綾乃二人






神凪綾乃は深い森の中を彷徨っていた。
全身を怒りに震わせながら力強く歩を進める。
「何よ、なんだってのよ!」
彼女は荒れていた。
腰まで伸びた流麗な髪も怒りによって炎のように揺らめいている。
彼女の怒気に火の精霊が呼応しているのだ。
怒りの感情こそ炎術師の本質。
今、彼女は炎術師として最高の状態にあるといえた。
だが……

さっきは何もできなかった。

それどころかおびえてしまった。 
そのことが綾乃はどうしても許せなかった。
最初の広間で叔父である厳馬が殺された時。
フィブリゾと名乗る少年の妖気に中てられた時。
破魔を司る神凪の、しかも宗家である自分がただの人のように動けなかった。

「恥だわ」

死ぬのはもちろん嫌だ。殺されるなんて尚更まっぴらである。
でも、それでもやらなくてはならないこととやってはいけないことがあった。
「ゲーム、とか言ってたわねあの糞ガキ!
 上等、そっちがそのつもりならあたしがそのゲーム盤をひっくり返してやるわ!」
ただ怒りにまかせて勝機もなにもなく言っているわけではない。
彼女を束縛する首輪を外す方法に心当たりがあるのだ。
神凪の炎は浄化の炎。
それは極めれば邪悪なる存在だけを燃やし、他のものは決して燃やさないという芸当もできるのだ。
その炎ならば首輪だけを焼き尽くし、少なくとも強制的に殺される恐れは無くなる。
だが……肝心の綾乃はその域まで達してはいなかった。
弟分である神凪煉が一度見せたことがあったがおそらく煉の炎では火力が足りない。
あのフィブリゾの力を上回る火力が必要なのだ。
ルールブックには無理に首輪を引き剥がそうとしても爆発するとある。
つまり一発勝負、一撃で首輪を焼き尽くせなければその瞬間に死が待っている。
失敗はできないのだ。
この策を実行するには綾乃と煉の成長が必要不可欠。
二人が浄化の炎を使いこなすことができれば……勝機はある。
なぜなら彼女たちには和麻がいるからだ。
世界で唯一、風の精霊王を契約を結び世界中の大気を統べる力を持った男。
神凪宗家の血筋にして煉の実の兄、八神和麻が。
綾乃たちの浄化の炎と和麻の浄化の風が合わされば相乗効果により、より強い力が発揮されることは過去の戦いが証明している。
その力なら必ずやあのフィブリゾの力を超えると綾乃は確信していた。
「だからちゃんと生き延びんのよ、和麻、煉……」
そうつぶやいた後彼女はようやく落ち着いた。
自分の方針が定まり、他のことを考える余裕が出てきたのだ。
怒りは収まらないが少なくとも表面上は冷静さを保つことが出来る。
他人の心配もいいが、それよりもまず自分が生き延びなくては話にならない。
綾乃は自分に支給されたアイテムを確認することにした。
ルールブックにはなんらかの道具が2つ支給されるとある。
神凪家の至宝、火の神器「炎雷覇」を身に宿す彼女に武器は不要ともいえるが
いつ何が役に立つかは分からない。
確認しておくにこしたことはないだろう。
そして綾乃がまず取り出したのは身の丈ほどもある巨大な大鎌だった。
まるで神話や伝説の死神が持つ鎌のようだ。
わずかに表面から冷気がただよってくる。
その鎌には説明書が付属していたので目を通してみた。
鎌の銘は「アイルクローノの鎌」。ルールフラグメ、というなんだかよくわからないものの一種らしい。
その能力は装備者の身体能力を大幅に引き上げ、切ったものを凍らせるというものだった。
確かに使いこなせれば非常に強力な武器となろう。
しかし……
「うっわーあたしと相性最悪だわ」
ただでさえ炎術師である綾乃に水系統である氷の能力は使いづらいものだろう。
だがそれだけではない。
この鎌は副作用として能力を使用している間は装備者の感情を凍らせてしまうという。
感情がそのまま力となる炎術師にとってはまさに最悪の能力といえた。
下手をすれば戦闘中はまったく炎術を使えなくなる可能性もある。
綾乃の本来の戦闘スタイルは剣であり、炎術だ。
武道を嗜む身としては長柄の武器も決して使えないわけではないが
その練度はやはり剣よりも数段落ちる。
身体能力が数段増すとはいえ、これは……。
「炎が通用しない敵に出会った時専用でしょうね、これは……」
アイルクローノの鎌は早くも特定の場面がくるまでお蔵入りとなってしまった。

そしてがさゴソともう一度ザックを漁り――ふと目が合った。

誰と? 森の木々の間からこちらをじっと見つめていた少女と。
「ぶっはっ」
綾乃は驚いて思わずザックを手放してしまう。
今の間抜けな声が目の前の少女に届かなかったようなのは幸運だったかもしれない。
綾乃が驚きで固まっていると少女はニッコリと笑いかけてきた。
年齢は綾乃と同じくらいか少し下だろうか? 
体格は小柄で肩で切り揃えた黒髪が似合っている純和風の少女だった。
「驚かせてしまったようでごめんなさい、大丈夫でしたか?」
「え? ああ、いいのよ。気にしないで」
融和な雰囲気にどうやら危険な相手ではないようだと判断して
綾乃は取り落としてしまったザックを拾い上げた。
相手を不安にさせないようにこちらも笑いかけて挨拶をする。
「はじめまして、あたしは神凪綾乃。あなたは?」
「まあ! あなたも綾乃とおっしゃるのですね!
 申し遅れました。私、白鳳院綾乃エリザベスと申します。奇遇ですね」
語尾にハートマークが付きそうな弾みで話す白鳳院綾乃エリザベス。
これには綾乃も驚いた。
「本当に奇遇ねえ……どちらも綾乃じゃ紛らわしいから白鳳院さんと呼んでいいかしら?」
「はい、お好きなように呼んでくださって結構ですよ。神凪さん、ああ最初に出会った人が
 私と同じ名前だなんてこれはきっと運命ですね」
「は?」
楽しそうに笑う彼女を見て、綾乃は肩をコケさせた。
どうもこの白鳳院という少女はノリが変だ。
というより綾乃は目の前のこの少女に違和感を覚えて仕方がないのだ。
(どうしてかしら?)
どこか場違いに思えてならない。
そこまで思って気づいた。そう、「場違い」なのだ。
ここはあのフィブリゾという妖魔が用意した殺し合いをする世界なのだ。

なのに何故……「楽しそうに」笑えるのだ?

綾乃が先ほどしたようなその場を取り繕うような愛想笑いではない。
(状況を理解していないのかしら?)
そう思い、質問してみることにした。
「あの……白鳳院さん、あなた今の状況解かっているの?
 あまりのん気に笑っていられるような事態じゃないと思うんだけど……」
「はい、殺し合い、ですね? 大変なことになりました。
 自分がこんな夢を見るなんてちょっと信じられないですよね」
「はい? あ、あの……今なんて?」

「夢です。夢の中でこれは夢と気づくものを明晰夢というのでしたか……
 しかし突然こんな場所に瞬間移動して魔法を使う人いて、その人がが小さなこどもに殺される、
 なんて荒唐無稽な出来事が現実にあるはずがないでしょう?
 千年後の世界から宇宙戦争にスカウトされるよりもあり得ないことです」

「いや、あたしはそっちのほうがよっぽどあり得ないと思うんだけど……」
と、一応突っ込んだがようやく綾乃は理解した。
確かに普通の人ならこの事態を夢と思い込むのも納得できる。
というより普通はそうだろう。
自分だってこの出来事が全て夢ならばどんなにいいかと思う。
目を覚ましたら自分の部屋で、もちろん叔父の厳馬は殺されてなんていなくて……
でもそうではないことを綾乃は理解してしまっている。
今までの戦いの経験が、精霊術師としての本能が、あのフィブリゾのおぞましい妖気が「本物」であると
細胞全体で感じ取ってしまっている。
(認めたくないけど、これって現実なのよね……)
どうしたものだろう。
白鳳院にこれは現実だと説くか、勘違いさせたままにおくか。
綾乃はおせじにも口が上手いとは言えないし、下手に現実を説くと
相手をパニックに落としいれてしまうかもしれない。
かといって夢だと思わせたままだと思いもかけない行動を起こしそうだ。
なんかとんでもない事態を引き起こしそうな危険な予感を白鳳院という少女は沸々と感じさせる。
(やっぱ残酷かもしれないけどこれが現実なんだって教えた方がいいわよね……
 もしパニックになったとしてもなんとか止めるしかない)
幸いにも近くに他の気配は感じない。
横槍が入らなければこの少女が暴れたところで簡単に取り押さえられるだろう。
(さてどうやって切り出すか……)
と考えていると先に白鳳院に話を切り出された。
「私、自分がどうしてこんな夢を見てしまうのか考えてみたんですよ」
「え? ええ……うん」
少し迷ったがとりあえず切り出す糸口が見つかるかも知れないと思い、
そのまま話をさせてみることにする。

「多分、私は……戦いたかったんです、全力で」

綾乃の背筋を悪寒が走りぬける。
邪魔なザックを放り捨てて瞬時に後方へと跳び、白鳳院との間合いをとった。
目の前の少女からは信じられない程の殺気がほとばしっている。
「白鳳院さん……あなた……」
「私の家は白鳳院流という古流武術を代々伝えています。私も例に漏れず。
 しかしその力を発揮する機会に恵まれていませんでした。
 宇宙戦艦での戦闘も楽しいですが、所詮は生か死かの緊張などないスポーツライクなものでしかありません。
 同門の好敵手と期待していた翼さんとの手合いも正直もの足りないものでした」
白鳳院は悲しそうな表情を見せたかと思うと一転、綾乃の方をみて薄く笑みを浮かべる。
「でも神凪さんは違う。私には解かります……あなたはとても強い。
 私の夢が生み出したのだから当然なのかもしれませんが、
 生きるか死ぬかの死合いを演じることのできる本当に私が望んだ相手……クス」
小さく口元を歪めると両手をだらりと降ろし、自然体で立つ。
先ほどまで迸っていた殺気が消え、完全な無為となる。
「白鳳院流に構えはありません。どうぞいらしてください」
「……っ」
(隙が……ない、大したものね。でも!)
綾乃はこの展開に戸惑っていた。
無害な女の子と思っていた相手が突然、猛獣の如く牙をむいたのだ。
戸惑わない方がおかしいといえる。
だが、殺気をその身に受け戦闘状態に思考が切り替わることで落ち着きを取り戻した。
(白鳳院さん、かわいそうだけどあなたじゃあたしには勝てないわ)
精霊術師はその名のとおり精霊魔術を使うことができる。
綾乃の場合炎術師、つまり炎の精霊術を。
だが綾乃は術を、まして炎雷覇を使うつもりは全くなかった。
使えば殺してしまいかねないし使わずとも白鳳院を圧倒する自信があったからだ。
術師は術だけでなくその体術も常人の域を超えている。
和麻や厳馬を筆頭とした高位の術者同士の戦闘ならば
純日本建築の屋敷を素手の戦闘の余波だけでいともたやすく倒壊させるのだ。
綾乃はそこまでの領域に達してはいないが、それでも普通の人間など比較にならない身体能力を発揮する。
見たところ白鳳院は殺気や闘気は尋常ならざるが、その身体能力はあくまで普通の人間。
妖魔に侵された形跡も、精霊や気の力も感じない。
術無しでも神凪綾乃と白鳳院綾乃エリザベスとの間には獅子と子猫ほどの能力差があった。
(まず気絶させて、拘束してからゆっくりと説得させてもらいましょ!)
綾乃は地を蹴り、一足飛びに白鳳院の背後へと回り込む。
背後から首筋めがけて手刀を繰り出し―――それで勝負は決まるはずだった。
だが白鳳院は綾乃の手刀が接触する瞬間、わずかに首を振り回避する。
(え?)
空ぶって思わず泳いだ右手が瞬時に白鳳院の左手によって極められ、
そのまま一本背負いの形に持っていかれてしまった。
力が強かろうがなんだろうが間接は普通の人間と差があるわけではない。
(まずっ、完全に極められてる……投げられなきゃ折れる!)
綾乃は自分からとび、受身を取りつつ地面に叩きつけられた。
次の瞬間には白鳳院は更に綾乃の腕を極めつつ顔面に膝を落としてくる。
綾乃は脱臼スレスレまで関節を強引に回して綾乃の極めから腕を引き抜き、
横に転がりながら落下してくる膝を回避した。
両者、再び間合いをあけて対峙する。
「フフ、それでこそです」
嬉しそうに笑う白鳳院とは対照的に綾乃の顔は引きつる。
(ヤバ……完全に見誤った、この娘……強い!)
パワーでは遥かに綾乃が圧倒している。
スピードでは遥かに綾乃が圧倒している。
反射速度、動体視力、その他五感能力も全て綾乃が白鳳院を上回っている。
それなのに……
(技量で完全に上をいかれてる!)
それに気配を察知する感覚も向こうは優れているようだ。
先ほどの交戦ではこちらの動きを完全に読まれていた。
綾乃と同じくらいの年齢だというのに何故こうまで技量に差がついてしまっているのか…
そこまで考える余裕は綾乃にはない。
事実を事実と受け止めて戦略を練らねばならなかった。
(持久戦に持ち込めば勝てる。でも相手の打撃はこっちには効かないけど関節技や締めを極められると
 瞬殺される怖れもある。どうしよ……炎術つかっちゃおっか?)
綾乃の力では浄化の炎を完全に操ることはできない。
当てれば白鳳院に怪我をさせてしまうだろう。
(でも牽制なら大丈夫よね)
炎を使って白鳳院を追い込み、当初の予定通り当て身を食らわせて気絶させる。
術師でもない常人に炎術を使用するのはいささかプライドが傷つくが相手の力量と今の状況を考えると
無理をして余計なダメージを負うわけにはいかなかった。
この世界にはまだ殺し合いに乗る人物がいるかもしれないのだ。
ここで手負いになって動きを制限されるわけにはいかない。
「ごめんね! 省エネでいくから!」
綾乃の掌から金色の光が迸り、それは渦を巻いて灼熱の球と化す。
それを見て白鳳院の瞳が見開かれた。
「は!」
綾乃は火球を白鳳院目掛けてまっすぐに撃ちだす。
真正面から速度を加減した一撃。
さきほどの白鳳院の動きを見ればたやすく回避されるだろう攻撃だった。
だがそれでいいのだ。
回避させ、袋小路へと追い込むのが綾乃の目的なのだから。
しかし――白鳳院はその場から動こうとしなかった。
「バッ……死ぬ気!?」
綾乃が悲鳴を上げる。
だがそんな綾乃を見ると白鳳院はにっこりと笑った。
そして――叫んだ。
「おいでませ、炎雷覇!」
白鳳院が胸の前で祈るように手を合わせるとその手の間から紅蓮の粒子が舞い散った。
綾乃はそれを信じられない思いで見詰める。
それはまさしく自分の体内に仕舞われているはずの輝き。
白鳳院が胸の前で合わせた手を開くと、その手には紅と金に包まれた一本の剣が握られていた。
「まさか……本当に炎雷覇!?」
「はぁっっ!」
気合一閃、白鳳院の振るった炎雷覇によって綾乃の放った火球は一瞬にして消滅する。
綾乃はその光景をしばらく呆然と見ていたが、突如思い出したように叫んだ。
「出でよ、炎雷覇!!」
だがなんの変化も起きない。
綾乃の内にあるはずの炎の精霊王から下賜されし神器の鼓動を感じない。
「炎雷覇!!」
何度叫んでも無駄だった。
綾乃の中に……もう熱い猛りの象徴は存在しない。
「なるほど、この剣はもともと神凪さんの持ち物だったんですね。でも、今は私の力です」
「違う」
白鳳院の言葉に対して、自分でも驚くほどの重い声が出た。
そう、違う。
あれは、あの剣は綾乃が持つべきもの。
神凪宗家の嫡子、神凪綾乃が継承した秘宝なのだ。

「それは…… あ た し の だ ! ! 」

フェイントも何もない。
ただ怒りのまま、炎術師として正しき力を纏いて白鳳院へと駆けた。
小細工はない。ただ純粋なる力と速さを持って白鳳院へと迫る。
「ひ――」
白鳳院は綾乃の形相に怯えたのか、わずかに後退すると炎雷覇を振るい炎弾を撃ち出してきた。
他の精霊術師が生み出した炎ならいざ知らず神器である炎雷覇の炎に干渉できるほどの力は綾乃にはない。
まともに炎弾をその身に浴びてしまう……が
「な……めんなぁ!!」
炎術師には炎の加護がある。
神器の炎とはいえ、素人の使い手が放った炎に焼き尽くされる綾乃ではなかった。
綾乃の全身を包む炎を裂いて手を伸ばす。
「か・え・せ !」
白鳳院は明らかに恐怖の表情とともに炎雷覇をその場に放置して綾乃の視界から消える。
だが綾乃は白鳳院には構わずに地に落ちた炎雷覇に手を伸ばし……掴んだ。
(やった!)
綾乃の表情が歓喜に染まる……しかし。
からん、と音を立てて炎雷覇が再び地に落ちる。
(あれ?)
何故せっかく取り戻した炎雷覇を取り落としてしまったのかわからず、思わず綾乃は自分の手を見る。
そして――
(間接ってこんな風に曲がったっけ?)
そんなことを思った。
綾乃の右腕は肘の外側に向けて奇妙に折れ曲がっていたから。
刹那――綾乃の脳髄を激痛が灼いた。
「くぅあああああああああああああああああ」
「フフフ、その剣にこだわり過ぎましたね」
いつの間にか背後に回っていた白鳳院が綾乃の首に腕を回し極めに入っていた。
「あんたはぁぁっっ……!!」
炎雷覇は綾乃にとって身体の一部であり全てだった。
継承した時から常にともにあり、戦いの中でともに強くなっていった。
だからこだわった。こだわらざるを得なかった。
それを察した白鳳院によって炎雷覇は囮にされたのだ。
「さよなら 楽しかったですよ」
白鳳院が腕に力を込め、綾乃の頚椎が軋む。
(和…麻、れ……ん――)
綾乃は残った左腕を背後に回すが――全ては遅すぎた。

ごりん、と鈍い音を立てて頚椎は破壊され……綾乃は即死した。

全身の力が抜けた綾乃の身体を地に落とし、白鳳院は一息つく。
そして掌を握り、開きを繰り返して身体の感触を確かめる。
ダメージはない。
白鳳院は綾乃のザックと自分のザックを回収し、その場を去ろうとして……ふと目が合った。
無念に目を見開いたまま息絶えている綾乃に。
よろり、と白鳳院はふらつき、近くの樹に手を突いて身体を支えた。
顔を蒼白にして吐き気を堪えるように口元を手で覆う。
しばらく震えていたかと思うとぶつぶつと呟いた。

「違う…違う……これは夢 夢なのですから……私は誰も殺していない
 そう、なんてことはないただの夢……」

そして白鳳院は再び顔を上げた。

「だから」

その顔には酷く陰惨な笑みが形作られていた。


【神凪綾乃@風の聖痕 死亡】
【残り40名】


【C‐6/森/一日目/朝】

 【白鳳院綾乃エリザベス@それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ】
 [状態]:健康
 [装備]:炎雷覇(体内に収納)
 [道具]:アイルクローノの鎌 支給品一式×2 未確認アイテム2個
 [思考]:基本:夢の中で今までできなかった死合いを満喫する。
      1:とりあえず人を探す。
 [備考]:綾乃エリザベスは現状を夢だと思っています。
     炎雷覇はフィブリゾの手によってその在り方に干渉を受け、
     手にしたものを一時的な継承者と認めます。



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