無題
八ツ蜂鼻(展望台)で、押尾学は景色を見ていた。
これからどうしようか。人を殺す?でも30人のうちの1人になるなんてうぬぼれすぎてやしないか?
でもそうしないといつかは殺される。やはり死にたくはない。みんなそんなもんだろう。
だから人を殺す。あるいは片隅で震えて死を待つ。受け入れる。俺はどこにも入れない。
さぁ、困ったもんだ。
俺の武器、スパス12。高性能なショットガンらしい。
殺し合いにはとても向いている、いわゆる折り紙付きの「アタリ」だろう。
だがやはりこれで人を殺す気にはなれない。どうしても最後の最後で決断が鈍ってしまう。
その時押尾の脳裏に一瞬だけ二文字が浮かび上がった。
脱出。
これも成功する確率は低い。が、こちらは諦めようと思っても諦めきれない。
目を瞑る。人を殺すか、脱出するか。
思えば俺はカート・コバーンの生まれ変わりだの何だの口だけだ。
だが今回は違う。これは口だけではない。単純に一人の男としての決断だ。
この考えを改めるつもりもない。その必要がない。
俺がとるのは脱出。
押尾は目を瞑っていて、闇しか映さないはずだがなぜか光が映る。
目を開けるとちょうど押尾の目に日の光が差し込んだ。
【八ツ蜂鼻(エリア5)/早朝】
【06番 押尾学】
[状態]: 健康
[装備]: スパス12(27発+8発)
[道具]: 支給品一式
[思考]: 1.脱出する。
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