無題
こんなものを殺人の凶器として扱い与えるとは、なんともったいないことか!
と、思う者は少なくはないだろう。
当時はカセット一本で一万円を越えるものも少なくなかった恐ろしい代物。
それが、「すうぱあふぁみこん」だ。
生きて帰れることが保証されているならば、温存し、私物化または売り払って財布の潤いにしたいものだ…というのが普通の考え方かも知れない。
しかしこのゲーム機器は、平時においてもそれすら凶器として捉えられる男の手に渡ったのだ。
彼は運命的な何らかさえ、両手に軽くかかる重みに、強く、感じていた。
同一の発売メーカーは、今やゲームコントローラーの一種にこう銘打っている。
ヌンチャク、と。
実際のそれと同様のモノを得た男・服部竜二は、
これは面白くなってきた―――
と、胸を高鳴らせていた。
徒手空拳は好きだが、相手もそうとは限らない。
むしろ思い思いの武器を最大限活かしてくるだろう。
竜二はもし己が素手でそれらと闘ったとして、勝ち得る自信に満ち溢れていた。
だがこの武器を得たことにより、戦う方法は多様に分岐する。
それらを存分に楽しめる。
面白い。
その頃、彼の兄が呆然としながら手にしていたのは、のーかっとぼんだったとか、そうではなかったとか。
とりあえず、つかってみた。
りゅういち「アイヨー」
よしの「ギャー」
【吉野光明 死亡】
【残り54人】
♪ピンポンパンポン
吉野、出血多量により死亡。
繰り返す、吉野、出血多量により死亡―――
まえだ「吉野が!?…一体誰がっ」
しみず「…鼻血…なわけないよなぁ、わははは!」
さおとめ「不謹慎ですよ、清水さん」
彼の鼻の血管の切れやすさを知るりきには、そうふざけたことには聞こえなかった―――
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