風メグリ黄泉カラノ帰還者






最愛の女性が死んだ時、俺の心は憎悪に染まった。
自分の心の赴くままに、復讐に走った。
あいつが死ぬ原因になった奴らを、殺して、殺して、殺しまくった。
仲間だった奴らを傷付けてまで、復讐を果たそうとした。

けど結局は最後の最後で、復讐を達成する事は出来ず、俺はその町から逃げ出した。

全てを忘れるつもりだった。
だけど、忘れる事なんて出来なかった。

気が付けば、今度は人を恨んでいた。
この世界を恨んだ。
全てのものを滅ぼしたくなった。

そして、俺の中に封じられたあの野郎と出会い、そいつを受け入れた。
俺は世界を滅ぼす魔王になった。

そこまで行ったのに、俺は判らなくなっちまった。

この世界が在ったから、最愛の人に会えた。
この世界が在ったから、あいつ等とも出会えた。

こんな世界は滅ぼすべきか、それともそうじゃないのか・・・
その審判をあいつ等に任せた。
つまり、俺が勝って世界を滅ぼすか、あいつ等が勝って俺が滅びるか。
あの野郎も、あいつ等と戦いたがってたしな。

当然の事ながら、あいつ等はそんな審判を断った。
そりゃそうだ、俺が逆の立場だったとしてもそんな事には頷けねぇ。

幾らか話をした所で、あいつ等の方が折れてくれた。
こんなくそったれな、俺の我侭にあいつ等は付き合ってくれた。
自分の心を押し殺して、それでも俺と戦ってくれた。

あいつ等との戦いの中でわかった事がある。
俺は人が憎かった訳でも、世界が憎かった訳でもねぇ。

結局俺は、あいつ等の手であいつの所に送った欲しかったわけだ。

そうして、戦いはあいつ等が勝ち。
俺はようやくあいつの元へ、逝く事ができた。



・・・・・・はずだった。




怒りに任せて手近な木を殴りつける。
それでも、この怒り収まらない。

「ふざけんじゃねぇぞ、フィブリゾの野郎・・・」

自分は死んでなくてはいけない。
自分はあの時、死んでなくてはいけないのだ。

でなけば、自分の心を押し殺して俺を殺した、リナの奴が報われねぇじゃねぇか。

このくそくだらねぇ殺し合いをぶっ壊して、フィブリゾの奴に一発かましてやる。
じゃないと、俺の気がおさまらねぇ。


正直な話、死者の蘇生ってのには少し心惹かれるものがある・・・
実際に俺が生き返ってるんだ、ミリ−ナを生き返らせるのもわけないだろう。

仮にもし俺が優勝して、ミリーナを生き返らせたとして。


あいつはそれを喜ぶだろうか?


ミリーナの事だ、絶対自分がどうやって生き返ったのか、問い質して来るに決まってる。

俺はきっと、その事を誤魔化したり、はぐらかしたりはできねぇ。

ミリーナが真実を知っちまったら、きっと俺の事を軽蔑するだろうな。
ただでさえ、リナとガウリィの旦那を、俺の無茶な我侭に付き合わせてでっかい借りを作っちまったんだ。
きっちり借りを返しとかねぇと、格好悪すぎてミリ−ナに顔向けできねぇ。

そうしてやっと、俺はミリ−ナの所に逝ける気がするしよ。

「待ってやがれよフィブリゾ、必ずぶちのめしてやるからな」




【C‐6/森/一日目/朝】

 【ルーク@スレイヤーズ】
 [状態]:健康、フィブリゾに対しての怒り
 [装備]:未確認
 [道具]:未確認
 [思考]:
    基本:殺し合いをどうにかして、フィブリゾをぶちのめす。
   1:リナやガウリィを探す。
   2:殺し合いに乗った奴は容赦しない。



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