疾きこと風の如く(中略)動かざること山の如し
名探偵(?)毛利小五郎は困惑していた。
職業柄、異常な出来事には慣れているつもりであったが、今回はさすがにスケールが違う。
「いきなり遊園地で殺しあえ、たぁ・・・」
どうしたものか。
これが夢でないことは赤くなった頬が証明している。
おまけに自分だけならまだしも一人娘に居候のガキまでいるのだ。
極め付けに、最初の場所では明らかに堅気でない連中や、それどころか人間ではないまで
ごろごろいたのだ。対して己の支給品は錆びてぼろぼろの刀一本。
あまりに悲惨な境遇に思わずメリーゴーランドの柵に腰をかけたまま困惑していたのだ。
その眼前を、一陣の風が駆け抜けた
「どわぁぁぁあ!?」
無様に転倒する探偵を尻目に駆け抜けた風は、人の形をしていた。
「急がねば、急がねば、急がねば!!」
パンタローネは焦っていた。
不遜な主催者への怒りも忘れ、視界を掠めた人間も無視し、ひたすら主の影を求め失踪する。
最初に集められた広間から奇怪な手法で転送される直前に彼は見たのだ、己の麗しき主を。
着衣こそ記憶にないものではあったが、その姿は間違いなく彼ら自動人形の存在意義そのもの
であるフランシーヌ人形のそれであった。
「急がねば、急がねば。フランシーヌ様の御身に万が一の事があっては・・・」
途端、パンタローネの身体がブルリと震えた。
ただフランシーヌ人形を笑わせる為だけに造られた自動人形にとって、それは喩えようも無い
ほどに絶望的な恐怖である。
「急がねば、急がねば、フランシーヌ様の身元にはせ参じねば・・・」
パンタローネは疾駆する。
ここにはあの忌まわしき人形破壊者がいる、彼奴以外にも油断できぬ実力者がいる、あの不遜な
得体の知れぬ主催者もいる。急がねばフランシーヌ様の御身が危うい!!
【ファンタジーランド・キャッスルカルーセル前/早朝】
【毛利小五郎@名探偵コナン】
[状態]途方に暮れている。後頭部にタンコブ、頬が腫れている。
[装備]鉄砕牙
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)
[思考]1.途方に暮れている
【パンタローネ@からくりサーカス】
[状態]動作不良なし。かなり焦っている
[装備]不明
[荷物]荷物一式(予備の機械部品・整備道具一式)
[思考]1.会場を時計回りにフランシーヌ(エレオノール)の捜索。
2.邪魔者は排除。
3.フランシーヌ(エレオノール)を護る。
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