流れよ我が涙、と戦神は言った
「ははは・・・」
青年が一人、泣いている。
どこまでも空虚に、どこまでも物悲しく・・・
かつてアレックスと呼ばれた少年が、鳥籠の中から夢想したおとぎの国で。
かつてアレックスと呼ばれた青年は、かつて夢見た場所で泣いている。
彼に課せらしは“殺し合い”。
最後の一人まで戦い抜く狂気の殺人ゲーム。
だが青年は恐怖ゆえに泣くのではない。
ただ、逃れえぬ己の運命に涙する。
やがて涙も涸れ果てて、最後に残されたのは・・・怒り。
世界を運命を全てを焼き尽くす灼熱の怒り。
かつてアレックスと呼ばれた青年は灼熱の怒りを胸に呟く。
「いいだろう」
それが宿命なら
「戦ってやろう」
それが唯一つ与えられた自由なら
「立ちふさがるモノ全てを」
憎き魔獣も、忌わしき妖女も
「殺し尽くしてやろう」
何もかも
「しかし、あの女・・・俺に何をした」
青年は忌々しげに呟く。
己の意思で最終戦闘形態へと移行できないのだ。
不安定なオリジナルARMSならともかく、完成品であるアドバンストARMSの己に
そんなことは本来ありえない。自身を完璧に制御できぬモノなど完成した兵器
とはなりえない。
いや、分かってはいる。あのおぞましい目玉の化け物が何かをしているのだ。
「まったく、忌々しい」
あんなモノが己の内に居るかと思うと思わず嘔吐感がこみ上げてくる。
「まあ、いい。」
専用の設備もスタッフも無い現状ではアレを除去することはできまい。
「時が経てばどうとでもなる。」
自分はARMS、最強の戦闘生命体なのだ、時間さえあればあの得体の知れぬ化け物
でも自力で克服してみせる、今は当面の戦闘力の低下に対処すべきだろう。
「しかし・・・どこの阿呆だこんなものを作ったのは」
しゃがみこんだ青年は、やや呆れながらも支給された獲物を持ち上げる。
それは銃と言うにはあまりにも大きすぎた
大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた
それは正に鉄塊だった
“37oリボルバーカノン”
身の丈10M近い巨人の為に用意された超巨大拳銃。
常人には持ち上げることすら困難な鉄塊を、青年は軽々と持ち上げ仔細に観察する。
「作りはリボルバーをそのままスケールアップしただけか・・・まあ使えんことも無い。」
少なくとも人間相手には十二分、人外相手でも通用するだろう。
青年の“槍”に比べれば貧弱な得物ではあるが、力の制限された今は少しでも強力な
武装はありがたい。
「では、征くか。」
かつてアレックスと呼ばれた戦神は、おとぎの国へと歩みだす。
求めるは闘争、行き着く果ては屍の丘。
もう涙は無い。
【ファンタジーランド・イッツアスモールワールド前/早朝】
【キース・シルバー@ARMS】
[状態]健康、ただし己の意思での完全戦闘形態への移行は不可能
[装備]37oリボルバーカノン@機動警察パトレイバー
[道具]荷物一式(食料&水:2日分)
[思考]1.強者との闘争(高槻涼優先)
2.主催者の打倒
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