佳乃は燃えているか?






「セ、セリオさ〜ん、何処ですか〜」
セリオと来栖川姉妹を探してマルチは支給武器357マグナムを両手で握りしめ彷徨い歩いていた。
3人はもう合流したのだろうか? そんな事をぼんやり考えていた時
突然後ろの木から勢いよく何者かが飛び降りてきた。
「見ーつけた、その銃、君はお仲間一号さんに任命するよ」
右手に大きな黄色いリボンをした少女は自分よりも細身の銃を構えながらにこやかな笑顔でそう言い放った。
「はわわ〜……え? は、あの……」
おろおろするマルチを後目に霧島佳乃は更にまくしたてる。
「それじゃぁ続けて斬鉄剣を持ったお仲間2号さんを探しに行くよ〜
そんでもってお姉ちゃんと往人さんを悪い奴らから盗みにいくからね〜おー」
何が何だか分からないままマルチもつられて力無く拳を上に小さく「おー」と賛同する。
そう言えば赤いジャケットを着た猿顔の男とその黒ずくめの相棒、ニヒルな剣士が活躍するアニメを浩之さんが
笑いながら見ていた様な……彼女が持っている銃はまさにその赤いジャケットの男が愛用している確か……
その騒ぎに誘われた様に2人の背後からガサガサと何者かが現れた。
部屋で男にナイフを投げられた三つ編みの少女。
「ひっ……」
2人を、というより2人の手元の拳銃を見た途端慌てて逃げ出そうとする。
マルチが何か声をかけるより速く佳乃はその背後に狙いをつけワルサーP38の引き金を引いた。
少女の肩に銃弾は当たりそのまま少女はスローモーションの様に前のめりに倒れた。
「凄いよ〜一発で当たっちゃった〜」
「し、死んじゃったんですかあの人……」
「邪魔する敵は排除していかない駄目なんだから、さ、行くよ〜」
「あ、えと、その……ま、待って下さい」
相変わらずおろおろと倒れた人の方を何度も振り返りながらもマルチは佳乃に付いて行くしかなかった。

佳乃に撃たれた三つ編みの少女砧夕霧は倒れた。
だがその心肺機能が停止する事はまだ無い。この仕掛けを用意した主催者は余程のマニアだったのかも知れない。
佳乃の持つワルサーP38にはその赤いジャケットの男同様に一発目だけ麻酔弾という独特の仕掛けが施されていたのだ。
少女はしばしの間眠りについたのだった。

【マルチ】支給武器:S&WM19 357マグナム
【霧島佳乃】支給武器:ワルサーP38



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