誰かに似た少女(ひと)
静寂の闇夜に突然響いた爆音。
大丈夫、ここからは近くない、かといってそれ程遠いわけでもない。
何の音かはよく分からないがとにかく殺し合いはもう始まっているという事だろうか?
「舞……」
倉田佐祐理は親友である川澄舞を探していた。
舞はきっと何処かで待ってくれているものだと思っていた。しかし彼女は居なかったのだ。
佐祐理を待っている間に何か起こったのかそれとも……ワタシハミステラレタ?
いや違う、きっと何か事情があったのだ、きっとまた会える、きっと。
けど再会して……それから? トボトボと歩きながら夜空を見上げ呟いた。
「祐一さん、佐祐理はどうすればいいんでしょうね」
その時どこからか嗚咽混じりの泣き声が聞こえてきた。
頭では危険だ、近づくなと警報が鳴っているのに何故か誘われるようにそちらに歩いていく。
誰かが座り込んで泣いていた。まだ小さい、子供の様だ。
近づく足音に気づいてビクッっと体を震わせた誰かは恐る恐る涙と鼻水でくしゃくしゃになった顔を挙げた。
何かに心臓を握られた様な衝撃。
まだあどけなさを残した少女は死んだ弟の一弥に似ていた。
「うぐっ……みゅ〜!」
少女は突然飛びかかり抱きついてきたので2人共そのまま一緒に倒れ込んでしまう。
「うっ……ぐっ……みゅ〜、みゅ〜、うぐっ……」
少女は佐祐理の胸に顔を埋めて泣きじゃくっている。
間近で見る少女の顔はそれ程一弥に似ていなかった。
「怖かったんだね……大丈夫だから泣かないで、ほら」
佐祐理のハンカチで顔を拭く少女。他にタオルか何か入ってはしないかと鞄を漁ってみる。
やたらと大きく重かった鞄には直径30p程の鉄製の中華鍋が入っていた。おたまも付いている。
これが支給武器なのだろうか? 呆然としているとこちらを見つめる少女の視線に気が付いた。何だか妙に照れくさい。
「あははーっ、私は倉田佐祐理。あなたは?」
「う〜……まゆ、椎名繭!」
【倉田佐祐理 椎名繭合流 】
【倉田佐祐理】支給武器:北京鍋(おたま付き)
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