天才と神童
この殺し合いの舞台である遊園地は殻によって囲まれている
彼らがこの舞台を降りるには
胸に巣食う妖怪を倒し、この殻を打ち破らなければならないだろう。
これは、その殻の中での物語り。
「おっと、そこ動くなよ。ついでに手も上げてくれや。」
(!!!)
「言っとくがよ…俺、今銃持ってるぜ?」
拳銃を突きつけている男『秋葉流』
突きつけられている少年『高峰清麿』
天の才を持つ二人の、奇妙な出会いだった
この状況はとても単純。
人目を避けるために近くの小さな家に入ろうとした清麿が、
いつの間にか背後に近づいていた流に気付かなかった。ただそれだけのこと
魔物との戦いを経験してきたとはいえ、頭脳以外は普通の中学生である彼が
日ごろ妖怪と戦っている彼の気配に気付かなかったのは
当然といえば当然であった。
(一旦人目につきにくい場所に隠れようと思ったが…先客がいたか!)
「そのバッグもどけてくれ。」
「……ああ。」
目の前の男の言う通りにバッグを少し離れたところに投げ、尋ねる。
「あんたは、ゲームに乗っていないのか?」
「ん?なんでそう思う?」
「ゲームに乗っているのなら、わざわざ話し掛けたりする必要は無い筈だ。」
「そりゃそうだ…とりあえず、そこらへんに座れ。」
そう言いながら、自分もそこらのブロックに座る。
勿論、銃は手元に置いたままだ。
清麿も少し躊躇したが、同じように座る。
「さっきの質問だが…一応俺は『乗っていない』。
つまり向こうから襲ってこなけりゃ何もしないさ。
まぁ、もし誰かと二人だけになったらしょうがないがな。
ところで…あの女のこと、知りたいか?」
「知っているのか!?」
「ああ。あいつ…そして…」
人差し指を自分の胸に当てる
「俺たちの胸にいるこいつ…ヒヨウも妖怪だ。」
そう言うと流は清麿のリアクションを観察するかのように間を空けた。
だが清麿は少し眉を潜めたが、表情にはそれほど変化はない。
「なんだよ?信じてないのか?」
「…質問がある。
あんた、『魔物の王を決める戦い』を知っているか?」
今度は流が眉を潜めた。
「…いいや、知らないな…」
「『大海恵』『パルコ・フォルゴレ』
この二人を知ってるか?」
「いや。全然知らん。外人っぽいやつは名簿に載ってたけどな。
お前、気付いてるんだろ?」
「…もしかしたら俺達は…」
「『違う世界の人間』ってか…
まぁ、あの会場にいた連中を見ればわかるよな。」
「ところで…あんた、あの宙を飛んでいる魔物…いや、妖怪を知っているんだな?
…近くで話してもいいか?」
「…いいぜ。」
流は銃から離れ、清麿のすぐ近くに座る。
そして、二人は小声で会話を始めた。
「すまない。ところで…あの妖怪たちにこの声は聞こえるか?」
「あいつ自体は低級な妖だから大丈夫だ。白面、つまりあの女が直接見張ってたら即アウトだが」
「そうか………あんた、協力してくれないか?」
「協力?脱出か?」
「ああ。」
「そうだな………………俺としても、元の世界に帰れたほうが都合がいい。
早速、そこの家で作戦会議といくか。
俺は『秋葉流』。お前は?」
「『高峰清磨』だ。よろしく。」
そして二人は、この殺し合いの舞台に不似合いな
愛らしい風貌の建物へと入っていった。
秋葉流
彼は潮ととらに自らの裏切りを伝えた矢先に、このゲームへと参加させられた。
「白面」より「とら」と戦うことを望んでいた故への裏切りだった。
(白面のヤツ、何の目的があってこんなゲームをやってるんだか…)
しかし今、彼はとらと戦うのを心から望んではいない。
いや、「戦うのもいい」とは思っている。
(だが…あいつとは全力対全力でやりたいもんだ…。)
この遊園地に来てからどうにも法力の調子がおかしい
まだ使ってはいないが、どうにも体にある力の感じが少ないように思う。
(この『力の制限』…。バランスを調整するためか。
おそらくあいつの力も大幅に弱まってるんだろう…。
俺は………本気のあいつと戦ってみたいんだ…。)
もしここで自分が勝ったとしても
自分にも制限が掛かっているとしても
(それは『白面の力で勝てた』ような感じがするんだろうな…どうにも気が乗らねえ。)
ヒュゥゥゥ
「清麿………『風の音』って聞いたことあるか?」
「風の音?」
「ハハ…なんでもないさ。」
とりあえず足掻いてやるか。
足掻いても無駄だったらしょうがない。…たとえ、少し味気ない戦いになったとしても。
それまでとら…死ぬんじゃねえぞ
高峰清麿
彼はこの殺し合いの舞台を覆う壁を見て、それと似ているものを思い出した
それは人間界に来ている魔物の子の一人ティオの術「セウシル」と「ギガ・ラ・セウシル」
前者の術はティオを中心に防御の壁を張る術
後者の術は相手の周囲に張られた壁が、相手の放つ全ての攻撃を跳ね返すという術
この遊園地の形は四角形に近いので、殻の形は球ではないかもしれないが。
無論、全く関係のない可能性のほうが高いだろう。
しかし…もしも、この壁がこれらの術と同じような術だとしたら?
都合の良い考えだが、殻を打ち破る方法は言葉通り「打ち破る」以外にも出てくる。
1つ目、中心で殻を張っている者を倒す方法(セウシルのような場合)
2つ目、地中から脱出する方法
3つ目、どこからか殻を張っている者を倒す方法(ギガ・ラ・セウシルの場合)
(…・・・少し楽観視しすぎか)
勿論、一番可能性が高いのは白面本来の持つ能力や術だろう。
それは流や白面と同じ世界の人間(もしくは妖怪)に聞けばいい。
しかし…手段は多いに越したことはない。
この考えは心の片隅に留めておくことにしよう。
(しかし、この胸にいる妖怪はどうするか…。)
この問題に関しては自分はお手上げだ。
どうにか、この妖怪を取り除く能力を持った参加者やアイテムがあることを祈るしかないが・・・。
もう一つの心配が浮かんだ。
それは同じ世界から連れてこられた三人。
千年前の魔物をいとも容易く倒すブラゴのパートナー「シェリー」。
あの魔物のパートナーに相応しく強い。おそらく無事だろう。
この戦いに乗っているとは思えないが…。断言はできない。
ゾフィスのパートナーであった「ココ」。
この女はヘリコプターに乗せられているのを見ただけなので、どんな性格かはわからない。
そして最も心配なのが…
(フォルゴレ…………………………死ぬなよ……?)
【トゥーンタウン:ミニーの家】
【秋葉流@うしおととら】
[状態]:健康
[装備]:リボルバー(残弾30)
[道具]:荷物一式(食料&水:2日分)
[思考]:1.清磨と情報を交換
2.脱出するための作戦を練る
3.脱出が不可能だと判断した場合や
脱出する必要が無くなった場合、とらと戦い、ゲームに優勝する
【高峰清磨@金色のガッシュ!!】
[状態]:健康
[装備]:不明(本人は確認しています)
[道具]:荷物一式(食料&水:2日分)
[思考]:1.流と情報を交換
2.脱出するための作戦を練る
3.フォルゴレ・シェリーを探す
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