A murderer
Part.1
「てめえ何しやがる!」
鋭い眼光の男……神代に首根っこを掴まれ怒鳴られても銀髪の少年……テリーは動じなかった。
「何って、殺しただけだが?」
感情のない瞳で答えるテリー。その態度に神代は激怒した。
テリーは既に男を一人殺していた。テリーの足元で倒れているゴエモン。彼が犠牲者だった。
神代と行動を共にしていたゴエモンはテリーに声をかけたというだけで命を奪われる羽目となったのだ。
突然の仲間の死に神代はどうすることも出来なかった。テリーの首根っこをつかむだけで手一杯だ。
「ゴエモンはてめえに『一緒にあのヤローをぶっつぶさねえか?』って聞いただけじゃねえか!」
「それがどうかしたか?」
「何で敵意のない人間をぶっ殺せるんだよって聞いてんだよ! てめえ、少し頭をやられてるんじゃねえのか!?」
「抗おうがそうじゃなかろうが自分以外の人間は殺す。それだけだ」
「こ、このキチガイ野郎! てめえもあの白ラン野郎も同じだ!! 狂ってやがる!!」
「言いたいことはそれだけか?」
テリーは神代の体を器用に蹴り飛ばし、体の自由を取り戻すと剣を手に取った。
神代もオートボウガンを手にとろうとするが間に合わない!
「死ね」
神代の体は、あっけなくその魂と共に真っ二つに引き裂かれた。
神代とゴエモンの死体を見下ろすテリーのあどけなさの残る顔には何の感情も見られない。
「俺が……あいつと同じだと? ナメたことを言いやがって……」
何の感情も見られない精巧な陶器人形のような顔。その唇から忌々しげに声が漏れる。
「俺は生き残るために闘っているだけだ。あんな、自分だけ安全な場所に避難しているだけのヘタレとは違う」
神代とゴエモンの所持品を奪い、テリーは颯爽と次の獲物を探しに出た。
その行動は罪のない人間を二人も殺した人間とは思えない。
いや。二人も殺せる冷血な人間だからこそこういう態度に出られるのかもしれない。
【ゴエモン@ゴエモンシリーズ 死亡確認】
【神代斑@マダラシリーズ 死亡確認】
【残り66人】
Part.2
第三の獲物はすんなりと見つかった。
「テリー! 無事だったか!」
「……あんたか……」
「あんたか、って言い方はないだろ。心配してたんだぜ。早くみんなを探しに行かないと……」
人の良さそうな青年。それは自分もよく知る人間だった。
それが幸運なのか、不運なのかは、テリーにはわからなかった。どうでもよかった。
ただ、目の前の青年が不運なことだけ。それだけがハッキリしていることだった。
銀髪にも、姉譲りの白い肌にも、青を基調とした服にも赤い血が付着している。
自分を映しているテリーの青紫の瞳が鈍い光を放っている。
テリーの様子は、青年から見てもあまりにも異常だ。
「テリー……?」
気づくのが遅すぎた哀れな青年をテリーの『みなごろしの剣』が貫いた!
「悪いな。俺はもう既に二人殺している」
「…………なんだって……?」
「そしてキサマで三人目だ」
息も絶え絶えに倒れこむ青年を見下ろすテリー。
それとは対照的にテリーを見上げる青年。
「……どうしたんだよ……テリー……」
「どうしたもこうしたもない。俺は勝ち残るために必要なことをしているだけだ」
「お前……あいつと同じ目をしてる……」
「今のあいつって誰だ!?」
「……俺たちを……ここに呼んだあの男……」
それ以上聞きたくないとでも言わんばかりに、テリーは仲間だったその男の首を斬り落とした。
こんなに簡単に殺せるんだから、最初から仲間なんかじゃなかったのかもしれない。
いや。
仲間なんてテリーには最初からいなかったのだ。
信じられるのは己の力だけだ。
【イザ@ドラゴンクエスト6 死亡確認】
【残り65人】
Part.3
「どいつもこいつも同じようなことを言いやがる」
俺があんな奴と同じなんて笑わせてくれる。
あいつは自分の手を直接汚すことを恐れている単なる弱者じゃないか。
あんなのは本当の力なんて言わない。虎の威を借る狐といったところだ。
俺はあんな男のような生き方をする気もなければ、あいつに従うつもりもない。
弱者は殺される。あのスコットとゴードンという、見せしめにされた兄弟のようにいずれは無様な屍を晒す羽目になる。
弱肉強食の掟に例外なんてない。俺たちをここに呼んだ奴だっていつか食われるだろう。
生きて帰るために出来ることをしなくてはならない。
それがたまたま人を殺すということだったというだけだ。
ここには護りたい姉のミレーユもいないんだし、遠慮なく殺せる。
みんな殺して元の世界に帰ればいい。至極簡単なことだ。
あのふざけた元凶の男も殺してしまえばいい。
あいつにも自分の力こそが全てであり真理だということを教えてやる。
他人の力に頼らなければ自分の理想通りの世界を築けないような弱虫に、強さとは何かを教えてやる。
もうガキの頃のように泣くような思いをするのはごめんだ。
そのために俺は強くなったんだ。
今度こそ自分の身は自分で護ってみせる。
姉さんも俺が護ってみせる。
そのためには俺が全員殺して、姉さんのもとへ帰らないと。
姉さん。待っててくれ。すぐに帰るから。
【G-1(パサパサ荒野)/一日目/深夜】
【テリー@ドラゴンクエスト6】
[状態]:健康
[装備]:みなごろしの剣(テリーに与えられたランダム支給品はこれのみ)
[道具]:基本支給品一式、神代とゴエモンと主人公の不明支給品1〜3
[思考]
基本方針:狭間も含めて皆殺し。姉のミレーユの待つ家に帰る
1:自分以外を信じる気はない
2:元仲間でもそうじゃなくても会ったら即殺
3:殺した後は支給品を奪う
【みなごろしの剣】出典はドラゴンクエストシリーズ。全体攻撃が出来、殺傷威力も高いが持ち主の守備力が0になる凶悪な武器。
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