母性
高倉みどりは、隠れやすそうな場所を求めて、森に侵入していた。
踏み鳴らされた道を歩いていて、ふと、目の端に何かが映った。道端に、紙が落ちている。
(---何かしら?)
拾い上げてみると、大きな文字で一言。
『こっちに来ないでほしいの』
切り取られたスケッチブックの1ページだった。そのすぐ横に、森に分け入った跡がある。
(ああ。教室で揉めていた上月って娘か。)
それほど近くで見たわけではないが、とても一人では生き残れないタイプのように思えた。
こんなに無防備に自分の居場所を教えてしまう少女に危機感を抱いたみどりは、紙を回収して森に入った。
(こんな娘まで、殺し合いに参加させるなんて・・・)
今までの動揺が主催者への怒りに変わり、そしてその怒りは年端もいかない少女への保護愛に変わった。
(微力なりとも、この娘だけでも守ってあげよう。)
掻き分けられた道に歩を進めるみどりの前に、またも紙が。
『ちかよらないで』
ちょっと困ったような顔をしながら、みどりは紙を回収して先に進む。
---結構奥まで来た。
あれからも紙を数枚回収した。
(・・・段々、文字が乱れてきている。)
それはそのまま、少女の心の乱れなのだろう。早く合流して、安心させてあげなくては。
ふと先を見ると、またも紙が落ちていた。
ちょっとため息混じりに紙に近寄った瞬間・・・
ズバゥゥゥゥゥーーーーン!!
突然の爆音に、澪は閉じていた目を開いた。
しかしすぐに目を閉じ、また、ひたすら震えるという作業に戻っていった。
【高倉みどり 死亡】 【残り60人】
【上月澪】 支給武器:対人地雷(残り2個)
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