無題
青々とした葉に朝露が滴る。
塩釜六所神社の境内。聞こえてくる音といえば、
支給品を確認している自分が立てるガサガサという雑音と、
鬱蒼と生い茂っている木々が風で靡く音だけだ。
「殺し合いのゲーム・・・・・・・・・・」
彼は、このゲームが始まったときから人が人を、
ましては音楽界の先輩や友人なんて殺すなんてことは絶対ないだろうと思っていた。
それはあの大男(布袋寅泰)の無残な姿を見せつけられたこともあるし、
音楽作りに励んだ人間がそこに手をつけることはないだろうと思っていた。
だが、この状況ではそれが当たり前のように行われるのだろうか・・・・・・・・・・
考えてみろ。この自分の精神の状態。自分がおかされている状況。
もうどこかで既に殺し合いが始まっているとしか思えなくなってきた。
「閣下ねぇ・・・・・なんで言いなりにならなきゃならないんだ・・・・・」
答えは簡単であった。逆らえば殺されるから。
----------日本音楽界を代表するユニット-----------
今ここにいる彼からは、
彼がそのユニットのヴォーカルだということは絶対に分からないだろう。
彼はまだ戦闘こそしていないものの、体中から吹き出る汗はもとより森や平地を駆けてきた為に、
髪はやつれ、顔や服はもう土だらけになっている。
どこから見てもその人とは分からない。
「支給品一式・・・・・あぁこれで全部か」
支給品の食料などをバッグから出してバッグの中に残った物に目をやった。
そこにはニュースなどでたまに耳にする(彼自身はあまりTV自体見ないが)
黒くてツヤのある重い物体が無造作に転がっていた。
トカレフTT-33
取扱説明書もあったがやはりその説明書もまた無造作に置いてあるだけだった。彼はそれに目を通したときその拳銃の名前を初めて耳にした。
音楽活動に専念している彼は拳銃には興味はないし、エアガンですら殆ど手に持ったことがない。
その銃を手にし、とても重いと感じたが、逆に肝がすわって良い感じだ。
「殺し合いか。極力避けよう。」
極力、とはいかなるものか。と自分の思想に尋ねる。
その単語よりかは単純な結論が出た。
本当に自分が戦うのはこのゲームの主催者。
場合によってはだが自分と戦おうとする人物。
戦う-----と言っても全て勝つ訳ではない。
彼-----稲葉浩志はそこで初めてごくわずかながらゲームに参加する意思を見せた。
また会いましょう いつかどこかで 忘れるわけないだろう baby, you're the only one♪
こんな曲を歌いながら稲葉はこの神社を立ち去った。
【塩釜六所神社付近(エリア29)/早朝】
【01番 稲葉浩志】
[状態]: 健康
[装備]: トカレフTT-33(弾数8発+1発)
[道具]: 支給品一式
[思考]: 1.ゲームの主催者と戦う。
2.場合によっては自分と戦おうとする人物と戦う。
トカレフTT-33
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%95TT-33#.E5.AE.89.E5.85.A8.E8.A3.85.E7.BD.AE.E3.81.AE.E3.81.AA.E3.81.84.E9.8A.83
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