主のために
俺は、たった今殺した男の道具袋を漁っていた。
おかしな髪型と服装の、よくわからない男だった。
【銀座地下の世紀末風モヒカン悪魔使い@真・女神転生 死亡確認 残り28人】
罪悪感は、ない。
俺たちはシャーロット様の剣だ。
シャーロット様を、生きて返す。それが、自分のすべてだ。
― - ―
褐色の肌に、ウェーブのかかった銀色の短髪の少女がいた。
彼女――ドリスは、たった一人の主のために、家名を捨てた。
主の手として、足として、目としてずっと共に生きるために。
たった一人の主、シャーロット・E・フィーロビッシャーを、どんなことをしてでも護る。
彼女が、最初の場所に呼び出された時も、真っ先に探したのは主のシャーロット様の姿だった。
嘘であってほしいと名簿も彼女は確認した。
だが、現実は無情。
ここには、自分と、自分と同じように主を守ると誓った仲間二人と、主がいた。
この殺し合いを開いたあのフード達は、魔剣でも出せないほどの恐ろしい力を持っていた。
逆らえば、みな死ぬ。――しかし、規則通り殺し合えば、たった一人でも生き残れる。
なら、そのたった一人を主シャーロット様としよう。
今殺した男を思い出す。
この男は、自分の姿にも気付かないくらい怯え、取り乱し、子供のように手足を振り回していた。
突然殺し合いなどに放り込まれれば当然だろう。
彼女は、まだ幼い主を思い、胸を押さえた。
いつも、必死に気丈にふるまっているが、まだシャーロット様は12歳なのだ。
今、彼女はどうしているのか。
それを考えるだけで不安でたまらなくなる。
泣いてはいないか。おびえてはいないか。どこぞの誰かに襲われてはいないか。
「シャーロット様は、一人じゃない。俺たちがついてるんだ……」
きっと、仲間二人も同じように考えるだろう。
最優先に、シャーロット様を探す。
そして、もしも誰かに会ったら、シャーロット様を知っているか聞く。
そして知らなかったら――殺す。
シャーロット様に手を汚すようなことはさせたくないとドリスは思う。
なら、自分がやる。自分たちがやる。あらゆるものから、シャーロット様から守る。
自分たちの誰かと、シャーロット様だけになったのを確認すれば、あとは……
彼女はゆっくりと、男を切り裂いた剣を持ち上げる。
手の中にあるのは、彼女が愛用していた十字鍔の大剣、クレイモアの魔剣ではない。
今もつは、鉈に似た形の巨大なで無骨な、永遠を生きる神剣。
彼女の『求め』をかなえるために超状なる力を授けるモノ。
第四位永遠神剣――『求め』。
使うものの身体能力を大幅に底上げし、様々な能力を付与するものだ。
『求め』をクレイモアと同じように背中に備え、彼女は走り出す。
もう、最初の一歩は踏み出した。なら進むだけだ。
【ドリス】
【所持品:不明支給品1〜5 永遠神剣『求め』 基本セット一式×2】
【状態 健康】
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