ジジィとお嬢と変態と






戦神と姫との戦いの跡。
今、その場に近づく二つの影があった。

「おい、ジジィ。あの家の窓壊れてねーか?」
「うむ、そのようじゃな。硝子が吹き飛んでおる。何かあったと見て間違はないじゃろう。
 危険が伴うが、何かしらの情報が手に入るかもしれん。
 どうじゃ、入ってみんか?」
「俺はかまわねぇぜ」
「そうか、では決まりじゃな」

影の正体は早乙女乱馬と宮本武蔵。
二人は沖木島診療所を目指す途中、偶然にもシェリーの眠る家屋を発見する。
砕けた硝子、踏み荒らされた庭。何かがあったことは一目で分かった。
話し合いの結果、二人はこの家に入ることにする。

そして、入り口が開かれた

二人を待っていたのは予想外の状況。
見知らぬ女性がベッドの上に寝かせられている。

「…どうする?」
「うーむ、まさか女性が眠っておるとはな。これは起きるまで待つしかあるまい。
 それに、服装の汚れ具合から見ても彼女には何かしらの出来事があったはずじゃ」
「けどよ、こいつがゲームに乗ってないとは限らねーぜ。
起きる前に手足でも縛った方がいいんじゃねぇのか?」
「乱馬の言う通り用心するに越したことはないが、もし彼女がゲームに乗ってなかったらいらぬ警戒心を与えてしまうかもしれぬ。
 そしたら、聞けることも聞けまい。
 すまぬが、ここはそこに立て掛けられておる剣をワシらが押さえておくということで我慢はしてくれぬか?」
「ったく、しょうがねーな。けど、ジジィの言う通りかもな。
 いいぜ、その案に乗ってやるよ」

そう言うと乱馬は枕元に立て掛けられていたスパヴェンダを取り上げる。

ココは私が救わなければならない。
使命とか義務ではない。
親友を助けることに理由などいるものか。

やっと掴めた幸せ。
それが一度だけではなく、二度も潰されようとしている。
そんなこと許しておくわけにはいかない。
ココの幸せを取り戻すためにも、こんなゲーム一刻も早く止めさせなければならない。

あの日、どん底にいた私をあなたは救ってくれた。
そのことは感謝してもしきれない。
だからこそ、私はあなたを救いたい。
だからココ、何であなたはこっちを振り向いてくれないの?

そこでシェリーの意識は途切れる。いや、正確には現実に引き戻されていった。

「………?」
「おっ、ジジイ、起きたみたいだぜ」
「…あなたは?」
「俺は無差別格闘早乙女流・早乙女乱馬」
お下げ髪の青年がそう答える
「で、ワシは宮本武蔵じゃ」
次いで小柄な老人が名を名乗った。
どうやら、私は気を失っていたようだ。あの時、鈎爪に握られ電気の様なものが流された時からの記憶がない。おそらく、その攻撃によるものだろう。

シェリーが状況を推測しているのをお構いなしに、武蔵の言葉が飛び込んでくる。
「お嬢さん、寝起きのとこを悪いが、もしよければ名前を伺えるかな?」
「シェリー、シェリー・ベルモンドよ。ムッシュ宮本」
「ではシェリー殿、単刀直入に聞こう。お主に何があったのか教えてくれぬか?  
 服の具合からも何かあったことは明白。それにこのような家で不用心に一人で寝ていたことにも疑問が残る。
 答えられる範囲でよい。ワシらに教えてくれぬか?」
「…いいわ、教えてあげる。この家で何が起こったのかを」

そして、シェリーの話しが始まった。

軍服の男、異形の左腕、そして敗北。
気を失うまでの顛末を嘘偽りなく武蔵と乱馬に聞かせる。

「キース・シルバーか。また恐ろしいのが近くにいるもんじゃのう。
 しかし、今ひとつ解せんな。失礼だが、何故シェリー殿は殺されなかったのだ?
 向こうからいきなり襲ってきたのなら、それはゲームに乗ったということ。
 シェリー殿を生かしておく道理がない」
「聞く限りだと、そのキース・シルバーってのは戦闘狂なんじゃねぇのか?
 勝負をつけるのだけが目的とか」
「うむ、そうも考えられるな。しかし、真実はわからん。
 本当のことは本人に聞くしかないじゃろう。ワシらが考えたところで無駄なことじゃ。
 ところで、シェリー殿はこれからどうするんじゃ?ワシと乱馬は診療所に行く予定なんじゃが。
 よかったら一緒に来ぬか?」
「すいませんが、その提案遠慮させてもらうわ。
 私には先に成すべきことがあるので」
「それは残念じゃのう。けど、成さねばならんことがあるなら仕方ない。
 おい乱馬、あれを返してやれ」

そう言われ、乱馬は預かっていたスパヴェンタをシェリーに手渡す。
「悪いな、用心のために預からせてもらったぜ」
「かまわないわ、ちゃんと返してくれたから。では、私は行かせてもらうわ。
 ごきげんよう、ムッシュ宮本、乱馬君、お互い無事に元の世界に帰れるといいわね」
「お主の方こそ気を付けてな」
そう言い残しシェリーは敗北の地を後にする。


「シェリーか。あれは相当の修羅場をくぐってきたって顔だぜ」
「ああ、ワシの提案を断った時の表情からは有無をも言わせぬ覚悟が伝わってきた。
 それだけ成さなければならぬことが大きいのじゃろう。
 しかし、あのような者がゴロゴロいると思うとちょっと憂鬱じゃわい…」
「何言ってんだ、400年生きた宮本武蔵がそんなことでびびるのか?」
「わしはお主と違ってナイーブなんじゃ。乱馬の単純さが羨ましいわい」
「んだとー、このクソジジィー!まちやがれ!」

こうしてまた二人の鬼ごっこが始まった。




【I-6 道路/朝】
【シェリーベルモンド@金色のガッシュ!!】
[状態]土まみれ
[装備]スパヴェンタ@からくりサーカス
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)
[思考]1.ココ・清麿と合流
   2.ココを守る
    3.ココと共にゲームからの生還

【I-6 民家/朝】
【早乙女乱馬@らんま1/2】
[状態]健康、怒り、男
[装備]なし
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)、アイテム不明
[思考]1.あかねを捜す
    2.半信半疑だがムサシについていく
【宮本武蔵@YAIBA】
[状態]健康
[装備]なし
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)、アイテム不明
[思考]1.診療所で薬を手に入れる
    2.キース・シルバーを警戒
    3.刃達と合流する



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