ずっと君の側で――






淡白な電灯が照らす食堂で、桃色の髪の少女は思案を重ねていた。
いくつもの世界で殺人事件の舞台となった場所であるが、そんなことを彼女が知っている筈もない。
いや、たとえ知っていたとしても彼女は怯むことはなかったろう。
神の座を巡るサバイバルゲームを勝ち抜くために、多くの人命を奪ってきたのだ。
惨劇の記憶を未だ脳裏に抱き続ける少女は、このバトルロワイアルに乗らないことを決めていた。

(……ようやく、HAPPY ENDに辿り着いたのに……!!)

一度は神となり、最愛の少年(ひと)と永久に結ばれたいがために戦い、その果てに最高の終わりを得た。
犯した罪を償う気はないしその術もありはしないが、もう戦わずとも良くなった筈。
それを粉々にぶち壊したあのモノクマとかいうふざけた輩に、少女は怒りを禁じ得なかった。
自分たちの幸せを侵した存在を何としても討ち果たさねばならないと、彼女は強い意志で決意する。
殺し合いに乗る選択肢は、今のところ無い。

(ユッキーと合流する……未来日記はあるし、合流の時も近いだろう)

名簿にはこれまで戦ってきた『日記所有者』たちの名前もあったし、現に彼女の服のポケットに収まっている携帯電話――『雪輝日記』の予知も未だ健在だ。
だとすれば、二週目世界から連れてこられている所有者もあると見ていいだろう。
信頼できる相手は、最愛の天野雪輝ただ一人と見ておく。
どの時間軸の彼であっても、自身の言葉なら届くだろうと、彼女には自信があった。

(モノクマ……お前が何を考えているのかは私には解らないわ)

その瞳を鋭く尖らせ、折角の『HAPPY END』を台無しにしてくれた絶望の権化を思う。
今でも鮮明に思い出せる劇的な戦いの日々……特に二週目のそれは、一瞬たりとも油断できなかった。
通り魔を殺害するところに始まり、学校に襲来したテロリストを撃退した。
新興宗教の教祖とその信者に追い詰められた時には、格好よく自分を助けてくれた。
一度は決裂したが、二人組の日記所有者を倒して絆は強まった。
忌々しい探偵やクラスメイトの妨害もあり、そうして舞台は三周目世界に移る。
最期の時まで共にあり、記憶を受け継いだことで時空の壁を壊すことが出来た。
雪輝と共に未来を作っていこう、その矢先に襲い掛かってきた過酷すぎる絶望の荒波。
まさか屈服するわけもない――『HAPPY END』を取り戻す。

「でも、あまり舐めるな」

その手に聖剣『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)』を握り、少女――我妻由乃は、行動を開始した。


【B-2 右代宮邸/未明】
【我妻由乃@未来日記】
【装備:勝利すべき黄金の剣@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式、雪輝日記@未来日記、ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:殺し合いには乗らない。
1:ユッキーと合流後、本格的に動く
2:所有者たちには一応警戒しておく。危険そうなら殺害することも辞さない
【備考】
※本編エピローグ終了後からの参加です


支給品説明
【勝利すべき黄金の剣(カリバーン)@Fate/stay night】
我妻由乃に支給。
セイバーが引き抜き、王となった選定の剣。「約束された勝利の剣」と比べ、より権力の象徴的で装飾もより華美。その分、武器としての精度は劣る。

【雪輝日記@未来日記】
我妻由乃に支給。
天野雪輝の未来を記録する未来日記で、レプリカのため破壊されても所持者に危害は及ばない



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