希望と現実
黒ブタになってしまった良牙君を抱えながら私は森の中を駆けていた。私のせいでこうなってしまったのだ。一刻も早く彼を元の姿に戻す方法を見つけてあげたい。
けれど、ブタになってしまった人間を元に戻すことなど可能なのだろうか?ちょっとした絶望感を感じながら、私はまた別の参加者を見つけた。
顔はよく見えないが、背はそんな高くなさそうだ。もしかしたらゲームに乗ってしまっているかもしれないし、さっきの子の様に逃げてしまうこともありえる。
声をかけるのが少しためらわれた。けど、良牙君みたいな人もいる。それに人を信じることができなかったら始まらない。意を決してこの子に声をかけてみることにした。
「ねえ、ちょっといいかな?」
「ん?おおー!人じゃ!やっと人に会えた!俺は東和馬じゃ!」
どうやらゲームには乗ってないらしい。少し安心した。良牙君に会ったときも感じたけど、人殺しをする人なんてごく一部の人なのかと思ってしまう。彼は東和馬君といい、パン職人らしい。
一通り自己紹介が終わった後、話題はもちろんは良牙君のことに移った。
「そのブタうまそうじゃの〜。もしかしてバックの中に入ってたのか?」
やはり、事情を知らない人から見れば良牙君は100%食料らしい。このまま食べられてしまったらあまりに良牙君が報われない。そこで、信じてもらえないかもしれないが東君に良牙君に起こったことを話してみた。
「へぇ〜、じゃあこのブタは元は良牙っていうヤツなんじゃな」
「あまり驚かないのね」
「ああ、こんなこと黒柳のおっちゃんとかで慣れとるからのう」
「えっ!?ちょっとその話詳しく教えてくれない?」
「ええよ。まずは………」
東君の話によれば彼のパンを食べると、一回死んで蘇ったり、ダムになってしまったり、パンダになったりしてしまうらしい。にわかには信じ難いが嘘を言ってる様には見えない。
それらの話の中で特に興味を引かれたのがブタの貯金箱になってしまったという男の話だ。なんとなく良牙君のことに似ている気がする。東君のパンを食べればもしかしたら良牙君を元に戻すことができるかもしれない。
そこで東君に頼んでみることにした。
「突然で悪いんだけど、そのジャぱんっていうのを良牙君のために作ってくれないかな?」
「おう、お安いご用じゃ!だけど、俺はパンを作る材料を何一つ持ってないんじゃ…。バッグに入っとったのはこんなのじゃし…」
そう言って東君がバッグから取り出したのはマシンガンのようなものだった。こんなのを見せられたらいやがおうにもここが殺し合いの会場だということを意識させられてしまう。
やはり、私の認識が甘かったのだろうか…。
「そう…」
そう言って、ふと地図を思い出してみる。確か近くに村があったはずだ。もしかしたら何かパン作りに必要な物があるかもしれない。そのことを東君に話してみる。
「そうか!確かに村なら何かあるかもしれんのう!じゃあ、村に向かってレッツ・ゴーじゃ!」
そう言って東君は駆けて行ってしまった。本当にパン作りが好きなんだなぁと感じてしまう。けど、東君に会えて気分が軽くなると同時に現実を知らされた気がした。
ここが殺人ゲームの会場で、私たちは殺し合いを強制させられている。それが現実。けど、今は良牙君を元に戻せるかもしれない手段が見つかったことを素直に喜びたい。
淡い期待を抱きながら、私たちは駆けていった。
【H-6 源五郎池南岸/早朝】
【毛利蘭@名探偵コナン】
[状態]健康
[装備]偽火@烈火の炎
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)
[思考]1.氷川村に行って東にパンを作ってもらう
2.コナン、小五郎、灰原、あかねを探す
【東和馬@焼きたて!ジャぱん】
[状態]健康
[装備]なし
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)、サブマシンガン
[思考]1.氷川村に行ってパンを作る
2.河内、諏訪原、ピエロを探す
【響良牙@らんま1/2】
[状態]健康・Pちゃん
[装備]不明(本人は確認済み)
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)
[思考]1.パンとかいいからお湯を手に入れたい
2.あかねを探す
前話
目次
次話