無題
ゲームが始まって時間もあまり経たないころ逢坂山で真夜中の鬼ごっこを繰り広げる二人がいた。
もちろんお遊びではない。一人は本物の鬼で、もう片方は食われる人間。
「はぁはぁ、はぁはぁ」
何でこんな目にあわなくちゃいけないの?
追われているのは大塚愛だった。女性である上息も切れ、限界も近い。
何で?わけがわからない、どうすればいいの?
ほんのすこし前のことであった。
逢坂山付近を通った彼女は後姿を見た。誰だかわからない恐怖もあった。
が、そこは一人でいる恐怖のほうが打ち克ち、人影に向かって声をかけてしまった。
「すいませーん!もしよかったら私と」
瞬間だった。話も終わらない間にその人影は振り返りナイフを振り回して追いかけてきた。
それが「鬼ごっこ」のはじまりであった。
抵抗も考えた。逃走している間にも荷物に希望を探す。
が、現実は無情。支給された武器は鉛筆(削られていない)であった。
もちろんナイフを振り回す後ろの影にかなうはずもない。
とりあえずここは隠れてやり過ごさなくちゃ!じゃないと追いつかれて殺される!
そう考えるとすぐに行動に移す。木々の間を進み、木陰に隠れた。
あの人は誰なんだろう・・・
周りをきょろきょろ見渡しているその影に目を細める。
え?あれってミスチルの桜井さん?
はっきりとは見えないがとりあえず桜井とはわかる。
何で桜井さんがこんなこと・・・・
彼女は驚愕した。しかし感情はすぐに変わるもの。
わかりやすい顔・・・・
わかりやすい顔に笑いがこみ上げてきた。が、必死にこらえる。
桜井は諦めたのか元の道へ戻っていった。
「・・・ふふふ、あははは!!!わかりやすいかお・・・」
こみ上げていた笑いを開放した。が、一瞬で恐怖にゆがんだ。
「ねぇ、何が楽しいの?」
さっきどこかへ行ったはずの桜井が目の前にいた。
大塚は叫び声をあげたかったが、口を塞がれ、木に頭を押し付けられた。
なんで、どうして・・・・・
「滑稽だね。敵に居場所をばらすなんて。」
ゆっくり、ゆっくりと首にナイフをつきつける。
口を押さえられてる上でも少しひっと言う声が漏れる。
「命乞いの時間をあげるよ。」
押さえらていた口が開放された。
いやだ・・・私は人気歌手・・・死ねない・・・・いや、 死 な な い
私は不死身、そうだこいつを殺してやろう・・・・・鉛筆も目に刺せば何とかなるだろう・・・・・・
殺す殺す殺す殺す殺す殺
そこで彼女の思考は元に戻される。また口を塞がれ気に押し付けられた。
「タイムアーップ・・・・何?面白くないなぁ。なんかしゃべってよ。もっともがくもんだよ?」
桜井は目線を彼女の手に落とす。
「ん?・・・っぷ!!あははははははは!!!何、こんなもので僕を殺そうとしたの?
前言撤回、やっぱ君面白いわ。」
左手に握られているのは鉛筆。向こうは立派なナイフ。惨めさと恐怖に少し涙が出てきた。
「その面白さに免じて助けてあげよう。」
本日2度目の開放。泣き顔が見る見る晴れた。と、同時に怒りがこみ上げた。
屈辱だ・・・今や私もこいつと並ぶほどの人気歌手・・・
何で下に見られなきゃいけないの・・?絶対後で殺す・・・
大塚はこの場を去ろうとした。
が、首に衝撃が走る。え?・・・赤い痛い苦しい紅い痛い痛い
い た い よ
「最初から助けるつもりはないけどね。僕が殺さないのは桑田さんぐらいかな。」
前のめりに倒れた大塚愛のアンテナを引っこ抜くと口笛を吹きながら桜井は闇に溶けた。
【大塚愛 死亡】
【残り29人】
【15番 桜井和寿(Mr.children)】
深夜:逢坂山
[状態]:健康、返り血をあびる
[装備]:ブッシュナイフ
[道具]:そのまま
[思考]:1.桑田以外の人間を殺す
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