解放のための考察
――― 一人の青年が胸の中の妖怪について考えている
この婢妖の呪縛から逃れるのはそんなに難しくはない。体内の婢妖を法力か何かで殺すか追い出せばいい。
だが、白面は何らかの力で自分達の力を抑え込んでいる。
現時点での自分の力だけで胸の婢妖を殺し、尚且つ死なないのは無理だ。
婢妖を殺せたとしても、出血多量やら心臓の損傷やらで自分も死ぬ。超回復アイテムでもあれば別なのだが。
( つーか、どういう風に力を制限してやがんだ? )
外見だけで判断できるとは限らないが、あの集められた場所には普通の一般人もいた。
全員に同じような制限を課しては、一般人は普通に行動することすら困難になるのではないか?
ということは、各個人に掛けられた制限には差があるのかもしれない。
まだ他の参加者に出会うまではなんとも言えないが…。
( 強者には重い枷、弱者には軽い枷か…。 ん?そういや…)
ふと、あの会場の記憶を呼び起こす。
そこには様々な者達がいた。そして、その全員の胸に婢妖が巣食っているのを感じた。勿論自分にも。
思い返してみれば、胸の婢妖の数には大きな差があった。
( 婢妖が力を抑えているのか? )
ということは、もしかしたらこの婢妖をどうにかすれば力が戻るのかもしれない。
しかし、婢妖をどうにかするというのは『ルールの枠を超えること』だ。リスクは大きい。
ゲームからの脱出を企んでいると見なされ、殺される可能性もある。
( 機会があったらそのうちどうにかするか… )
この事はできるだけ口にせず、自分の頭に仕舞っておこう。
この推測が正しければ、主催者や参加者に対する切り札になるかもしれない。
脱出の切り札にも
優勝の切り札にも
「しかし、どうしたもんかな…コレ。」
婢妖のことは置いておき、支給品を見た青年…「秋葉流」は少々迷った。
とりあえず武器としては使い難そうだ。持っていても邪魔だろう。そもそも使う機会があるかどうか…。
「ま、目くらましにはなるだろ。」
結局、彼はその支給品を持っていくことにした。
人生何が起こるかわからない。もしかしたらコレが必要になることもある…のだろうか。
( 少しの間宜しくな、相棒。 )
手元の支給品に心の中で軽口を叩くと、若い法力僧は歩いていく。
【I−4中央の道 ゲーム開始直後】
【秋葉流@うしおととら】
[状態]健康
[装備]消火器
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)
[思考]1.他の参加者を探す。危なくなったら逃げる
2.胸の婢妖をどうにかしたい
3.脱出?
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