当たらずしも遠からず






カラン…コロン…カラン…コロン…

袴姿に下駄を履いているという現代にはあまり見ない格好の少年が歩いている。

少年の名前は鉄刃。見た目はこんな子供だが凄腕の“サムライ”である。

「ったくいきなりわけわかんねぇよ…。」
刃はぶつくさと文句を言いながら歩いていく。
今から約1時間程前に起こった出来事を思い出しながら。

目の前で殺された少女、主催者から感じた凄まじい威圧感、今現在体の中にいる化け物、殺し合いetc…。

これまでに幾つもの修羅場を潜り抜けてきたとはいえ、さすがに突然のこの状況には混乱せざるを得ない。元来自分は考えるのが得意な方ではないのだ。
「覇王剣も取られちまったみたいだしなぁ…クソッ…!」
自分と共にずっと戦ってきた“相棒”ともいえる剣、覇王剣。あれさえあればこの殺し合いの主催者とやらも倒し、状況を打破出来ると思うのだが…。

と考えながら歩いていると目の前に水の流れが見えてきた。
「お、川だ。…こりゃついてるぜ。」
いくら水と食料が与えられているとはいえ、長期戦になればいずれは底をつく。
食料はある程度見つけられても水はそうはいかない。
川なら真水だし、うまくいけば魚もいるだろう。
ついでに同じように考えたさやかやムサシがやってくるかもしれない。
幼い頃を父と共にジャングルで過ごした刃はこういうサバイバルの知識は多少持ち合わせていた。
「…ん?食い物?」

グ〜

食べ物の事を考えるとお腹が鳴った。

「まずは腹ごしらえすっか。腹が減っては戦は出来ないしな。」

本来最初に確認すべきザックを今頃開けてゴソゴソと中を探り出す。
「お、あったあった。…何か他にも色々入ってんなぁ。」
モグモグと早速腹ごしらえをしながら更にザックを探る。
「水…とコンパス?それに紙に鉛筆、後は地図に時計…お、これはここにいる奴等の名前の名簿か?」
パラパラと見ると見覚えのある名も数人確認出来る。
「……さやか…」
一緒に住み、旅をしていたポニーテールの女の子が頭に浮かぶ。
「戦えないさやかは早いとこ探さないとな。」
ムサシの事も思い浮かんだが、老いたりとはいえ宮本武蔵。むざむざやられたりはしないだろうと考え、とりあえず後回しでも大丈夫と判断する。
これは共に旅を続けてきた頼もしい仲間に対する信頼でもあった。
そしてザックから最後に出てきた物は…
「お、これは…何だこりゃ?」
ザックに入っていた“それ”は一見ただの棒であった。いや、よく見るとただの棒ではなく下の方に“水”と書かれた玉が入っている。
「前に探した水の玉に似てる…もしかしてこの棒で水を操れたりするとかか?…まさかな〜………」
冗談混じりで言ってみたが思いついたらやってみたくなってきた。
試しに水の入った容器に向けて力を使う時のように気合いを込める
「…ハァァァァァ…!りゃああああ!」

ぶおん!

………何も起きない。

「けっ、やっぱダメか。」
そして使い道がわからないので再びザックの中へ。
「でも何か武器が欲しいよなぁ……ま、とりあえずこれでいいか。」
そこら辺にあった木から比較的太い枝を折って手にとる。
「さて…腹ごしらえも出来たし、とりあえずさやかとムサシを探さないと…。取られた覇王剣も取り戻さねぇとな!」
刃のザックに入っていた棒の名は…閻水。液体をかければそれを剣と成す魔導具なのだが刃はそんな事も露知らず、仲間を探しに動き出した。
「まずは川沿いに探すか。上流に行くか下流に行くか…う〜ん、どっちにすっかなぁ?」

今手にしている棒よりも自分にとって有利な武器がザックに眠っている事も知らずに…。

【Dー2 川沿い/ゲーム開始から1時間経過】
【鉄刃】@YAIBA】
[状態]健康
[装備]木の棒、閻水 @烈火の炎
[荷物]荷物一式(食料若干減、水二日分)
[思考]1.峰さやか、宮本武蔵との合流(さやか優先)
   2.覇王剣を取り戻す
3.上流に行くか下流に行くか考え中



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