もはやヒーローも悪役もいない
「……殺し合い」
先ほどの少年は確かにそう言った。
多数の人間をドコからともなく連れ去り、殺し合いを強要させ、さらに二人の青年の命まで奪った少年。
数えられないほどの罪をすでに犯した少年、そんな少年を彼女が許すはずはなかった。
「狩魔の人間は完璧を好む……この狩魔を敵に回したことを精々悔やむがいいわ」
鞭を弄りながら少女は歩き続ける。
「殺人罪、略取・誘拐罪、脅迫罪、そのほか諸々の罪をこの狩魔冥がカンペキに立証してあげるわ」
鞭を振り回し、誰もいない天に向かって指を突きつけた後高らかに叫んだ。
「法廷で!!」
天に向かって高らかに叫んだ後、彼女は目の前にあった教会を探索することにした。
この地にどれだけあるかはわからないが、「完璧な立証」のための証拠品を集めるため。
中に入ってみた、そこにあったのは神母像、ステンドグラス、十字架等。
何か違う感じもしたが普通の教会の造りと一緒である。
手がかりはない……しかし情報収集はできるようだ。
「愚かな人の子よ、貴方はこの場所で何を求めるのですか?」
冥の視線の先に立っていた牧師も気がついていたようで、冥に問いただしてきた。
臆することなく、冥は牧師へ向かっていく。
「そうね……あえて言うなら、真実かしら」
冥は着々と牧師の下へ歩みを進めていく。牧師はただ本を読みながら、その場に立っている。
「逆に聞くわ貴方は、この場所で何を求めているの?」
その問いに、牧師は本を閉じてメガネを直し冥の方へと向き直った。
「私の信ずる神の復活……ですが、あの少年に閉じ込められているこの状況では難しそうですね」
冥の表情が険しいものになる、神の復活なんて言葉を聴かされれば誰しもが怪しむ。
「申し遅れました、私ゲーニッツ。レオポルド・ゲーニッツと申します」
「狩魔冥、検事よ」
なんだかぎこちない自己紹介を互いに交わした後、冥の方から意外な言葉が発せられる。
「ねえ、貴方も探し物があるんでしょう? だったら私と協力しない?
私はイデオを追い詰める証拠品を、貴方は信ずる神の復活の手がかりを。悪い条件じゃないと思うわ」
その言葉を聞いて、ゲーニッツの顔にわずかな笑みが浮かぶ。
冥は少年がイデオという名前であることを知っていた。
というのも呼び寄せられた場所でたまたま彼女の近くにいた赤根沢玲子が漏らした一言を聞いていたからだ。
「ええ、宜しくお願いします。私としても協力したいところですね」
ゲーニッツは改めて一礼をし、冥に協力する姿勢を見せた。
交渉成立。そんなところだろうか。
「さて、ゲーニッツ。貴方がさっきまで読んでいた本だけど……」
「ええ、これですね。どうやらこの地に呼び寄せられた人間についていろいろ載っているようですが……」
冴えないゲーニッツの表情に冥は疑いのまなざしを向ける。
「誤字が酷過ぎて、まったくアテになりませんな」
ゲーニッツが見せてくれた一ページの記事、それを読むだけで冥にも先ほどのゲーニッツの表情の理由が理解できた。
『狩麻 迷』
『完をヨシする狩摩家の息子』
『髪の色は白髪で、要望はショート・ボブ・ウィルソンカットで、父と同じくプラチナブロンズで目が葵。色白で、負け気そうではあるが美少女』
思わず頭を抱え込んでしまいたくなる誤字脱字の数々だ。
ゲーニッツから本を貸してもらい数ページ流し読んでみたが……。
『人神庵』
『ワテワド・マイクトフ』
『リョウ・ナガサキ』
名簿と照らし合わせるだけでも相当数の誤字がこの本にはある。
信憑性は……薄すぎる。
「ありがとう……頭痛くなってきそうね」
申し訳ない表情を浮かべるゲーニッツ。本をしまい、代わりに冥の前に首飾りを差し出す。
「お詫びといっては何ですが……これを差し上げます。何、私には扱えない代物のようですからね」
黄金に輝く首飾り。女性しか身につけることのできない神聖防具のうちの一つタップスアン。
ゲーニッツも、冥もその事は知る由はないのだが、何しろ最強の防具である。
理論は不明だが、この首飾りがとてつもない力を発揮しありとあらゆる攻撃に対処するのは事実である。
怪しみながらも何の気なしにそれを着けた今の冥が、常人よりも強力な防御力を得ていることは誰も気づくことはないだろう。
「さて、いつまでもここにいてもしょうがないわね。情報を集めにそろそろ出かけることにしましょう」
二人は教会を後にする。それぞれが求める情報を探しに。
この殺し合いという場所で、冥は証拠を。ゲーニッツは……?
ゲーニッツが冥に協力するのには理由があった。
もちろんオロチの復活をあきらめたわけではない。あの少年によって再び与えられた命を無駄にするわけにもいかない。
既にオロチの覚醒は済ませた、しかしその覚醒は完全なものではない。
オロチの完全なる覚醒には短時間で多くの精神力が必要である。
つまり、これだけ洗練されたものが集まるこの場所なら多くの精神力を集めることが可能となる。
この場所は時がたてば、大きな精神力を集めることができる。
そのエネルギーをオロチに送ることができればオロチの復活は完全なものになる。
神たるオロチの意思ならば、場所は問わないであるだろうと踏んでいる。
依り代もこの場所でならまったく困らないだろうと。
いつまでも愚かな人間とつるんでいるつもりは、ゲーニッツにはない。
スベテハ オロチノ タメニ
【C-6 ディバイン教会 一日目 深夜】
【レオポルド・ゲーニッツ@THE KING OF FIGHTERSシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:ラストエリクサー@FINAL FANTASYシリーズ、参加者リスト、基本支給品一式
[思考]
基本:ひとまず殺し合いには乗らないつもり。
1:狩魔冥と行動。
2:オロチの依り代を探す。
[備考]:
※参戦時期は'96で死亡後
※参加者リストは名前だけでなく、参加者全員のことが詳しく書いてありますが
残念ながら誤字だらけのようです。
【狩魔冥@逆転裁判シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:ウィップの鞭@THE KING OF FIGHTERS、タップスアン@真女神転生if
[道具]:ストリキニーネ入りのマニキュア@逆転裁判、あきらのヘルメット@私立ジャスティス学園シリーズ
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、イデオを法廷に連れ込み裁判にかける。
1:ゲーニッツと行動。
2:成歩堂龍一と合流?
3:イデオの裁判のときに、イデオの犯罪を「完璧に立証」するための証拠品を集めておく
[備考]:
※参戦時期の詳細は不明、成歩堂と面識はあり
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