決意
――チッ
八神和麻は本日何度目になるか分からない舌打ちをした。
和麻は今、自分が置かれている状況の何もかもが気に入らなかった。
あのフィブリゾと言う少年は、この戦いで生き残ったものの願いを何でも叶えるといった。
死者の蘇生までも。
和馬の父。神凪厳馬はフィブリゾと戦い、命を落とした。
それはもう、思わず失笑するくらい呆気ない死に様だった。
「っ、ざけんな……」
灰と化した父の姿を思い出し、和麻の心で、自分でも分からない何かが煮えたぎった。
一瞬、親子の情と言う言葉が頭に浮かんだが、もう一瞬の後には掻き消した。
和麻はひとまず不快な思考を止め、これからの方針を考えた。とはいえ、数時間前の決定の確認でしかなかったが。
皆殺し
和麻が取るべき行動はそれしかない。他の人間は結託してフィブリゾを倒そうとするかもしれないが、それは何も失っていないからこそできることだ。
和麻たちはすでに失ったものなのである。
常識で考えれば、敵討ちという選択もあるだろう。だが、何の実りもない復讐など馬鹿げている。
仮にフィブリゾを殺したところで、厳馬が生き返るわけでもない。例え、フィブリゾが蘇生の力を持っていたとしてもだ。
ならば、どうするべきか。そこで、フィブリゾのあの言葉が蘇る。
「やるしかないか……くそっ」
圧倒的な力にひれ伏して思うがままに踊ると言うのはひどく気に喰わないことだが、今回ばかりは仕方ないだろう。
数時間の堂々巡りの末、自分が何をするのかを、はっきり決めた。
とはいえ、それには問題がある。しかも、恐ろしく重大な問題だ。
現在、和麻は契約者として、風の精霊王の力を直接借りることができない。それどころか、普段でさえ可能な空中飛行や、超広範囲の索敵及び通信も封じられていた。
今の彼には、かつての風牙集と同程度の力しかない。
あの、神凪にへつらい、怯えながら仕える風牙集と……!
和麻はかつて、神凪家の中で落ちこぼれとして散々な目に会い、その悔しさをもって今では神凪家でさえ恐れる力を手にいれた。
その力さえも奪われ、フィブリゾの犬として動くしか選択肢がない。
そのことが、和麻を極限まで苛立たせている原因だった。
「まあいい。やってやる」
まだ苛立ちは収まらないものの、和麻は腹を決めたからにはと、一歩を踏み出した。
【C‐6/森/一日目/朝】
【八神和麻@風の聖痕】
[状態]:健康
[装備]:未確認
[道具]:未確認
[思考]:基本:参加者を皆殺し。
1:適当にぶらつき、出会った奴から殺していく。
[備考]:風牙集の力と同程度と書きましたが、本編でも一巻にしか出てこない上、実力が雰囲気しか分からないので書きにくいですが、細かい能力は次の書き手さんに任せます
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