黒の化け物 二尾の少女を屠る
一人の少女が、周囲を警戒しながら進んでいる。
「全く、わざわざこんな土地を開発してすることが殺し合いだと?
バトルロワイアル?坂持キン○ツにでもなったつもりか?」
歩を進めながらも小声で主催者に向けてつらつらと批判を浴びせている
やがて口を動かすことに疲れたのか、その後は黙々とただ歩き続けていた。
三千院ナギは、自分の執事であり、想い人でもあるハヤテのことを考えていた。
(私は死なない。ハヤテがいるから。
ハヤテならきっと自分を探し出してくれる。きっと自分を守ってくれる。
ハヤテならどんな敵にも負けない。相手がマフィアでも 怪人でも 怪獣でも
巨大ロボでも このゲームにいるであろう殺人鬼にも あの女にも ―――)
「待ってるぞ。ハヤテ…。」
大声で名前を呼びたい
しかしこんな状況では、それは自分の死を招くことになりかねない。
「待ってるぞ………。」
手を握り締めて低く呟く。
いつの間にか…手のひらは汗でじっとりと湿っていた。
そんなことを考えながら進んでいくと…目の前に寺のような建物が見えてきた。
おそらく地図の「観音堂」という場所だろう。
耳を澄ましてみるが、中に人がいる様子はない。
そろそろと中に入り戸を閉じると、嫌いな暗闇が部屋の中を支配し
適当な場所に腰を下ろすと、疲労と恐怖がどっと押し寄せてきた。
動悸が激しい。
(まるで…自分の心臓が耳元で鳴っているようだ……
フン……日頃から…少しでも…運動しておくべきだったな…。)
柄にもなく反省をしてしまう。
激しい動悸の理由を、慣れない運動のせいにする。
自分の感じる恐怖を誤魔化すために。
(さて、 これからどうするべきだ?
周囲からいわゆる貧弱のレッテルを貼られている私の武器はコレだし…
まぁ剣や斧など手に入れたところで使えないが…
しかしこうしている間にもハヤテやヒナギクやタマが危険な目に…
いや、あの3人(?)は数々の戦いを切り抜けてきた猛者たちだ。心配など…)
と、色々と思考を巡らしていたときだった
ドアが弾け飛んだのは
「!!」
ドアが吹っ飛び、部屋に光が射す
そして先ほどまでドアがあった位置にいたのは
所々に隈取りがある黒い化け物だった
「ククク…やっぱり女のガキか…。」
その顔に浮かぶ笑みを見た瞬間 ――― ナギは動けなくなった
それはほんの1秒程度のことだったかもしれない。
しかし我に帰り左の手首につけた「支給品」に手を掛けたときには、既に目の前には黒い化け物が ―――
「なーにやってやがる?」
ゴキャリ
突然、視界と思考が一瞬真っ白になった
とても強いショックを受けたかのように
「は…離せ!」
「おっと!」
恐怖も忘れ貧弱な拳を繰り出すと、化け物はニヤニヤと笑いながら後ろに一歩下がった。
心臓が早鐘を鳴らし、体全体がじんじんと痺れているように感じる
そして…一際痺れが激しい右腕を見る
それはもう 腕ではなかった
骨は突き出し血は流れ肉は裂けだらしなく下がっていた。
痺れと同時に、じわじわと痛みが現れてくる
キッと相手を睨み付け、怒鳴る
「…あっちいけ!!」
こんな状況でも「誰が泣くか」という 意地のようなものがそこにあった
化け物が爪を振るい 血が噴き出す
そして彼女は 意識を失った
(ひゃははははははは!)
黒の化け物が心中で笑う。その名は『紅蓮』
(武器はねえのか……ま、美味かったからよしとするか。)
黒の化け物が笑う。その目的は全員の殺害
強者も弱者も全てを自らの快楽と優勝のために屠るべく、化け物は動く
(白面のヤツも妙なことをしやがる…。ま、なんか考えがあるんだろうな。
さて、次の獲物を探しにいくか。)
最後に一度振り向いて、化け物は笑みを浮かべた
(感謝しろよ。顔が解るように、首だけは残しといてやる。)
そして観音堂には
体の無くなった少女
持ち主のいなくなったデイパック
装着者がいなくなった時計が残っていた
生きているものはなく
時計だけが動いていた
【C−06 観音堂/早朝】
【紅蓮@うしおととら】
[状態]:健康 上機嫌 満腹
[装備]:なし
[道具]:荷物一式(食料&水:2日分) アイテム(不明)
[思考]:1.とにかく殺しまくる
2.ゲームに優勝する
【三千院ナギ@ハヤテのごとく】 死亡確認
【残り67人】
* 「ナギのデイパック」「腕時計型麻酔銃@名探偵コナン」はナギの殺害された現場(観音堂の中)に落ちています
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