希望を胸に抱き
(うっひゃあ〜)
北の方でもくもくとあがる煙を眺めながらセルフィは嘆息した。
つい先程おきた激しい魔力同士のぶつかりあい。
自分たちの使う疑似魔法よりはるかに威力の高い――そうだ、あれはかつて戦った魔女たちが使ってきたような本物の魔法。
(何なん!魔女の大量発生〜?)
この世界で目覚める前の光景を思い返してみる。
自らを神と名乗り、殺し合いをしろと告げた異形の者
―――めっちゃ怖そうやった〜
高レベルな魔法を放ったにも関わらず、無残な姿になってしまった女の人
―――綺麗な人やったのに…
(えらいとこにきてもうたかも…)
現在G.Fさえジャンクションしていない自分では、あんな魔女クラスを相手にまともに戦うことすら叶わないだろう。
仲間を探してここから脱出する?
―――って、そもそも知り合い全然おらんやんか〜!
殺し合いにのって、生き残る?
―――ん〜あんま気ぃすすまへん…
それとも…このままあっけなく死んでいく?
まだまだやりたいことがいっぱいある。
学園祭だって結局うやむやになったままだし。
それに―――トラビアで眠る友達たちと約束した。
あたしがんばる!
信じればどんな作戦だって成功するんやから!
目指せみんなで大脱出!
殺し合いなんて趣味が悪いったらない!
だいたい死ぬなんてもってのほか!
アタシが死んだらウータイはどうなるんだ!
ユフィは心の中でぶつぶつと文句を言いながら森を南下していた。
つい先程おきた爆発、あれはきっと殺し合いを始めた人たちによるもの。
そう遠くない森の中にいたユフィは身の危険を感じ、慌てて荷物をまとめ駆け出したのだ。
とりあえずは身の安全が第一。危なそーな奴がいたら即効逃げる!
まっそのついでに…レアなマテリアやアイテムをこっそりいただいて…
なんせアタシはマテリア・ハンターなんだから!
前方に湖らしきものが見えてきた。
ん?木の陰に腰をかけているのは…自分とそんなに歳が変わらないであろう女の子。
相手がもしゲームに乗っていたとしても、ウータイ五強聖を破った自分が負けることはまずないだろう。
ユフィは近くの木に登り、様子を見ることにした。
湖のほとり、一本の木の根元に腰掛ながらセルフィは唸っていた。
思いついたら即決行!
仲間集めを始めたいところだが、その前にザックの中身を確認をすることにした。
ザックに入っていた支給品2つを手にとり、目の前に広げてみる。
緑色の得体のしれない球体と、ちょうどぴったり球体がはまりそうな穴のあいたバンクル。
腕輪なんて普段つけない自分には意図が全く分からない。
「もしかしてこの穴にこの球はめたらドッカ〜ンとか?」
「アンタ、マテリアも知らないの?」
突如、頭上から振ってきた声に慌てて構えをとった。
見上げれば、黒髪の女の子が見下ろしている。
(あかんあかん!いつ狙われても危ないとこにおるんやったぁ〜)
完璧に油断していた自分を窘めつつも、相手が害のなさそうな女の子であることに安心した。
「あなた、だれ〜?」
「しょうがない!このユフィちゃんが、その2つとこのよくわからない草を交換してあげよう!」
「くっ草?不公平!」
黒髪の少女――たったいま自分のことユフィちゃんと呼んでいた―が高々と掲げるのはどうみてもただの草。
(明らかに割りにあわんやんか〜!)
少女のザックから覗く剣の柄のようなもの―――あっあれ!
「どうせだったらぁその剣もつけてくれたら、交換してあげてもいいよ〜」
本来剣にはないはずの銃の機構に青い刀身。
今ではほとんど使う人のいないその武器は自分の仲間が愛用しているものだ。
「こっこれは…売ったら高そ…じゃなくて、アタシが丸腰になっちゃうじゃないか!」
正直に言うと、なんだか持ちづらいし、自分の得意とする武器ではないし、なんといっても重要なマテリアをはめる穴がない!
それに比べて、今地面に転がってるあのマテリアは「かいふく」のマテリア。
いつ何が起きるか分からない今の状況では喉から手が出るほど欲しい。
使い道にならなそうな武器と有用なマテリア。
「も〜しょうがない、使い方よく分かんないし!この剣もつけてあげる!」
「やった!交渉成立!」
(ガンブレードの使い方なんて授業で習った程度なんやけど…
まぁ、あるにこしたことはないし〜
スコールちょっとだけ貸してなぁ?)
「ねぇねぇ、あなたゲームのってないんだよね?」
「見てのとーり、アンタにアタシの武器あげちゃったんだから、のってるわけないだろ」
「あんたじゃなくてセルフィ!あのね、どうにかしてここ脱出できないかなぁ?」
「ハァ?正気?あれ見てなかったの?」
目の前で無残にも爆発した女の人の…
ウ〜…思い出しただけで胃から何か出そうになる。
「でも〜このまま何もしないより、少しでも希望は持ってたほうがいいと思うの」
話し方はふざけているが、セルフィの眼は至って真剣だ。
ユフィだってゲームにのらず脱出する方法があるならそれにこしたことはない。
「ウーン…そこまで言うならしかたない。このアタシが協力してあげてもいいけど」
本音をいうと攻撃手段を持たない現在、1人行動は非常に危ない。
それに参加者名簿に載っていた…ここにはあの恐ろしい男もいる。
できれば、遭遇する前にクラウドとも合流したい。
とりあえず当分の間はセルフィと一緒に行動して、隙をみて…
アレをナニして…クックックッ…
「というわけでアタシ、ユフィ!ヨロシク!」
――フィフィ隊結成〜だね!
――なに!そのだっさい名前!
【O-12/湖のほとり/朝】
【ユフィ@FF7】
[状態]:正常
[装備]:カーボンバングル@FF7(かいふくのマテリア)
[道具]:支給品一式
第一行動方針:マテリアを探す
第二行動方針:クラウドに合流する
基本行動方針:生き残り最優先だけど、ゲームには乗らない
【セルフィ@FF8】
[状態]:正常
[装備]:ライオンハート@FF8
[道具]:支給品一式、ひそひ草@FF4
第一行動方針:みんなで脱出大作戦メンバー募集中!
基本行動方針:みんなで脱出、攻撃されたらそれなりに応戦
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