今すぐあの人の下へ……






 エレオノールに支給されたのは巨大ロボットとそれの説明書。
 全支給品の中で最も優れていると言える品をもらった彼女だが、今は困り果てていた。
「困った、どこを探しても繰り糸が見つからない」
 エレオノールの常識で考えれば、人形には全て糸がついており操者はそれを使って人形を操る。
 けれど、この『イングラム』にはどこを探しても繰り糸が付いていない。
 そうなると、この『イングラム』を操る術が存在しない事になる。これでは、でかいだけの邪魔者ではないか。
 頼みの説明書も専門用語ばかりで何を書いているのかサッパリ分からないし、一体どうすれば良いのか。
「本当に困った。こんな大きなものは持ち運べないし」
 イングラムという大きな人形を渡されて途方にくれるエレオノール。

 これを置いていけばどうなる?
 万が一、繰り糸を持つ参加者がいたとしたら、そしてその参加者がイングラムを操れたとしたら、自分に降りかかる大きな災いとなる。
逆に、繰り糸を持つ参加者がいて、その人が自分に協力してくれたら、心強い仲間が手に入るだろう。
どちらにせよ、情報のない今のままではイングラムを置いて去る事など簡単には出来ない。

 だからといって、この島のどこかにいる鳴海をほうっておく事が出来るか?
 イングラムの側にいるということは、加藤鳴海を放っておく事に他ならない。
 愛する鳴海を放って置けるのか、たとえどれだけ憎まれていたとしても、鳴海は島のどこかで困っているかもしれない。
「助けたい」
 鳴海を。才賀勝がいないのなら、守るべき人間は鳴海しかいない。
 でも、繰り人形を持たない自分は鳴海の足手まといでしかないだろう。
 糸があれば、悩むことなくイングラムと共に鳴海を助けに行くのに。

「わたしはどうしたらいいのですか?」
【H-5下 林間部/ゲーム開始から30分経過】
【エレオノール@からくりサーカス】
[状態]健康
[装備]なし
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)
   イングラムの説明書、イングラム@機動警察パトレイバー
[思考]1.どうしたらいいの?
   2.イングラムの糸を捜す。
   3.加藤鳴海を捜す。

[備考]イングラムは白面の手により林の中に隠されています。



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