FFAP第一話『因果の楔』
それから5年後…世界はファイレクシアと呼ばれる魔族によって侵略されようとしていた。
件のバトルロワイアルによって多くの戦士を失った世界は、今まさに闇に包まれようとしていた…。
長老に呼び出された。
日常茶飯事、大して珍しいことじゃない。
でもその日は何かが違っていた。
家の前に住んでる猫が死んでたとか隣の家がなくなってたとかそういうのじゃない、気分的な問題だ。
「長老、クラウドです」
ノックする。ノックは社会での基本だ。相手の領域に入るときにはそれなりの礼儀と心意気がいる。
「入りたまえ」
心意気が通じたようで、中に入れてもらえた。
「こんな夜遅く、何の用ですか?」
今この世界は荒れに荒れている。
潮流跋扈、悪逆非道のモンスターやモンスターより性質の悪い盗賊団が暴れまわっている。
俺の家から長老の家までは徒歩20分、十分死の危険がある距離だ。深夜は特に。
長老が口を開く。
俺はこのとき、この先どうなるかなんてぜんぜん知らなかった。だから、聞いてしまったのだ。
「クラウド・ストライフという男を知っているかね?」
―クラウド・ストライフ。奇しくも俺と同じ名をもつそいつは、5年前のあの事件以来行方不明となった英雄の中の一人だ。
「はい。でも、何故彼の名が…」俺がそう尋ねると、長老はおもむろに立ち上がり、窓の外を眺めた。
「確か5年前じゃったかの、セシル王とその親友であるカインが突然行方不明になり、そして他の次元にあった世界がこの世界と結び付いたのは」
長老は独り言のようにそう呟くと、おもむろに俺の顔を見た。
「…実はな、先日の夜、そのクラウドと思しき男が海岸に打ち上げられていたのじゃ。」
一瞬、自分の耳を疑った。あのクラウドが?
馬鹿な。彼は五年前に消えたはずだ。それが何故今頃?
そんな疑問がまるで走馬灯のように俺の頭を巡った。
「理由は分からぬ。じゃが、外見は知らされたものと寸分違わなかった。まず、本人と見ていいじゃろう」
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