ある少女の後悔
「…まさかこんな事になるなんて」
その少女ーリナ・インバースは森の中で唇を噛み締めていた。
故郷へと向かう旅の途中、立ち寄った宿屋でニギタケの包み焼きを待つ間にふと睡魔に襲
われ、気がつけば料理の乗ったテーブルはどこへやら、見知らぬ場所に連れてこられ、殺
し合いをしてもらいます、なんて、どんな状況なのか。
しかも、死んだはずのフィブリゾやルークが生き返っているあたりもう滅茶苦茶である。
「…考えていても無駄か」
今確かなことはフィブリゾが殺し合いを望んでいるということ。
ならば、こちらはそれに抗うだけである。
あの場にいたガウリイもここにとばされているはず、きっとそのうち会えるだろうと思うが…心配だ。
その頃、その本人は最強の用務員と戦っていたがリナはそれを知らない。
しかしフィブリゾめ、いつの間にそんな力を…ん?
そこまで考えようやくある疑問に気づく。
ルークが生き返っているので考えてなかったが、あのフィブリゾは本物か?
確かに金色の魔王が滅ぼした筈だ。
あの時の記憶は虚ろだが間違いない。
だとすれば、あのフィブリゾはいったい何なのか?
まさかいつかの偽レゾのようなものだろうか。
「…試してみるか」
そしてリナは呪文の詠唱を始めた。
◇◆◇◆
その呪文を唱えたのは二つの理由からだった。
一つはあまり派手な術を使うと危険だということ。
もう一つはただ発動する筈がないと思ったからだった。
しかし、術は発動した。
リナは驚き、後悔した。
それはフィブリゾが本物だと証明されたことと、
「マスター、ご命令を」
自分が呼び出したそれについてだった。
ラグナ・ドライブ
フィブリゾの力を借りゾンビを作り出す術
つまり、発動できなければあのフィブリゾは偽者ということなのだが、
(まさかものの見事に発動するとは…)
しかも出来たのは予想よりも大きいものだった。
「マスター、命令は?」
ゾンビがこちらを見ながら問いかけてくる。
(まあ、作り出してしまったものは仕方がないか)
ちなみにこの術でできたゾンビ、けっこうアドリブがきく。
「…とりあえず、他の参加者で困っている人を助けなさい」
リナは予想外に発生したゾンビに適当な命令を下す。
「了解、ぶらあぁぁっっ!」
ゾンビは一回叫ぶと素早く走り出していった。
走りつつ振り向き、こちらにウインクなんぞをしながら。
「…変なもの作っちゃったなぁ」
背中に鳥肌立たせつつリナはつぶやいた。
と、足元のデイパックが目に入る
「そういえば支給品なんてのがあったっけ」
役に立つものであればいいなと思いつつ開ける。
入っていたもの。
なにかわからないがブラックジャックのようなもの。
椅子。
以上2つ。
…これを使って殺し合えと?
「ふざけるなー!!」
と叫んだその時、
『うわぁぁぁー!!』
人にしては大きい叫び声が響き渡った。
「なに!」
リナは慌てて声のした方へと走っていった。
(もしかしたらもう誰かが襲われて…!)
そう思いながら走っていると、妙な匂いが漂ってきた。
(これは…腐敗臭?)
さらに進行方向には何か塊などが落ちている。
そして彼女の頭にある疑問が。
すなわち、
(さっきのゾンビ、どこに行ったっけ…?)
やがてひらけた場所に出ると、そこには…。
『あ、ああ…』
「大丈夫ですか?怪我はございませんか?」
腰を抜かし、みょーな物体を持った金髪の少年と、少年に近づく半壊したゾンビの姿が!
『あう、ああうあ』
「大丈夫です。私は不気味ですが武器は持っていません。なにせ私、ゾンビですから!」
そう言いながらゾンビは一本減った腕を広げ、ボロボロの腹の中を見せ、半壊した顔で笑顔を浮かべる。
…はっきり言おう。不気味じゃなく、怖いと。
『…っ』
少年、もう声も出ない。
どうやらゾンビは時間がたつか術者から離れると自己崩壊を起こすらしい。
「おや?…まさか足を!?さあ、この手を掴んで!!」
どうやら動かないのを動けないと勘違いしたらしい。
ゾンビは手を伸ばし…、
ぼて
腕が落ちた。
少年は倒れた。
さらにゾンビの体は崩壊を起こしていく。
止まらない。
(って、なにしてんのあたし!)
リナは我に返り、少年に駆け寄った。
抱き起こすと、少年は気絶しているだけのようだった。
「ああ、マスター」
ゾンビを見ると、もう立つのもやっとといった状態だった。
「すいません、お役にたてなくて。どうやら、ここまでのようです」
ゾンビはそう言いながらそらを見上げた。
「…もし、…また会えるなら、こん…ど…こ」
そこで、ゾンビは完全に土に帰った。
その跡に向かってリナはつぶやく。
「…ゾンビ、あなたのこと、忘れないわ」
少なくとも忘れらんないだろう。
木々の隙間から太陽がその場所を照らしていた。
【F-3/森/一日目/朝】
【スレイヤーズ@リナ】
[状態]:正常
[装備]:椅子@スレイヤーズVSオーフェン
[道具]:支給品一式、無能部下焦がし機 ボンバー君二号@魔術師オーフェン無謀編
[思考]
基本:ガウリイと合流し、殺し合いを止める。
1:マジクを保護
2:ガウリイ達と合流
3:ニギタケが気になる
[備考]:まだ竜破斬、重破斬が使えないことを知りません。
フェブリゾが本物、もしくは本物にちかいなにかだと思っています。
ラグナ・ドライブをもう使わないと決意しました。
【魔術師オーフェン@マジク・リン】
[状態]:気絶
[装備]:拡声器
[道具]:???(未確認)
[思考]
基本:???
1:???
2:???
3:???
[備考]:次の書き手さんに任せます
【ゾンビ@スレイヤーズ 崩壊】
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