戦【バトルロワイアル】






座席や厨房一切の人のいない閑散としたレストラン
不気味なほど静かなこの店に誰も人間の気配はなかった。
いや、一人、男がいるにはいたが――
その男は「ヒト」と表現するにはあまりにも、し難いものがあった。
なぜなら、その男の頭には山羊のような角がにょきりと生え、
顔は猛禽類の鳥のようにシャープな形な上に、口の代わりに鋭い嘴をその顔につけていた。

レストランの座席に座りながら、「鳥男」はニヤリとその口を歪ませる。

「……誰だか知らんが、この我が輩をこんな所に招待するとは……実に面白い」

彼はまるで目の前に極上の料理が出たように笑みを浮かべながら、舌なめずりをする。
とはいっても彼にはこのレストランに出るようなハンバーグや、デザートなどは一切口にはしない。


彼の食らう者は謎。彼にとっての空腹は脳髄の空腹。

彼は謎を食らい生きる魔人の中でも特異な魔人、脳噛ネウロなのだから。


「この場所に漂う大量の謎の気配……我が輩の食事に困らないほどにあるに違いない」

次にネウロは自分のそばにあったデイバッグに目をやる。

「まずはこの中を確認するか」

ネウロはバッグのテーブルの上に置き、、中を確認する。
中には簡素な食料、ここの会場が描かれているらしい地図、懐中電灯、コンパス、
中に入っている支給品を一つずつテーブルの上におく。

「む……?」

ネウロは最後に文字が書かれた奇妙な紙を取り出した。

「ふむ…… "を" を除いた五十音の文字が並べられているな」

これは一体何を意味するのだろうか。何かの暗号だろうか?
ネウロはこのレストランに飛ばされる前のことを思い出す。
あの最初に殺し合いが宣言された広間での出来事を。

(あの時、見せしめとして男が一人殺された。スピーカーからの声によると何かの手違いであの男は呼ばれたらしい。
あの男も含めてここに飛ばすことで、自らが手を下さずとも殺し合わすこともできたはず。
それをよしせず男は殺す理由は?何か不都合な点があるからなのだろうか?
一人余計に連れてこられることで起きる不都合……この殺し合いでの数合わせ。
おそらく、この紙は殺し合いに連れて来られた者の名前を表しているというのだろう。
だとすると何故、五十音順で並べる必要がある?何故一文字も名前の被りは許されないのだろうか……)

「まだ、情報は不十分のようだ。だが、一つだけは分かる。この紙には必ず『謎』が隠されている」

ネウロは一通り取り出した道具をしまうと次に自分の首に巻かれている銀色の首輪を見る。

「名簿の『謎』の他にもこちらの『謎』もいずれは解く必要があるな」

バッグには当然のことながら解体できるような道具はない。
どこかで道具を調達する必要がある。とネウロは考える。
そして、解体するための首輪も必要だ。
だが、その問題も大したことではないだろう。
この世界で『謎』が作られるとしたら、必ずそこに首輪のサンプルがあるのだから。

ネウロが立ち上がった瞬間その顔は一瞬にして、黄色と黒の髪の青年へと姿を変えた。
この姿は彼が地上で『謎』を食らうための姿。
ネウロは出口に向かって歩き出すが、はたと立ち止まる。

「おっと、そうだ。奴隷も用意せねば。ヤコがいない時のことを考え、ここで新たに補充する必要があるな」

ドSな彼にとって自分の正体の隠れ蓑にもなり、自分の嗜虐心を満たす奴隷は欠かせない存在である。
それに情報交換をする時は一人よりも複数人いた方が情報は取引しやすい。


元いた世界での彼らの可能性を垣間見たネウロはこの狂った殺し合いの場彼ら「ニンゲン」がどのような成長をするのか。
殺し合いに抵抗する者、殺し合いにのる者、彼らはこの極限の場でどのような進化を遂げるのか?
ネウロは期待に胸を膨らましながら、レストランを後にする。

【C-4/レストラン前/一日目深夜】

【脳噛ネウロ@魔人探偵脳噛ネウロ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考]
基本方針:この殺し合いの謎を解く
1:首輪を入手する。
2:奴隷を探す。
[備考]
五十音に並べられた紙は参加者の名簿で、何か意味があると考えています。



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