最強の3人






 綾香と葵と男の一連のやりとりを、遠くからじっ、と見つめる二つの眼があった。
 その眼は、「おいしい所をとられて悔しい」とも、
「自分より先にあのショートカットの子が行ってくれて助かった」と安堵しているようにも取れた。
 兎も角、
「むむ…あの悪の組織、なかなかやりますですのね…」
 御影すばるは、こんな状況でもやはりというか当然というか、正義感に燃えていた。
 敵は強大。脱出方法もあの男たちを出し抜く手も思いつかない。
 だが、自分は正義の味方として、何としてもこの島の皆や、人質になっている和樹さん以下略を救い出す方法を
「ねえ」
「ぱぎゅうっ!?」
 突然の声に動転し、つい後ずさろうとして自分が木の上に乗っていることに気がついたときにはもう遅く、

 どっし〜〜ん!!

「ぱぎゅう……」
 ばきばきと枝を数本折りつつ木から落ち、潰れたカエルのような体勢で顔を上げたすばるの眼には、
 先ほどの二人の女の子が映し出されていて、そのうちロングの女の子の手にはバタフライナイフが握られていて、
 そしてその刃先は間違いなくすばるの喉元に突きつけられていた。
 勿論、綾香は実際にナイフを使う気はない。少なくともまだ余裕のあるこの状況下では。
「見てたわよね?」
 こくこく、と頷くしかない。ナイフの刃先に肌が触れないように気をつけながら。
「率直に聞くわ。あなたは敵?味方?」
 幸運なことに、その質問はすばるにとって、他のどんな質問よりも答え易い質問だった。
「すばるは正義の味方ですの。あなたたちがあの悪い人たちと戦うのなら味方ですし、
 そうでないというのなら、敵ですの」
 その言葉に綾香は、すばるの瞳にじっ、と顔を近づけ、
「…うん、嘘は言ってないみたいね」
 あっさりと信用した。
「協力しましょう。何とかして、あの男たちを倒して、この島から脱出する為に」
すばるにとって、断る理由など何ひとつなかった。

【来栖川綾香 支給武器:バタフライナイフ】
【残り56人】



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