愛憎連鎖
「うぐぅ……」
月宮あゆは森の中を一人歩いていた。
ただでさえ暗闇が苦手な上にこの状況である。このような場所を歩くのは避けたかったが、建物の周囲が森で囲まれているため仕方がなかった。
――ガサガサッ――
茂みで何かが動く。
「――ッ!?」
それはただ動物が動いただけなのだが、恐怖心ゆえに過剰反応してしまった。
「もう嫌だよ……祐一君……ボク、怖いよぉ」
頭を抱えて泣き出してしまう。
と、ふいに何かがあゆに向かい投げられた。
「うわぁぁっ!?」
あわてて飛び退くが、投げられたそれは、あゆの目にはただの『丸いモノ』としか映らなかった。
「なんだろ、これ」
おどおどとそれを手にとり、次の瞬間、爆発した。
自分に何が起きたのかもわからぬまま、あゆはこの世から消え去った。
「あゆちゃんが悪いんだよ。祐一を独り占めするんだもん。わたしだって祐一のこと好きだったのに。だから、あゆちゃんが悪いんだよ」
手榴弾の爆発で消し飛んだあゆを見て、水瀬名雪はそう呟いた。
暗くてわからないだろうが、その瞳の色は尋常ではない。壊れたテープレコーダーのようにブツブツと繰り返す。
少したった後に、その狂気に満ちた顔を上げる。
「でも、もういいんだよ。あゆちゃんしか見なかった祐一も悪いんだ。祐一も死んじゃえばいいんだ。待っててねおかあさん。わたし、ぜったいおかあさんのことたすけるよ――」
その様子を、木陰から静かに見守る者がいた。
(祐一さんを助けるつもりなら見逃してあげましたけど、どうも違うようですね。
なら、確実に殺せる今のうちに、殺してあげます)
栞は持っていたボウガンを構え、名雪に標準を合わせ、発射した。
【月宮あゆ 死亡】
【残り59人】
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