かあばんくるのなく頃に
「わざわざ人を呼び寄せておいて何かと思えば殺し合い、か……舐められたものだな」
隕石でも落下したのか、常軌を逸した大穴を見下ろしながら異形が呆れたように呟いた。
まるで覆面をしたのような顔の額には彼を象徴するイナズマのマークがついている。
凶悪ボンバー五人衆の一員、プラズマボンバーは不機嫌そうに土を蹴り飛ばした。
物騒な肩書きのつくグループのリーダー格を務めているぐらいであるからにして、さぞや中身も凶悪であるかと思われそうだが、
元来黒い性格を持ち合わせているマグネットボンバーやブレインボンバーとは違い彼はそうではないのだ。
かといってコンピューターに異常を持ったゴーレムボンバーやハニーが洗脳・改造された姿であるプリティボンバーのように「本来はまともな性格」というわけでもない。
過去にG・ガンズによって殺されることになった時の戦いでプラズマボンバーはライバル心というものに目覚めていた。
あの時もあのエイリアンが潜んでいなければきっといつか来たる決着のために、互いに好敵手として認めるべく握手を交わしていたはずだった。
その後バグラーによって復活した現在も、他がどうだったのかは知るよしもないが彼だけは白ボンとの決着のためにあえてバグラーに従ったのだった。
だから彼が見知らぬ子供に、殺し合いをしろなどと告げられても素直に爆弾片手に破壊活動に着手しようなど欠片も考えてなかった。
「確かに俺は白ボンと決着をつけるべきとは思っている。
餓鬼め、そこに付け込んで俺を殺人鬼の一員とすべくここに連れて来たのだろうがな。
お人好しの奴のことだ。きっとこの状況を打開すべく他の連中を集め、つるんで行動することだろう」
だがな、とプラズマボンバーは小さく付け加える。
「俺が望んでいるのは一対一の決闘だ。それをこの地で、白ボンが承知したとしても奴の釣れた仲間が許容するとも限らん。
第一こんないつ誰に命を獲られるか分からん死地で決闘などできるものか。
餓鬼よ、詰めが甘かったな。貴様は貴様の惚けたお頭のお陰でまた一人、反逆を企てるものを増やしてしまったようだぞ」
表情の読み難い顔が、微かに皮肉るように嘲笑ったように変わる。
述べた理由だけでなく、そもそも元来プライドの高い彼がどこの馬の骨とも知らぬ子供の駒となることを望むはずがなかったのだ。
こうして一人のボンバーが、ゲームに対する反逆を露にした。
もちろん彼とて考え無しに反逆を決意したわけではない。
あの少年のことだ。自分に反逆するものは首輪をもって始末するといえど、皆が皆ほいほいと我が身惜しさに手を血に染める連中ばかりということもなかろう。
ゲームと宣言するからには恐らく自らに歯向かう者がいることは百も承知だろうし、そんな連中をいちいち爆破しようとも思うまい。
ただし問題なのが彼の感情的な性格だ。表立った行動は難しいだろう。
「研究所で首輪を解除したいところだが、監視の目がある可能性が拭えん。
奴が親切に首輪解除に便利な施設や道具を置いてるとも思えん。どちらにしても、如何にかしてあれの目から逃れこの首輪を何とかしたいものだな」
それならばと南のにある街に目をつける。
地図によれば図書館や王城など、どこかに何かしらの手がかりがありそうな施設がちらほらと見えている。
まずは先にこの街で探索してみるべきだと判断する。もちろんいつまでも手がかりを探しているわけにもいかないから、大方調べ尽くすか二回目の放送がある頃には研究所に向かおうと考えた。
「さて……お次は武器の確認をしておくか」
いつの間にか背負わされていたデイパックを外し、地に降ろそうとする。
しかしデイパックは宙から若干離れた、不自然な位置で停止した。
「ん? 何……」
「ぐー!」
岩の上に置いたのかとデイパックを持ち上げると、鳴き声とほぼ同時に黄色い小さな影が姿を見せた。
「お前、いつの間に……というか何だこいつは? どこぞの星の生物か?」
思わず飛びのくプラズマボンバーを前に、いつの間にか彼の至近距離にまで接近していたその謎の生物は能天気に再度間抜けた鳴き声を上げた。
体色はよく目立つイエローカラーで、額には不思議な輝きを見せる赤い宝石がついている。身体ほどもある大きな耳はまるでウサギのようだが、顔に手足と耳が生えたようなその姿はウサギと称するには少し難ありだ。
よく観察すると片耳の付け根に、自分の首についている首輪と同じデザインのものがはめられている。
「すると……こいつも参加者というわけなのか? 成る程、首が無いからこんな所に……」
「ぐー、ぐぐー!」
「ぬおっ、こら貴様、何をする!」
妙なウサギは大きく跳ねるとプラズマボンバーの頭にしがみつく。まさか襲撃か、と思い咄嗟にベルトに手をかけようとしたがウサギは頭にしがみついたまま、いやに嬉しそうにぐーぐー鳴いてぶらぶらするのみだった。
「……これはもしや、懐かれてしまったというやつなのか……?」
【F-3 ナゾメキ大穴前 一日目 深夜】
【プラズマボンバー@スーパーボンバーマン3】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品1〜3、基本支給品一式
[思考]
基本:ゲームには乗らない
1:街で情報を集める
2:街を調べ尽くすか、第二放送の時間になったら
研究所で首輪解析
3:白ボンとの決着は元の世界で行う
【カーバンクル@ぷよぷよシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品1〜3、基本支給品一式
[思考]
基本:アルルを探す
1:何か気に入った
2:首輪を外したい
前話
目次
次話