その女、凶暴につき






なんか調理室に居る訳ですよ、やっぱ殺しあわなきゃいけないんですよ。
でも僕の支給品はどう見てもハズレです本当にありがとう御座いました。
途方に暮れてもしょうがない訳ですよ、て城の一室みたいだったから外に出たわけですよ。
そしたらですね………。

「さてと…殺しあいッつーんだからそれなりに強い奴は居るわな」
城の玉座に大きく座り込み、マップを見るモンクの女性。自らの手のひらに拳を打ち付け、同時に勢い良く飛び上がる。
宙から地に足をつけると同時に微弱な振動が地を揺らす、たなびく鉢巻もやがて速度を失い首元に降りる。
腕を鳴らし、赤いじゅうたんの上を歩き、大広間へと出る。
そこから見える一つの影を確認し、笑う。
「ふぅ、運がいいなァッ!早速闘れるなんてよぉっ!」

見えたのは一人のピンクの髪のオレンジの服を着たお姉さんでした。
でも気がついてないみたいなのでちょっと見てたわけですよ。
いや見惚れてたとかじゃなくって、言い方は悪いですけど監視してたんですね。
ちょっとしたら空からもう一人降って来て…。

「さぁケンカだ!ケンカをやろうぜぇぇ!!」
見えた影に一直線に向かう女性、突き出される拳。
人影もギリギリで気が付き、盾を構える。
衝突する拳と盾、同時に身を翻し着地するモンク。
「つあっ」
小さく悲鳴が漏れる、盾で防いでも左腕にダメージが伝わる。
「アンタ、中々やるねぇ」
武闘の構えを崩さないまま、言い放つ。
「あなたはゲームに乗ってるんですか?」
ピンクの髪の女性は、そう言った。
「違ぇよ、アタシは…」
瞬間、大分あった距離が縮まる。咄嗟に防御の体制を取るが、その前に拳が彼女の腹部に届く。
「ぐッ…」
衝撃をまともに受け、後ろの壁に叩き付けられる。
咄嗟の防御の体制のおかげで直撃は免れたが、それでもダメージは凄い。
胃液がこみ上げて来る、甘酸っぱい嫌な感触が口に広がるが、それを吐き出さずに飲み込む。
「ケンカがしたいだけだ、ゲームだとかはどうでも良いんだよ」
体制を立て直すと同時に追撃の蹴りが飛ぶ、合わせて剣を振る。
剣に感づいたのか蹴りの足を急激に引く。その隙を逃さず、連続的に剣を振るう。
何回か剣が肌を掠める、当たりは浅い。
上方向からの斬り下ろしと見せかけ、横薙ぎに切り替える。
完全に横避けの体制に入っていたモンクは、剣の直撃を食らってしまう。
「…ヘヘッ、ここまで強いのは久しぶりだな。
 あんた、名前はなんて言うんだ?」
剣撃を避けながら、モンクは問う。
「…レナ」
何故だか分からない、分からないのだが名前を言ってしまった。
「オーケー、しっかりと覚えこんだぜ。
 逆に覚えてくれ、アタシの事を、キサラって名前をおおおォ!!」
構えを構えなおし、再びレナに飛び掛るキサラ。
突き出される拳、流れるように動く剣。
双方が双方を避け、一撃を決めようと距離を伺い、攻撃が飛び交う。
それでも、結末は一瞬のことだった。
「うぅ……らぁ!」
キサラの渾身の一撃がレナの右頬を掠り、背後の石柱へと当たる。
ヒビが入る石柱、少し大きめの塊が上から落ちてきた。
一瞬だけ、キサラの意識が上へ行った。絶好のチャンスだった。
剣を腹部に突き刺す、だがキサラは全く動かない。
大き目の塊も頭に当たる、だが動かない。
止めを刺したのか…?と疑問を抱いた時に腹部に物凄い衝撃が襲い掛かる。
「がはあっ!!」
石柱を砕き、石壁にヒビが入るほどの衝撃。
「効かねぇ…どうした、もっと打って来いよオラァ!」
ダメージをものともせず飛び掛るキサラ、剣を杖に起き上がるレナ。
「死ねない…まだ私は死ねないんだぁぁっ!」
盾を放り投げる、剣が振りあがる、盾が弾き飛ばされる、剣が振り下ろされる、肩に突き刺さる、そのまま突っ込んでくる。
「アタシの勝ち…だな」
マウントポジションを取り、ニヤリと笑うキサラ。レナの顔には、絶望。
「じゃあな、強かったぜあんた」
キサラの拳が振りあがる、足は動かせても届かない、手は足に挟まれて動かせない。
(…ごめんね、バッツ。私、先に死んじゃうみたい)
強烈なハンマーパンチ、石壁に叩き付けられ脳漿を撒き散らす。
キサラは、紅く染まった拳を見て小さく零す。
「こいつぁ…ワクワクしてきたな。もっと、もっと強い奴が居るんだ…!」
大の字に寝そべり、上を見上げる。
彼女の拳は、止まらない。駆け抜けていくだけ、最速で、最速で。

とんでもない戦闘ですよ、二人とも人間じゃねぇだろって言うぐらい。
いやあの戦闘見たらだれでも尻尾巻いて逃げるって。
アラームで呼ばれても逃げちゃうって、それぐらい危ない、ヤバイ。
とりあえず、僕に何ができるかっていうと…言うと?何?何ができる?
…逃げるしかない、か。でもどうやって逃げよう?
選択を間違えれば即死…どうする?どうする僕?!

とあるモンスターのロワイアルは、始まったばかりである。
【E-2/城内部/朝】

【プリンプリンセス@FF4】
 [状態]:健康
 [装備]:なし
 [道具]:月刊武器創刊号、会員証、ポケットティッシュ
 [行動方針]:逃げたい

【キサラ(モンク)@FF1】
 [状態]:左腹部、頭部損傷
 [装備]:なし
 [道具]:癒しの杖
 [行動方針]:ケンカがしたい

【レナ@FF5 死亡】
エンハンスソード、イージスの盾はその場に放置。
【残り98人】




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