悲しみを越えて
「う〜ん、誰もいねえな〜」
川に沿って上流に歩きながら、刃は呟いた。
もう大分歩き続けているが、未だに誰にも出会っていない。
気がつけばもう昼近くなっている。
「ちょっと早いけど、休憩して昼飯でも食うかな」
そう言うとその場に腰を下ろして、バックから食料を取り出そうとする。
その時だった。
ドオォォ……ン
「ん?何の音だ?」
遠くから、何かが爆発するような音が聞こえてきた。立ち上がって音のした方を見る。
「あっちの方から聞こえたな」
何の音かは分からないが、自然に出る音とは思えなかった。
「ひょっとして、誰か戦ってんのか?」
刃は急いで荷物をまとめて、音のした方に駆け出した。
それから数分程走り続けた頃。
『こんにちは皆さん。12時になりましたので最初の放送に入ります』
突然響いてきた声に、驚いて足を止めた。
「な、なんだ?誰かいるのか?」
言った後で、その声が、最初の部屋にいた女のものだと気づいた。
「そっか、これが放送ってやつか」
聞き逃さないようにじっと耳をすます。
そして、死者の名前が告げられた。
「……そんな…」
呆然とした様子で呟いた。
『宮本武蔵』
聞き間違いでもない。はっきりと聞いた。
「ムサシが…死んだ…?」
信じられなかった。
スケベで意地の悪いところもあったけど、強くて賢くて、頼りになる仲間。
殺しても死なないような、あのじいさんが死んだりするわけないと、思っていた。
「ちくしょう…」
ぺたんとその場にしゃがみ込み、
「ムサシの馬鹿野郎…何死んでんだよ…」
そう呟くと、静かに泣き始めた。
「…いつまでも泣いてるわけにはいかないよな…」
涙を拭いてゆっくりと立ち上がった。
「さやかはまだ生きてる。早く捜して、護ってやらないとな」
それに、と続けた。
「あの女だけは勘弁ならねえ。絶対にぶった斬ってやる」
改めてそう決意し、再び歩き出した。
【Dー3 川沿い/第一回放送直後】
【鉄刃@YAIBA】
[状態]健康 悲しみ
[装備]木の棒、閻水 @烈火の炎
[荷物]荷物一式(食料若干減、水二日分)
[思考] 1.音(ゾフィスの呪文)のした方に向かう
2.峰さやかとの合流
3.覇王剣を取り戻す
4.白面の者を倒す
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