Keep In Gates






終戦管理局報告書:第9641号


Name.Sol Badguy
Height.182cm
Weight.74kg
Birthday.UNKNOWN
Bloodtype.UNKNOWN
Type:Human(?)

 当該個体に関する分析は、遺憾ながら停滞状態にあ
ると言わざるを得ない。

 確定事項としては、2172年より聖騎士団所属。後に、
同騎士団より脱走、賞金稼ぎとして活動する。不確か
な目撃例としては、2099年に、既に現在と同じ外見年
齢で確認されており、「GEARプロジェクト」自体
との関連も囁かれている。

 行動原理は不明だが、ことさらにギアの破壊を求め
る傾向がうかがえる。

 身体能力に関しては、かのジャスティスの破壊者で
ある、と言えば足りるだろう。全てにおいて完全に人
間を凌駕し、生物の限界を超えた法力を放出する。

 正体不明かつ、制御不能の存在であるが故に、危険
度認定は、Sとする。



         RiskRating:S






「気に入らねぇ……」


蝋燭の仄かな明かりが己と整然と居並ぶ甲冑とを照らす石造りの地下室で、その男は呟いた。
己の苛立ちを示すかのように自らの逆立った髪を掻き、手近に置かれていたデイパックを床に叩きつける。

「……気に入らねぇな」

床へと叩きつけられ、宙へ舞うデイパックへ更に蹴りを繰り出しながら男は再び呟く。
彼を苛立たせているもの……それは先程までに見聞きしたもの、全てだ。
あの傲慢な態度の少年、
無謀と正義、優しさと甘さを履き違え死んでいった愚かな青年、
その死によって恐慌状態に陥り、喧しく騒ぎ立てながら死んでしまった青年、
そして、あの場に居ながら何の行動も起こさなかった自分自身に男は――ソル・バッドガイは苛立っていた。

『兄者よ、ここはあの男の事務所でも、ましてやあの質屋でもないようだぞ』
『なんと、矢張りか。これはどうした事だ』

……が、突如として聞こえてきたその声にソルの苛立ちに満ちた思考は中断された。
声のした方向へ視線を向けるが、そこには口を開けて転がっているデイパックと、
そこから零れ落ちたと思しき二振りの剣が床に突き刺さっているのみで、人の気配は無い。

(……だが)

そう、だが「人以外」の気配ならばする。
ノコギリのような刃を持つ、あの赤と青の双剣から。
剣を模したギア……いや、これは違う。己が意思を持った武具……目の前のあれらの場合は生物闘剣とでも言うべきか。
生物闘斧フラメントナーゲルに代表される、かつての聖戦の遺物の一つ。
敵味方を問わず人の血を求め、ただひたすらに闘争に明け暮れる外道の武具。
それらと同種の物と、よもやこのような場所で出会おうとは。
手にすることが出来れば強力な力となるであろうが、同時に非常に危険な代物でもある。
ソルは僅かな警戒と、その倍の敵意、ついでに更にその倍の思考を中断された苛立ちを籠め、視線を剣へとぶつける……が。

『しかし、我らはここで一体何をすれば良いのか。毎度の事ながらあの男には困ったものだ』
『だが兄者、そもそも我らは買い戻されたのだろうか』
『む? どういう事だ』
『つまり我らはあの店から盗み出されてしまったのではないだろうか』
『盗み出される?』
『つまり我らはあの店から何者かによって無断で持ち出されてしまったのだ』
『何と!? そういえば、この場へ来るまでの記憶が一切無い。
 ならば事は我らは盗み出されてしまったのか!』
『そうに違いあるまい!』
『『そうなのだな、盗人よ!!』』


(…………ウゼェ)

 ガ ン 無 視 である。
というか何時の間にか盗人という事にされてしまった。何なんだろうか、こいつらは。
ソルは堪えようの無いどす黒い何かが己の内に滾っているのを感じつつ、何とか口を開く。

「手前ェらの事なぞ知らん。……用は済んだな? 俺は先に行く」

彼らの力を手にすることも考えたが、流石にあの調子でひたすら喋り続けられてはたまらない。
故にソルは彼らを無視し、速やかに先へと進もうとした。

『と、盗人は言っておるが……どうする兄者?』
『盗人には罰を与える必要がある』

しかし、この喧しい双剣はそれを良しとしなかった。両者の柄頭に備え付けられた首が吼え、
同時に赤い剣を中心に紅蓮の炎が、青い剣を中心に強烈な嵐が巻き起こる。そしてそれらに吸い込まれるかのように、
並んでいた甲冑のうちの二体が剣の前へと移動し、双剣を握り締める。

『『ウオォォォーッ!』』

咆哮と共に、炎の剣を構えた甲冑と嵐の剣を構えた甲冑とが同時に飛び出した。
凄まじい速度でで突っ込んでくる二つの甲冑に対し、ソルは何の構えも取らずに立ち続ける。

『『オオオオォォォォーッ!!』』
「うざってぇ……」

二つの剣の切っ先が、ソルを捉えようとした刹那……


「タイランッ! レイィブ!!」


彼の拳が、炎を噴いた。

『『ぬぅ……見事』』

炎を帯びた拳によって甲冑を粉々に吹き飛ばされ、再び床へと突き刺さった剣は潔く自らの敗北を認めた。
ソルはその姿に特に何の感慨も抱かずに彼らの脇を通り過ぎようとする。しかし、それは再び彼らによって遮られる。

『待て、待たれい』
『盗人よ、お前は強い』
『我らを操れる程に』
『我らが主に匹敵するほどに』
『我が名はアグニ』
『我が名はルドラ』
『『我らを連れて行くが良い。我ら兄弟が力になろう』』

その言葉を聴いた瞬間、「知るか」の一言で切り捨て早々にこの場を立ち去ってやろう……という考えがソルの中に浮かんだ。
しかしこの剣達の持っている力は本物だ。力の性質こそ違えど、彼の本来の得物である封炎剣に匹敵する程の力を秘めている。
故に、ソルは彼らに一つの条件を出すことにした。

「いいだろう。ただし、一つ条件がある」
『何じゃ』
『言ってみろ』
「……喋るな」

啓示された条件を聞いた瞬間、柄頭の顔が目を丸くし、視線だけで顔を見合わせた。
ソルはその様子に僅かに眉を寄せたが、アグニとルドラはすぐさま視線を戻し、答えた。

『『良かろう。汝がそれを望むなら』』

彼らの答えを聞き、ソルは双剣へと手を伸ばす。
暫く両の手に持つ剣を眺めるかのようにゆったりと動かし……唐突に傍らに立っていた甲冑に斬りかかる。
斬り飛ばされた甲冑が地へ付く前に次の甲冑を薙ぎ、更に次の甲冑を突き、また次の甲冑を蹴り上げ――。

「おぉらぁッ!!」

全ての甲冑が宙へと浮いた瞬間、両の手の剣を振るい、強烈な炎と風によって甲冑達を吹き飛ばした。
とんでもない掃除夫によって部屋の隅へと追いやられたガラクタ達を眺めながら、アグニとルドラは呟く。

『『――剣の腕はあの男程ではないが、やるな』』
「………………50%くらいか」
『ぬ?』
『50%とは一体なんd』














デストローイ







「……三度目は無ぇ。喋るな」

微妙に黒く焦げ付いている双剣は、今度は彼の言葉に答えようとはしなかった。



【F-1/オンボロ・キャッスル地下室/一日目/深夜】
【ソル・バッドガイ@ギルティギアシリーズ】
[状態]:疲労(小)、精神的疲労(大)
[装備]:アグニ&ルドラ@デビルメイクライシリーズ
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:この「ゲーム」とやらをぶっ潰す。
1:ひとまず外へ。
[備考]
ソルの体育的指導を受けたのでアグニ&ルドラは一切喋りません。
アグニ&ルドラはソル戦(と体育的指導)で大量の魔力を失った為、今後ロワ中では自分達だけで戦うことは絶対に出来ません。





支給品紹介
【アグニ&ルドラ@デビルメイクライシリーズ】
デビルメイクライ3に登場した、ボスキャラ兼武器。
炎の力を宿したアグニと風の力を宿したルドラの二人(?)組の悪魔。
DMC3作中でも矢張りよく喋り、ダンテに連れられて行く際には喋らないことを約束させられていた。
……が、それでも一部の技を使用すると普通に叫んだりしていた。



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