小さな箱と3つの板
なんでこないな事になったんや、馬鹿げてる、なんとかせんと、なんとか……
保科智子は何かに追われるように早足で歩いていた。
気持ちが焦るばかりで何も思い浮かばない。
それより喉が乾いた、少し休もう。比較的大きな木の下に腰を下ろし自分の鞄を漁ってみる。
ミネラルウォーターの入ったペットボトルを取りだして更に各人に与えられると言う支給品を探してみた。
小さくて薄い長方形の物体が手に触れた。巷では一千万台突破とか言われている最新の携帯ゲーム機だ。
中央に液晶画面、左に十字キー右に2つのボタン、ごく普通の携帯ゲーム機に思えた。
「こ、こんなもんでどないせーちゅうねん!」
思わず叩き付けそうになったが思いとどまりゲーム機を裏返してみた。
本来各種カセットを差し込むハズのスリットは今は空だ。何も差さっていない。
慌てて鞄をひっくり返すとペットボトルや何やらと一緒に3つの物体がボトボトと落ちてきた。
このゲーム機用の薄べったいカセットだ。
2つは薄い普通のカセットだったが残りの一つは何やらアンテナがついた巨大なものだった。
まずはその大きなカセットを差し込んで電源を入れてみた。
キュピーン
静寂の中思ったより大きな起動音がして思わず心臓が飛び出しそうになる。
メーカーのロゴ等は出ずしばらく真っ黒な画面が続いたと思ったら
いきなり縦線横線で仕切られた画面にいくつかの光点が現れた。透けて見える地図らしき模様。
ボタンを押すと画面が縮小されて部屋で説明された島の全土と似た形をした囲いが現れた。
その中で少しずつ動く光点、じっと動かない光点等の様々な小さな光。
智子の額から一筋の汗が流れた。電源を切り次のカセットを入れてみる。
ラベルも何も無かったがマジックで乱暴に「A」とだけ書かれていた。
起動音の後画面の端から何か毛玉の様なキャラクターがピコピコ音を鳴らしながら歩いて来た。
画面には「ポテトのアイテムリスト」の文字。
ボタンを押すと画面にずらっと01から60までの各支給品と思われるモノの名称が並んだ。
それぞれのアイテムにカーソルを合わせてボタンを押すと毛玉から台詞が表示され
御丁寧に拳銃の撃ち方、銃弾の装填の仕方までピコピコと解説してくれる。
「ははは……」
智子は力無く笑って木にもたれかかった。
【保科智子】支給武器:携帯ゲーム機&カセット×3
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