走る希望






白面の者を放って置くつもりはさらさらない。
あいつを、あのでっかい化け狐を倒さなくては。



「とらぁーーっ!どこだぁーーー!!」

共に旅をし、幾度と無く死線を潜り抜けてきた頼れる相棒の名を叫ぶ。
――が、いつもなら憎まれ口の一つや二つをすぐに返してくるアイツからの返事は、全く無い。


蒼月潮は走っていた。
動かないと。ここにいてじっとしてたって仕方が無い。
先程見た地図を確認した所、近くに無学寺という寺があるらしい。
さらにそのまま道なりに進めばトンネル。
この二つがある北へ行こう。そう決めたのだ。

「流にーちゃーん!!」

うしおの知る信頼できるもう1人の仲間、秋葉流の名を叫ぶ。
――やはりというべきか、返事は無い。


北へ行くには、うしおなりに考えた、ちょっとした理由があった。
光覇明宗で修行を積んだ僧侶である彼なら、もしかしたら錫杖なんかを探しに寺に寄るかもしれない。
また、彼の相棒のとらは一応とは言え妖怪。こんな朝から日差しの強い場所にいるよりかはトンネルの暗闇のなかにいる方がよっぽど妖怪らしい。



・・・・と、そこまで考え、うしおは後者は無いなと苦笑する。
あのバカのことだからどーせ朝っぱらからフラフラしてるんだろうな。
アイツほど妖怪らしくない妖怪も珍しいぜ。

「たはは・・・・アイツどっかの人間に手ェ出してたらとっちめてやんねーとな」

もちろん付き合いの長い身として、とらがそんなことをするヤツでない事ぐらいは分かっている。
共に戦ってきたことで培ったこの信頼関係は決して崩れることは無いだろう。
自然と彼から笑みがこぼれる。

右手に光る朝日が映し出す少年の横顔。
その表情から伺えるモノは―――


――――白面の最も恐れ、嫌うであろう『希望』そのものだった。


【F-10 道路/ゲーム開始から1時間】
【蒼月潮@うしおととら】
[状態]健康
[装備]雷撃刃@犬夜叉
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)
[思考]1.とら・秋葉流を探す
   2.無学寺を目指し北へ行く
   3.白面の者を倒す



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