蜩の泣く夜に
月が少し西に傾いていた
辺りでは蜩(ひぐらし)が鳴いている様だ
しかしその美しい音色に耳を傾けている余裕など微塵もなかった
覚悟は出来ていた
一青窈(22番)は涙で濡れた頬を腕でそっと拭った
(人を殺すのも嫌……人に殺されてるのも嫌……
それならいっそ一想に…死んでしまおうかな……)
一青は錆付いたパイプ椅子から立ち上がり、先程投げ捨てたSOCOMを探し出した
しかし月夜の光りが届かないこの部屋には漆黒の闇が立ち込めている…
まるで、一青の選択を頑に拒絶する様に…
一青はこのまま銃が見つからず、誰かに見つかり殺されてしまうのではないかと言う焦燥に駆られた
漸くその黒光りする「悪魔」の元に辿り着いた
一青は英文が敷き詰められた説明書を取り出すと、1分程読み、安全装置をゆっくり解除した
(ごめんね…お姉ちゃん……先にパパとママの所に逝くね……いっつも迷惑ばっかりかけて本当にごめんね……最期まで迷惑かけちゃったね……
葬式に成ったらいつものバンドのメンバーも来てくれるかな……また皆にに怒られちゃうのかなぁ…)
一青は静かに涙を流しながら心の中で今迄会ってきた人に謝罪していった
そしてゆっくりと45口径の銃口を蟀谷(こめかみ)に突き立てる
啜り泣く声が暗く閉ざされた部屋に静かに響き渡る
その声は辺りの蜩の鳴き声に共鳴してる様にも思えた
ごめん…ね……
【22番 一青窈】
深夜:小柴山北東側山中山小屋内(エリアNo.17)
[状態]:健康
[装備]:H&K Mk-23 SOCOM Pistol (消音機、レーザーライト、スコープ付き)、装填弾10発
[道具]:予備弾(25発)、支給品一式
[思考]:1.自殺志願
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