自分を持つ者、持たぬ者
ここはB‐1に建っている美術館。
この美術館のホールに一人の男がいた。
見た目としてはターバンのようなものを巻いており、パッと見ればどこかの石油王だと思ってしまうだろう。
だが、男は明らかに『普通』ではなかった。
隆々とした肉体、これだけならまだ『普通』の範疇といえるだろう。
しかし、背中には明らかに人間とは異なる『何か』があった。
その『何か』だけで男が人間でないということは明白だろう。
それこそ百人、いや千人に聞いても「人間ではない」と口を揃えて答えるだろう。
そして男の口は大きく尖っていた。
決してこれは比喩などではない。
見たまんまに尖っていた。
やがて男の尖った口からとある言葉が漏れた。
「まったく、殺し合いなんてどういうことなんだよ。」
その声の主の名前はルド、鳥人族が暮らすビドー国の王子だ。
彼は光の軍勢『シャイニングフォース』の一員として悪魔軍と戦っていた。
しかし、その戦いの中で罪のないものが悪魔軍の侵攻により苦しみ、時に犠牲になる所を幾度となく見せつけられてきた。
そして悪魔軍の親玉であるゼオンの居城である古えの塔を目前にかつてともに旅をした視力を失った少年オッドラー、悪魔軍の将軍であるオッドアイが立ちはだかった。
辛くもボウイ率いるシャイニングフォースが勝利したのだが、オッドアイは死んでしまった。
ボウイ達と旅をした時の思い出を馳せながら…。
その悲しみを何とか飲み込み、いざ古えの塔に踏み込もうとしたとき急に目の前が暗転した。
そして誰とも分からぬ男の声により殺し合いを命じられたのだ。
「それにしてもあの男、手違いで殺されたのか。」
ルドの脳裏にさっきの光景がフラッシュバックする。
名前も何も知らない男の首が一瞬にして吹き飛んだあの光景が…。
そして、その原因である首輪が自分にもつけられている。
もし、自分があの立場だったら…。
そう思うと背中に冷たいものが走った。
「……とりあえずはこの首輪を外さないといけないみたいだな。」
彼は首輪に触りながら呟いた。
しかし首輪は機械でできているようだったが、彼に機械の知識は殆どない。
そのため彼が首輪を外すのは不可能だった。
「ロイドかバッカスがいればいいんだけどな。」
仲間の中で機械に詳しいのはロイドやバッカスぐらいだろう。
しかし、彼らがいるかどうかは分からない。
なにせ殺し合いを命じられた場所は暗闇に包まれており、声も様々なものが混ざっていたため彼の知り合いがいるかどうか分からなかった。
さっき袋の中身を見たときに地図ではない少し気になる紙はあったが…。
ここでふとあることに気が付く。
「……わざわざ首輪を外せそうな人を殺し合いなんかに参加させているのか?」
あの男は首輪を自由に爆発させることができると言っていた。
また、禁止エリアに入っても爆発すると言ってたな。
そこまで重要なら、男にとって首輪を外されることはデメリットにしかならない。
それなのに機械に詳しく首輪を調べられるような人や親友であるピーターのようにわざと首を切られて生き返ることにより首輪をはずすことのできる人をわざわざこの殺し合いに参加させるのだろうか?
いや、もしかしたらあの男が気づいてないという可能性も…。
しばらく考えていたが、ふと今自分がやるべきことに気がついた。
「まあ、まずは武器を見つけなきゃな。」
戦うにしろ、身を守るにしろ素手戦闘ができないルドには武器がなければ話にならない。
「できれば剣があればいいんだけどな。」
「うわー、おっきい鳥さんだー。」
独り言をつぶやいていたルドは突然発せられた声に驚き振り返った。
しかし、後ろには誰もいない。
「ど、どこにいるんだ?」
「こっちだよー。」
自分の足元から声がして足元を見る。
そこには一匹のモグラがいた。
「き、君は…?」
「うー、オレはもん郎。君はー?」
「僕はルド。よろしくな。」
2人(匹?)は軽く自己紹介を終えたところで、ルドはもん郎が持っているあるものに気がついた。
「ん?それは…どこで見つけたんだ?」
それはルドが探そうとしていた武器である剣だった。
そういえばあの男は、あちこちに武器などがあると言っていた。
「もん郎、それを僕に譲ってくれないか?」
ルドはすぐさまもん郎に頼んだ。
その直後、ルドはあることに気づいた。
ここは殺し合いの場であるということ、それゆえ武器を簡単に渡すということは命取りになるということに…。
ゆえにそう簡単に武器を譲ってもらえるとは思っていなかったのだが…。
「うん、いいよー。」
「え?」
ルドはあまりにあっけなく剣を譲ってもらえたことにびっくりした。
この殺し合いの場において知らない人に軽々しく武器を渡すのはあまりに不用心すぎる。
しかし、それも仕方ないことだった。
なにせ、もん郎は自分の考えというものを持っておらずなく、ホイホイと他人に従ってしまうのだから…。
「僕はこれから仲間を探そうと思ってるんだがもん郎はどうするんだ?」
「どうしようー。」
剣を譲ってもらった後、ルドはもん郎にこれからの行動を聞いたがまだ決めていないようだった。
「決めていないなら僕と行動するかい?」
「うん、行動する。」
【もん郎が仲間になった】
「とりあえずは地図に書かれているこの左上の建物に向かおうと思ってるんだがいいか?」
ルドは地図を指さしながらもん郎に尋ねた。
「うん、一緒にこの建物に向かう。」
ここでルドはさっきから気になっていたことを聞いてみた。
「もん郎、さっきから『うん』としか言ってないけどそれは君の意見かい?」
「うん。」
「……」
この答えにルドは呆れながらも、もん郎と共に美術館を後にした。
【B-1/美術館前/深夜】
【ルド@シャイニング・フォースII 古えの封印】
[状態]:健康、もん郎に対して呆れている
[装備]:ブロードソード@シャイニングフォースシリーズ
[道具]:デイバッグ、支給品一式
[思考]:基本・殺し合いから脱出したいが、首輪を外せる人がいなければ…
1・仲間を探すためA-1の建物に向かう。
2・ロイドやバッカスがいれば合流したいけど…
※オッドアイ戦直後からの参戦です。
※主催者は首輪を解除できそうな人物や死んでも生き返る人物を参加させてないかもしれないと思っています。
【もん郎@忍ペンまん丸】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式
[思考]:基本・???
1・ルドについていく。
※殺し合いの場にいることを理解していません。
※いつも付けている鉄の爪は没収されています。
【ブロードソード@シャイニングフォースシリーズ】
ゲーム内では剣士や鳥人などが使用する剣の武器。
ちなみに1600Gで店に売られている。
攻撃力は中程度で特殊な効果はない。
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