新旧女子高生






 そこは爽やかな潮風が吹き上げてくる崖っぷち。平坦な道から一歩離れれば死が待ち受ける。
まるでこのゲームを暗示しているかのような場所に彼女はいた。
「あはははは……柳、死んじゃったよ……簡単に殺されちゃったよ……あははは………あは……」
 大の字のように仰向けになり、虚ろな眼で空を見上げながら乾いた声でブツブツ呟いている。
彼女は霧沢風子。つい先ほど白面に惨殺された佐古下柳の仲間であり、友人であった。
仲間が目の前で死ぬのは、数々の戦いを潜り抜けた彼女にとってもショックが大き………
「ふ・ざ・け・ん・じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
 突然、風子は怒声と共に跳ね起きた。先程までの虚ろな眼はどこへやら、怒りに満ちた形相は
鬼気迫るオーラを放っている。沈んでいるよりも白面に対しての怒りを露わにしている方が、
彼女らしい。
「これで何回目! 何回誘拐されて! 何回殺されりゃ気が済むってのよ! あの子は!!!」
 佐古下柳は新シリーズの度に誘拐されては風子達に助けられ、つい最近も一度死んで
生き返ったばかりだった。毎回毎回苦労して助けているのに、今回もアッサリ殺されたのだから
頭にくるのは仕方がない事かもしれない。若干、怒りの矛先が違う気がするが責めてはいけない。
「とっとと烈火を見つけて、あの糞女ぶっ飛ばして、柳を生き返らせる!!」
 一度でも蘇生を知ってしまうと、完全に死を受け入れる事は難しいようだ。

「そういうわけでソコの奴、邪魔すんならブン殴るよ!」
 崖との反対側、林の方に支給品の金属バットを向けて怒鳴ると僅かに茂みが揺れた。
「……邪魔する気はありません」
 茂みから風子と同じくらいの背丈の少女が姿を現した。ヒョイと両手を挙げ無抵抗をアピール
しているが、あまり怖がっている様子もなく、風子を珍しい物を見るかのように観察している。
「あんたも普通の女子高生じゃないね」
 風子が決め付けた。女子高生と言うのは風子がブレザーを着用しているのに対し、相手の少女は
セーラー服を着用しているからだ。
「いえいえ全然サッパリ正真正銘、どこにでもいる女子高生です」
 その少女、浅倉南は飄々と答えた。
 話を聞いてみると、倒れている風子に声を掛けようとしたら、いきなり怒鳴り始めたので
茂みに隠れていたらしい。確かに先程の意味不明な行動を見たら、危険人物だと思われても
仕方がないと風子も反省した。。
「えーと、もしかしてスケバンの方ですか?」
「……今時スケバンって、あんた一体何歳よ」
 風子の外見はブレザー、金属バット、ハチマキ。贔屓目に見ても学級崩壊した不良女子高生だ。
自分の格好を省みてヒョイと肩をすくめる。
「ま、その物言いじゃ少なくともゲームに乗ってない事は確かね。アタシはこれからイジケてる
だろうバカを見つけなきゃいけないんだけど、一緒に来る? 少し危ないかもしれないけど」
「はい、ご一緒します。一人でも危険なのは変わらないし、私も手のかかる人を捜さなきゃいけない
んですよ。喧嘩慣れした人がいると頼もしいかなーなんて思ったり」
 笑顔で受け答えする南に『この子、ヤッパリ一般人じゃないのかも』と疑ってしまう風子であった。


【C-7/ゲーム開始から一時間程経過】
【霧沢風子@烈火の炎】
[状態]健康
[装備]金属バット@タッチ
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)
[思考]1.烈火を捜す
   2.白面をぶん殴る

【浅倉南@タッチ】
[状態]健康
[装備]強化セラミック製ベスト@GS美神極楽大作戦
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)
[思考]1.上杉達也を捜す
   2.ゲームからの脱出 
[備考]支給品はセーラー服の下に着込んでいます。



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