不敗の神話






(ゲーム界)

壱は興味からゲーム界に足を踏み入れていた。

周囲にはさまざまな種類のゲームの世界がちりばめられているにぎやかな場所だった。

ポケットの中にはその辺で拾い集めたコインがいくらか入っている。

「さーて…、何か面白そうなものはないかな…?」

正面のひときわ目立つ所を見るとちょうど一人の人物がゲームに勝利し大量のコインを獲得している所であった。

その人物の横にはすでに大量のコインの山がいくつも積まれている。あまりの量に目を見張った。

誰なのかよく見ようとしてついその人物と目が合ってしまう

すると不敵な笑みを浮かべその人物の方から話しかけてきた。

「さあ、ゲームの時間や!

どや?何でもあんたの好きなゲームでええで!

あんたの持ってるコインとワイの稼いだコインの山全部。そいつを賭けてワイと一勝負してみる気あらへんか?」

明らかに両者の所有しているコインの量には圧倒的な差がある。

しかも何でも自分の得意なゲームで勝負して良いと言う。どう考えても自分に有利な条件だ。

壱は笑みを浮かべ

「フ…面白い…!よし!その勝負乗ってやる!」

と快く勝負を受けた。


(しばらくして)


「なんだあいつ…いくらなんでもメチャクチャ過ぎだろ…

超強力な座敷童子でも憑いてるのか…?」

壱は不破龍一とのギャンブルに負けて持っていたコインを全て奪われ一文無しになっていた。

それもそのはずで不破龍一の強運は福引きすればまず特賞、
適当に数字を押していくだけで全然知らないナンバーロックを一発で解除。
ルーレットも勝手に大当たり、神経衰弱も記憶も何も関係無く全て一発で当て続け、
全て自分の思いのままのコイントス、
適当に開いた教科書のページの問題がその日のテストに出題される、
カードパックを買えば中身全てシークレットレア・ウルトラレア・スーパーレア・パラレルレアのカードで埋め尽くされ、
ホームページを開けばキリ番を踏み、店に入れば○○人記念で無料サービスといった具合だ。
こんなのに正面から普通に挑んで勝てるワケがない。

壱はゲーム界から立ち去った。

余裕たっぷりの不破龍一は会心の笑みを浮かべながら虚空に向かって宣言する。

「最初、見たとこ本物の宇宙人や神様っぽいのもおったからここなら少しはワイを楽しませてくれると思うたんやけどなぁ!

退屈なんや!ワイはギリギリの勝負がしたいんや!」

そのとき不破龍一に向かって上半身をペンキで青く染めたスキンヘッドの巨漢が猛烈な勢いで突進してきた

「うおぉぉぉぉぉぉ!!コインをよこせええぇぇぇぇぇ!!」

「な!?うわっ!」

不破龍一が間一髪避けると突進してきた巨漢は不破龍一の背後にあったブロックに激突し、

さっきまで不破龍一が立っていた辺りから大量のパワーアップアイテムが飛び出してきて不破龍一に注がれた。

巨漢は向きを変え不破龍一に向かって連続でパンチを繰り出す

「ガオッ!!」「ウガッ!!」

「なんやこいつ、暴力できへんちゃうんか!?」

不破龍一は攻撃を回避しながら後退していく。と、その直後巨漢の足元のブロックが突然崩れ巨漢は底知れない穴に落ちていった。

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・!!」

不破龍一は勝ち誇った笑いを浮かべた。

「ふっ、ワイを誰だと思っとるんや!ワイは幸運に守られとるんやで!お前らごときワイに触れることすらできへんのや!」

「…ん?これは何や」

巨漢が落ちていった穴の周囲のブロックから一枚の紙が飛び出しひらひらと不破龍一の手の中に入った。


『これを読むことができたあなたはとても幸運です。

この紙に書かれている場所に行けばあなたが本当にもとめている何かに出会うことができます…』


「…やて?面白いやないか!いたずらかもしれへんがこっちはヒマなんや!行ってやるわ!」

そして不破龍一は意気込みながらゲーム界をあとにした…


【名前】不破龍一
【特殊能力】強運
あらゆることにどう考えてもチートレベルの幸運が働く。
常に幸運に守られている。
【補足】あらゆる勝負にうまれてから一度も負けたことがない。

【位置】A-6 ゲーム界 → ?
【状態】正常
【スタンス】挑戦的・気が向けば他人に自分の幸運のおこぼれを与えることもある
【羽の状態】無色透明
【リング数】0


【名前】壱
【特殊能力】自分が住む所の住人にプチ幸せを与える。
【補足】なぜか大人になってしまった座敷童子。座敷童子としての力は弱い。子供や能力者以外にも普通に見られる。

【位置】A-6 ゲーム界 → 適当に歩いてみる
【状態】正常
【スタンス】適当に楽しむ
【羽の状態】無色透明
【リング数】0


【名前】青い借金とり
【特殊能力】かかわった相手を幸せにする
【補足】暴力を振るうかのような勢いで襲い掛かるが、
暴れれば暴れるほど必ずその影響が周囲のキャラクターにとって良い(好ましい)結果となる。
実際に暴力行為に及ぶかという直前に本人が勝手に改心していい人になるため決して暴力が振るわれることはない。

【位置】A-6 ゲーム界
【状態】正常(激突や落下によるダメージは一切ない)
【スタンス】コイン強奪
【羽の状態】無色透明
【リング数】0





解説

・不破の一人称は「ワイ」または「オレ」もしくは「俺」。どうでもいいので気分次第で適当。
不破は大阪弁。発音がやや訛っているが文章では再現できない。


・壱には「打たれ強い」「長生き(不老不死?)」という身体的長所があるがこの世界では意味が無い。
プチ幸せについても自分自身に作用するものではないため、実質、壱はただの一般人と何も変わらない。


・青い借金とりは「絶対に暴力にならない」ため暴れても問題ない。危険人物かと思いきや実はラッキーキャラ。
どこまでもしつこく追いかけてくるため、避けて逃げ続け改心するまで長時間引き伸ばした方が利益がたくさん得られる。
こちらが攻撃を受けるような場面になると強制停止し改心して去って行ってしまうためそれ以上追いかけてこなくなる。



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