誰がために銃はある?






「だ! 誰!?」
 足音に気づいて振りかえる。そこにいたのは姫川さん。
「あの……。神岸さん…」
 今までわたしはただただ震えていた。
 殺し合いを宣言され教室から出された後、たまたま発見したこの洞窟に篭って。
 でも外で初めて会った人が知合いで本当に良かったと思う。
 殺し合いなんてしたくないから。
「あはは…。姫川さん……。なんなんだろうね…。わたし達なんでこんなのに…え…ぅぅ…」
 彼女の方が年下なのに泣き出してしまうわたし。
 いつもならやさしく慰めてくれる浩之ちゃんはいない。
「神岸さん…」
「なんなのこの支給武器…。本物の拳銃だよ…? 本当に殺し合いしろっていうの…?」
 これを使って人を殺していけば、わたしが浩之ちゃんを助けられるかもしれない。
 だけどできるわけない。
「『銃は今回超貴重だ』とか言ってたけど、わたしが持ってどうするんだろうね…。友達殺せるわけないもの…。意味ないよ…」
 使われない銃なんて無意味。でも何故か…。
「そんなことないですよ…」
 姫川さんがよくわからないことを言った。
「私が使いますから」
 ……え?
 胸が熱い。これが痛みだと理解した瞬間から、わたしの意識は急速に遠くなっていく。
「藤田さん…。いえ、浩之さんは私が助けます…」
 血に塗れたサバイバルナイフを握ったまま、姫川さんがわたしを見下ろす。
「浩之さんは私を一番愛していると言ってくれました…」
 え…? 浩之ちゃんの恋人はわたし……。
「神岸さんのせいで…。今まではデートもエッチもたまにしかできなかったけど、これからは私一人の浩之さんです」
 え…? え? それって…。
 わたしが考えられたのはそこまで。
 意識は暗闇へと沈んでいってしまった。

【神岸あかり 死亡】
【残り61人】




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