パン職人(おとこ)の戦い






一人の巨人がいた。
その顔は仮面で隠されていたが、体から嬉しさがにじみ出ている。
そして、手には大矛があった。
巨人の名は門都、裏麗死四天の一人。

「ヒャハハハ!!!オレ、すごいついている!こんな楽しいゲームできるなんて!!!」

門都は嬉しかった。黒い渦に飲み込まれたはずがこんなところにいること、
また人と闘えること、そして人を殺せること。
その全てが門都にとって嬉しさ以外の何物でもなかった。

そして、巨人は歩き出した。獲物を狩るために。




「ハァ〜、これからどうすればええんやろ…。平等に戦えるっちゅーても、
こんなんでどうしろっちゅーねん…」

河内恭介に支給されたのはヘラであった。それもただのヘラではない、
その大きさは人と同じかそれ以上あるのだ。

「けど、これほんまに現実なんかのー?夢だったりしないんか?」

そうだ、きっと夢に違いない、そう河内が思った瞬間、異変が起こった。
何かが近づいてきている。それもかなり近い。

「(どうする?って別にどうもしなくてええやんか!どうせ夢なんやし、
どっしりと構えといてやるわい!)」

そして、巨人が現れた

「やっぱりオレついてる!こんなに早く、獲物みつかるなんて!」
「(って、えぇ!?デカッ!?なんや、こいつ!?しかも恐ろしく物騒なこと言うとるし…。これは夢とか関係なしに逃げた方がええんとちゃうか?)」

思うが早いか、すぐに河内は逃げ出した。
これは河内が何も持たない弱者であったことが幸いした。
門都は河内を見た瞬間に弱者だと悟り、「狩り」から「遊び」に変えたためだ。
しかし、門都が獲物を殺すことに変わりはない。

門都は河内との距離を徐々に詰めていき、手にした大矛をまずは河内の左腕目掛けて振るう。

「ウギャァァァ!!!!いったー!?これは夢とちゃうんか!?」

河内の泣き声が響いた。
それと同時に河内はこれが夢ではないことに気付く。

そして、次に門都が狙ったのは、左足。

「グワァァァ!」

また、鳴き声が響いた。そして、足を切られたことにより河内はバランスを崩し転倒してしまう。

「ククク、これで遊び終わり。死ね」

門都の大矛が心臓めがけて下ろされる。


しかし、その一撃は特大のヘラによってガードされてしまった。

「何!?」
「へへ、確かに平等らしいのぉ…。こんなんでも何とかなったわ…。(けど、これが限界みたいや…。今ガードした時の痺れが取れへん。
 東、月乃、店長、冠、すまん。わいはここまでのようや…。後のことは頼んだで…)」
「雑魚のくせにいい根性。けど二度目ない。こんどこそ死ね!」

とどめの一撃が振るわれた。
しかし、その一撃もまた河内に当たることはなかった。
一発の銃声が鳴ったためだ。
見ると門都は腕から血を流し、大矛を落としている。
そして、そこに凛とした声が響く。

「そこのあなた!さっさと逃げなさい!」
またしても河内は逃げ出した。九死に一生を得たのだ。左足の痛みなど構ってる暇などない。
門都も追おうとするが、それも銃声によって阻まれる。

「(クッ、こんなのいっぱいくらったら危ない。それにもう一人、位置分からない。
仕方ない、退く)」

門都は河内を追うのを諦め、どこかに消えていった。

「どうやら、諦めてくれたようね。さてと、あっちは大丈夫かしら?」

「ハァ、ハァ、あいつは追って来てないようやし、ここまで来れば安心やろ。それにしても、ほんまに危ないところやったで…」
「どうやらうまく逃げ切れたようね。」

そう言って現れたのは妖艶な魅力を放つ金髪の美女だった。

「あ、あんたが助けてくれたんか?」
「ええ、そうよ。一目瞭然に危ないのはむこうだったから。
それにこれの性能も試したかったしね」

そう言って彼女が取り出したのは一丁のスナイパーライフルだった。

「さ、さいでっか。あっ、そうや。そんなことよりお名前を教えてくれまへんか?
わいは河内、河内恭介っていいますねん」
「そう、河内君ね。私は美神令子。GSよ。よろしくね」
「美神さんっていうんでっか。さっきはほんまに助かりました。ありがとうございます。(でもGSって何なんやろ?けど質問するっちゅーのも野暮ってもんやな)」
「どういたしまして。普段だったら200万ぐらいもらうところだけど、
お金も無さそうだし今回は特別に無料でいいわ。こんな事情だしね。それじゃ、今度からは気をつけるようにね、河内君。バイバイ」
「ええ、そちらも体に気をつけてって…、ええ!?ちょっと待ってや!こんなところに置いてかれるなんて、いやじゃー!一人なんて寂しいし怖いし、いつ誰に襲われるかもわからへん!頼むから一緒に連れていってくれー!」
そう喚きながら河内は美神に抱きついて懇願した。
「ええい、うっとおしい!分かったわよ、連れて行ってあげるわよ!
だからさっさとその手を離しなさい!」
「ほ、ほんまですか?これからよろしく頼みますわ、美神さん!」
「(………、何かこの子、どことなく雰囲気が横島君と似てるわね…。)」

美神は一抹の不安を感じながらも、自分の選択を信じた。

【Fー4 草原/ゲーム開始から30分経過】
【門都@烈火の炎】
【状態】右腕に傷(戦闘に支障なし)
【装備】蛮竜@犬夜叉
【荷物】荷物一式(食料・水二日分)
【思考】1.新たな獲物を探す
2.皆殺し
【Fー4 森/ゲーム開始から30分経過】
【河内恭介@焼きたて!ジャぱん】
【状態】左腕、左足に中程度の切り傷(戦闘、移動に支障あり)
【装備】特大のヘラ@らんま1/2
【荷物】荷物一式(食料・水二日分)
【思考】1.美神に着いていく
2.死にたくない
3.東、諏訪原、ピエロの捜索
【美神令子@GS美神極楽大作戦】
【状態】健康
【装備】スナイパーライフル(残弾28)
【荷物】荷物一式(食料・水二日分)
【思考】1.主催者を倒す
2.横島の捜索



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