首輪に耳あり
「も〜一体どうなってんのよ!」
怒りの形相で沢渡真琴はズカズカと歩いていく。
まったくもって腹が立つ、一体何だというのだ。祐一も馬鹿みたいに捕まっちゃってざまぁみろだ。
それより私はお腹が空いた。それなのに鞄に入っていたペットボトルは何の味もしないただの水で
食料と思われるのは堅くて不味い乾パン。肉まんが食べたかった。
そして様々な物と一緒に入っていた入っていたイヤホンのついた小さな四角い物体。
そう言えば祐一がこれと似たような物を持っていた……中から音楽とかが流れてくるやつだ。
耳にイヤホンをさして電源らしきものを入れてみる。何も聞こえない。横に何かぐりぐりと回すものが付いて
いてそれを回すとその横の小さな画面に数字が現れた。
カチカチカチ……『17』
ザッっという雑音の向こうから聞こえてくる声。
「みさき、そこ危ない」
直後誰かがズッこける音。
よく分からない。
カチカチカチ……『35』
「どう? やっぱり千堂君って『受』だと思うんだけど、何だけ大志君だっけ、2人異様に仲いいよね〜」
「ちょっと静かに、あの家に誰かいるかもしれないでしょ」
やっぱりよく分からない。
カチカチカチ……『42』
何も聞こえない……永遠に続くかの様な静寂。
カチカチカチ……『58』
「私だって祐一が……」
! 初めて聞き覚えのある声、これは名雪だ。
「祐一が祐一があゆちゃんが悪いんだよあゆちゃんが悪いあゆちゃんが悪いあゆちゃんが…………」
ブツッ
素早く電源を切った。
「何なのよもう……馬鹿っー!」
わけの分からない恐怖から逃げるように真琴はその場から全力で駆け出した。
【沢渡真琴】支給武器:盗聴器
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