屹立する魔神






銀色の巨神が、大地にゆっくりと降り立った。
人間に近い形状をしていながら、全身から鈍く光を照り返す装甲。
張り出した肩。両腕は、手は親指以外は4本ともまとまっており、物を掴むという機能を最低限しかできない。
本来ならば、身長:77メートル 体重:9万6千トンを誇る、
超ド級の惑星防衛兵器と侵略宇宙人の科学の結晶たる肉体はいまや3mしかなかった。

これの名は、『電脳魔神デスフェイサー』。あらゆる外敵を排除するためだけに作られた決戦兵器である。
そのデスフェイサーは、管理されていた宇宙人たちから切り離され、単騎この殺し合いに招かれた。
彼は、言うならば主催者側から送り込まれた刺客――ジョーカーともいえる。
なぜなら、本来モネラ星人を守護する以外することのないこれのプログラムは、いまや別の命令に上書きされている。
内容は、至極単純。サーチ・アンド・デストロイ。敵を確認し、破壊せよ。それだけだ。
マッハ25を超える飛行速度。いかな兵器の直撃もびくともしない超装甲。
自分の身長の何倍も内蔵ワイヤーで伸びる伸縮性の巨大な右腕、デスシザース。
それに取り付けられた、空の彼方まで届きビルをなぎ払い切り倒したデスシザーレイ。
敵を一瞬でハチの巣にする左腕につけられた高速射出式レーザーガトリングガン。
前方に身長の半分ほどの直径の、光の裁きすら防ぐ高出力空間歪曲バリアー、ジェノミラー精製能力。
そして、威力を落としてなお、地図から一つの島を消滅させ、
射程約9AU、12億kmを誇り惑星間射撃による惑星サイズの敵性存在を抹消することも可能な、胸におさめられたネオマキシマ砲。
身長比に合わせて性能を落としたうえ、さらに実力、射程ともに約1%ほどに抑えるデチューンが施されているが、
それでも十二分すぎるほどの超戦闘能力を持つ魔神。
1%の実力――持ち上げられる重量は200t。飛行速度時速200kmオーバー。射程数十mのレーザー&ガトリング。
いかに破格の実力か分かるだろう。
1%、いやそれ以下に念入りにリミッターが施されたとして、に抑えたとしても、惑星を消し飛ばすネオマキシマ砲はどれほどになるのか。

「…………」

殺人機械に言葉は必要ない。
ただひたすらに、怯える人間を探し出し、無情な死を与える。
必死に抗うものに、戦いの中消える機会を与える。
この、バトル・ロワイアルの進行を円滑に進める――盛り上げるための舞台装置だ。
大地を揺らす一歩が踏み出される。
人間よりいくらか大きい程度になっても、その隠しきれない威圧感が体から吹き出ていた。
無感情。無神経。倒れる一瞬まで、映画のジェイソンやT-1000のように追いつめ続ける。
一つ、怪物は言葉を喋ってはならない。
二つ、怪物は正体不明でなければいけない。
三つ――怪物は、不死身でなければ意味がない。
怪物の三条件を満たす機械の怪物が、獲物を求め感情の映らない瞳で周囲を睥睨していた。

 【C-4/中心部/深夜】
 【電脳魔神デスフェイサー@ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ 新たなる二つの光】
 [状態]:損傷なし
 [装備]:全身に取り付けられた重火器
 [道具]:デイパック、基本支給品
 [思考]:基本 サーチ・アンド・デストロイ



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