日頃の行い
「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ、やっと積めた、
しかし、こんなところにリアカーがあるなんて、これも、日頃の行いのおかげだな。」
吉田は、バッテリー切れした異常に重いマリアを引きずり草原をなんとか進んでいった、
その方向は、マリアが行こうとした方向、つまり建物がある所へ行けと言われ向かおうとした方向である。
草原エリアを抜け林エリアへ着いた時、初めてリアカーが林の入り口にあるのを確認したのである。
「もうすぐだ!もうすぐおれがヒーローになれるんだ!その時には見てろよ、上杉達也!」
マリアを充電できればヒーローになれる、そう自分に言い聞かせここまで引きずってきたのだ
リアカーに重いマリアを積めたことで一気に気が緩んでしまった、そこへ・・・
「ちょっと、あんた!こんな所に気絶した女の子を連れ込んで何をするつもりよ!?」
「へ?」
次の瞬間、吉田の意識はブラックアウトするのだった・・・
「まったく、こんな状況だからって女の子をこんな所に連れ込むなんてセクハラじゃすまないわよ!」
何やら勘違いをして吉田を手刀で気絶させた染井芳乃は一人文句を言いながらリアカーにいるマリアに近づいていった
「ちょっと!あなた、大丈夫?」
肩を揺すった所で異常に重いことに気がついた。
「この子、人間じゃない!?ロボット?でも・・・うん、この子やっぱり魂があるわ!
古代の遺品とかガーディアンの類かしら?」
古代の品というのは間違いは無い、ただし作った本人は今の所生きているので「遺品」とは言えないが・・・
「とにかく魂があるってことは口寄せが使えるわね。」
芳乃はそう言ってマリアの額に手を当てた。
口寄せとは霊媒体質である芳乃がもっとも得意とする能力である
普段は遺跡の宝を隠した本人を直接呼び出してそのありかを聞き出すのに使うのだが
以前、ガーディアンから情報を聞き出すのに使った事がある。
それをやろうというのだ。
「さぁ・・・私に教えてちょうだい。
とりあえず基本的な情報と最近あなたに起こったことを・・・」
数分間、口寄せの為に集中してた気をいったん緩める。
「ず・・・随分はちゃめちゃな人生(?)送ってるわね・・・・」
芳乃が読み取ったのは彼女を作ったドクターカオスのことと美神達との日常である。
幽霊の存在が一般的に認知されている世界、魔族との戦闘、
なによりも美神の言動は驚くを通り越して呆れてしまう。
とは言っても、軍隊や秘密組織などが狙う遺跡を狙って動き、時には潜入する芳乃の日常を知れば
美神達でも呆れるだろうし、芳乃の金のがめつさを知れば横島達は美神そっくりだと思うかもしれない。
「とりあえず、マリアが今この島にいる人間の中で知ってるのは
この子の製作者で知識を活用しすぎて次々と過去の知識を忘れる、ドクターカオス。
ゴーストスイーパーて仕事をしている自己中女の美神令子とその下僕の横島忠夫と魔族のメドーサ・・・
カオスてのは正直頼りになりそうもないわね・・・
偶然合ったら一緒に行動する程度の認識でいいかしら?
そして、美神令子と横島忠夫・・・
美神令子て人は頼りになりそうだけど下手したらこのゲームに乗りかねないわね・・・
でも横島忠夫って男の子と一緒ならいきなり攻撃するってことわ無いでしょ、とりあえず横島って男の子を捜してみるか
それにしても、妖怪はともかく魔族なんてのもいるとわね・・・
メドーサて奴は警戒しないと・・・
後は・・・」
芳乃は、気絶している吉田の方を見た。
吉田とのやりとりはもっとも新しい出来事なので鮮明に記憶されていた。
「ただの高校生ね、でも、マリアの力を見て増長しちゃってる・・・下手するとそのまま殺し合いに参加しちゃいそう
一緒に行動したとしても足手まといにしかならないわ、
結構かわいい顔してるから、これで謙虚で素直な性格だったら一緒に行動してあげてもよかったんだけど・・・
と言っても殺す気にはなれないわね・・・
よし、あなたはこのまま寝かせといてあげる、そのかわりこの子と荷物は貰っとくわね。」
自分の勘違いで気絶させておいて勝手な言い草である。
そして吉田が引きずって来た後を見ながら思考する。
「マリアを引きずってきてかなり体力を消費しててそう簡単には起きないと思うけど、
リアカーのタイヤの跡を追ってきたら厄介ね・・・」
マリアの体重ではタイヤの後を付けずに運ぶのは不可能である。
「そうだわ!相手は唯の高校生だし、タイヤの跡なんて見つけさえしなければ、それを捜すなんて発想出来ないかも!」
というわけで早速実行する、小柄な吉田を起こさないように抱上げ、5mほど放れたところに寝かせる、
そして吉田のバックからコンパスを出して草原エリアの方へ吉田がすぐ見つけられように3mほど離れたところに置く。
「これでうまくいけば、私が草原の方に逃げたと勘違いしてくれるかも・・・
そして私は・・・やっぱり村に入るしかないわね・・・」
実は芳乃は道なりに進んで鎌石村に入ろうとしたのだが、
村から煙が出てきたのを見て、村に入らず周辺の林の中を詮索していたのである
できれば村の中には入りたくは無い、だがリアカーを引いたまま行動するのは目立ちすぎる、
そしてマリアを置いて行くのはあまりに惜しい、
芳乃としては一刻も早くマリアを起動させたい所である
「さて、このまま真っすぐ村に入りたいところだけど、
この男の子が起きてそのまま村の方向に行きかねないし、
一旦来た道を戻ってから村に入った方がいいかしらね、電気が来てればいいんだけど・・・」
芳乃はリアカーを引いて行ってしまった。
一方、吉田の方は気絶したまま残されたまま気づく様子も無い、
もしも吉田が2年の頃の『謙虚で素直な性格』だったら芳乃と一緒に行動していたかもしれない
結局、3年になってからの『日頃の行い』の悪さが災いして彼に残されたのは
3m程離れたところにあるコンパスと極度の疲労だけであった・・・。
【C-2(草原部と林部の境目)開始から2時間経過】
【染井吉野@SPPRIGAN】
[状態]健康
[装備]獣の槍@うしおととら
[道具]荷物二つ分(食料&水4日分と分厚いマリアの説明書)リアカー
[思考]1.一旦来た道を戻って林に近い家の電源でマリアの充電
2.御神苗優、横島忠夫との合流
3.協力できそうな参加者を探す
4.ゲームからの脱出
[備考]支給品『マリア@GS美神極楽大作戦』はエネルギー切れ
【吉田剛@タッチ】
[状態]極度の疲労をした上、気絶中
[装備]なし(学生服)
[荷物]無し、ただし3m離れた場所にコンパスあり
[思考]停止中
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