Never Gonna Stop






 どうも皆様、賭郎拾陸號立会人、門倉雄大と申します。
以後お見知りおきを。
さて私、門倉雄大、現在とても不思議なことに巻き込まれております。
例えるならば漫画や小説の世界とでも言うのが正しいのでしょうか。
ともかく大変珍しい出来事です。

 私が獏様たちと天真たちの迷宮勝負を宣告した直後、
目の前がまるで深海の奥底のように真っ暗となりました。
次に目が開いたときには、わけのわからぬ場所で、
殺し合いをしろと命じられて、
『タケシ』という少年が、無残にも殺されていく場面でありました。
この門倉雄大、はっきり申し上げますと、理解不明です。
そしてあまりにも理不尽すぎると思われます。

 得体の知れぬ輩からの命令で殺し合いをしろと……!
おのれなめとんのか……!
わしは賭郎立会人や、賭郎の指示も無くわしを動かすとは言語道断じゃ!
っと、これは失敬。
つい本音がでてしまいました。
私門倉雄大、この殺し合い、誠に申し訳ないのですが「乗らない」方向で行かせてもらいます。
ですがもし賭郎が関わっていれば、また違った働きをしたいと思いますが……

でもまあ親方様ならありえなくもないか……

 一先ず私は支給された物質をチェックさせてもらいます。
と言っても中に入っているものは水や食料、その他行動に必要なものだけで、
特筆するものもは一切ありません。
責めて殺し合いをしろと言っているのだから、
武器の一つくらい入れて欲しかったものです。

 さて、とても簡単に荷物の点検も終わったことなので場所を移しましょうか、
何もない場所で留まっているのもおかしなものですし、
それに──
「私を先ほどから観察しているお嬢様のことも気になりますしね」

 私がこのようなことを少し大きめに口にすると、やや斜め後ろにある建物の陰から、
これは……たぶん高校生でしょうか、黒いブレザーを見事に着こなしている、
大和撫子といって良いほどの長髪鳶色髪のお嬢様が、手にはどこで調達したのかはわかりませぬが、
立派な日本刀を持って私の視界に入ってきました。
ちなみにこの門倉雄大、このような日本人らしいお嬢様、決して嫌いじゃありません。

「どうも初めまして、私は門倉雄大と申し上げます。以後、お見知りおきを」
 私は一応名前を名乗ることにしました。
お前とかあんたとか言う話し合いは、積もる話もなかなか積もらないと思われますし。
「あなた馬鹿? 殺し合いをしろって言われているのに、平然と自分の名前を言う人がどこにいるわけ?」
 ここに存在させてもらっています。
まあ、彼女が言っていることは正論ですが、ここまでハッキリ言われてしまうと少し肩を落としたくなりますが。
「まあ別によろしいのではありませんか、お嬢様は私を見つけた瞬間に襲ってこなかった時点で
私はお嬢様に殺されることを心配する必要がなくなりましたので」
 お嬢様は私の言葉を聞くとちょっと呆れたような顔をしていました。
おおよそ自分の考えを当てられたからだと思われますが。

「ところでお嬢様の表情や武器を持っていると言うことから判断しますと……
このイベントに乗っていますね?」
 これはあくまで、私門倉雄大の直感ですが……
お嬢様は少しハアと吐息をつき、あまり楽しそうではない顔をしてこちらを向いてきました。
「乗るって言えば……乗るのかな……?
殺し合いをしろってことはイマイチ理解できないけど、
こんな不思議なことって私、凄く楽しみだったのよ!
 本当に、ずっとこんな風な面白いことに巻き込まれたいと思っていたから! 」
 お嬢様はきっぱりとキラキラと目を光らせながら自分の意思を私に伝えてくれました。
楽しそう、ですか。 
まあ、このような年頃はそう言うことを望む傾向も少なくないと思われます。
「ふむ……つまり乗るか乗らないで迷っていると言うことですか」
「たぶんそうよ、だけど楽しむにしてもここに拉致してきた連中、
『殺し合いをしろ』としか言っていなくて、『どうすれば決着がつくのか』とか、
『最後まで生き残ったら何があるのか』とかその辺の重要な部分、まったく何も言っていなかったから、
どういう行動をとればいいか迷っていたのよ、
とりあえず最初にいた部屋で日本刀を見つけて適当に徘徊していたら、門倉さんがいたって訳」

 どうやらこのお嬢様、単なる好奇心旺盛なだけな間抜けな輩ではなかったようです。
確かによくよく考えてみると私達が入手できた情報はかなり少ないものでした。
『殺し合いをしろ』と言う抽象的なことだけで、ここから元の世界へ変える方法も、
この殺し合いが終わる条件も何も言っていません。

「ねえ、門倉さんも特にすること決まってないんでしょ? だったらさあ、私と一緒に行動してくれる?
 門倉さんも別に積極的に人を殺す快楽殺人者には見えないし」
私が少し考えていると有無を言わさずお嬢様が話しかけてきました。
無論この門倉雄大、このお嬢様とは違い乗るつもりはありません。
(もっとも、このお嬢様も殺し合いをするということにイマイチ実感がわいていないようですので、
実質乗っていないと同等だと思われますが……恐らく、お嬢様の乗るとは
この不思議空間に長く居て、楽しみたいと言う事なのでしょう)
しかしこのお嬢様と組むこと自体私の中の中立を裏切ることではありません。
なぜならこのお方は私から見れば『か弱い』女性であります。
そんな女性をむざむざ強姦魔や快楽殺人者、精神障害者がいても可笑しくない場所で
一人で行動させるようなマネなどできません。
ただ、彼女の場合自分から悪鬼共と接触を取る可能性も十分ありましょうが……
そんな後の事までは……

「いいでしょう、この門倉雄大、お嬢様と組むこと悪い考えだとは思っていません」
「なんか硬いはね……門倉さんは執事と使用人とかなの? それと、
こっちが言わなかったのが良くなかったのかも知れないけど、私は光陽園学院一年涼宮ハルヒ!
それじゃあよろしくね!」
涼宮ハルヒと言われるお嬢様は暗闇に光る蛍のような悪意のない笑顔を浮かべ、
私に自己紹介をしていただきました。
そう言えば、執事は夜行様でございます……
と突っ込もうとしましたが、おおむね伝わらないと思うので、
喉まできた言葉をぐっと飲み干します。
「言葉遣いは職業での癖でありまして、ご了承ください。
それでは涼宮様、私達は何処へ向うべきでしょうか」
「そうね……とりあえず、あっちの方角に病院みたいな建物行きましょ!、
人もたくさん集まりそうだし」

 そういって私と涼宮様は遠くにある真っ白な建物、
いかにも病院らしい建物を目指して歩みを進めます。

 私、門倉雄大、今後はどんな運命に巻き込まれるのでしょうか、
この場所に連行された以上の驚愕に襲われる可能性も十分ありえると思います、
ただ一つだけわかることは、どんなことがあろうと、
今日も賭郎立会人にふさわしい行動をとり続けていると言うことだけです。

【2-A 西部/一日目・深夜】

【門倉雄大@嘘喰い】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式
[思考]ゲームには乗らない。でも賭郎が関わっていたら別な働きをする。
1:涼宮様と一緒に病院へ向う。

※登場時期は嘘喰い11巻のラビリンスが始まった直後です。

【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:日本刀
[道具]:基本支給品一式
[思考]面白そうだからゲームに乗るけど殺し合いは……。
1:門倉さんと共に病院へ向う。
2:こんな不思議なことを待っていたのよね!
※登場時期は涼宮ハルヒの消失のキョンに会う前です。



前話   目次   次話