」
手榴弾は後2個しかないから大事にしなくちゃね。
あゆちゃんの武器は私がもらってあげるよだってあゆちゃんにはもう必要ないんだからね。
どこかな〜あゆちゃんと一緒にバラバラかな〜
何かが名雪の横を素早くかすめて地面に突き刺さった。外れたボウガンの矢。
「きゃっ!」
名雪さんの悲鳴にふと我に返る私。先程までの殺意はどこかに消えて沸き上がる刹那の後悔。
何時の間にか涙を流していた。私は何をしているのだろう?
次の瞬間には名雪さんに背を向けてその場から逃げ出していた。
まるでテレビの中の出来事の様なお姉ちゃんの死。
お姉ちゃんの親友を、他の見知らぬ誰かを殺してもお姉ちゃんは還ってこない。
助けて下さい祐一さん(助けるのは私)。どうすればいいのお姉ちゃん(お姉ちゃんはもういない)。
私このままじゃ、もう……
自分の体の事を考えずに全力疾走したおかげで息が荒い。駄目、もう走れない。
そのまま冷たい地面に倒れ込む。
誰かの足音が近づいてくる。名雪さんが追いかけて来たのだろうか?
誰でも言い、もう誰か私を楽にして下さい。私は疲れました。
美坂栞は目を閉じた。
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