チョコボ頭
「・・・こんなデッけぇ剣、この俺に振れるワケねぇだろッ!!」
出てきたのは鉄の固まりみたいなドデカい大剣だった。
あまりにも重く、持って構えるだけでもしんどい。
こんなのを扱える奴って居んのかな・・・きっとゴリラみてぇなのだろ!
この大剣は俺にはとても扱えそうにも無いので放置し、またザックを漁ってみた。
・・・今度は腕輪と黒いビンが一緒に出てきた。腕輪の方には羽の模様が刻まれている。
装備すると素早さが上昇する系統のものか、と推測した。試しに腕にはめてみる
「・・・オォッ!!スゲェ!!体が・・・めっちゃ軽りぃ!!」
どうやら俺の推測は当たったらしい。腕輪を装備したとたんに体が身軽になった。
そして・・・問題なのはこの怪しげな黒いビン。振ってみると中に液体が入っているのが解った。
なんかの薬か?でもあやしぃ。すんごくあやしぃ。・・・こいつはザックにしまっとこう。
そうして、この正体不明の薬をまたザックにブチ込んだ
んで、結局使えるのはこの腕輪だけか・・・
まぁ、あんま戦闘が好きじゃない(一応これでも兵隊だが・・・)俺にはこの腕輪はアタリか。
ゴタゴタに巻き込まれるのは避けたい。なんせ今俺が居る状況はよ・・・
ここにきてふと思い出す。最初にあの金髪の騎士みてーなのが殺された時のことを。
この“首輪”がある限り・・・逃げられねぇんだ。あの仮面野郎からは。
しかし・・・だからといって、殺し合いなんざしたくねぇ。もう戦いは真っ平だ!!
苦行の兵隊時代を思い出す・・・俺は糞みてぇな上司にこき使われ、戦争ごっこに付き合わされて。
仕方ねぇ。それが俺の“仕事”だったから。生きてく為にはああするしかなかったんだよ!
ったく、なんで俺みたいなのがこのゲームに呼ばれたかは全く解らん。
気付いたら・・・森に居た。地図で確認した所、B−2区の森の中だった。
まぁ〜この俺が呼ばれるくらいだ。ホントに、いろんな奴がココに収集されたんだろうな。
あの糞上司・・・ビックスの野郎もいたりしてな!!ハハ・・・いくらなんでもそれはねぇ
そんなことを延々と考えてた、その時だった。
「ガサァァァッ!!」と背後の草が勢いよく音をたて、何者かが急に飛び出してきた。
―いきなりのことで俺は全く反応出来なかった。
・・・しかし、俺は悪運だけは非常に強かった。
そいつは油断していた俺を攻撃してこなかった。まるでチョコボみたいな爆発頭した金髪の兄ちゃんだった。
「その武器と俺の支給品を交換してくれないか?」
と、なにやらいきなり物々交換を申し出てきやがった。
しかし、この男・・・かなり強そうだ。隙が全然無ぇ!!
コイツが現れるまで気配を全く感じなかったのも納得できた。元の世界では“そっち”関係の実力者だったんだろう
「なぁ・・・黙ってないで早くしてくれ。こちとら急いでいるんだ」
「アァ!?ててててめっ、俺より年下だろッ!?んななななn生意気な口きkkきいてんじゃうぇrt!!」
緊張のあまり何言ってんだか俺も解らない。とにかくナメられてるのは解る。
「仲間を探さなきゃいけないんだ・・・しかし、この“クソ”支給品じゃ戦闘になったとき不利なんだ。」
「あぁあsだっ!!ッッ!!・・・・・・・・・舌咬んだぁぁぁぁぁあッ!!!!!」
「・・・・・・とにかく、交換だ」
そういうと奴は俺を突き飛ばして・・・あの糞重い大剣をひょいっと担いでで走り去ってしまった。
見かけによらずなんて奴・・・ってそうじゃねぇ!!あのヤロー勝手に人の物を奪いやがった!!
「コラァァァァァッ、待ちやがれチョコボ頭ァァァァァァッ!!」
俺は気合で体を起し、奴を追いかけた。
あのチョコボ頭の脚力はかなり人間離れしてた。この“腕輪”が無ければすぐに見失っていただろう
・・・いや、腕輪の力を借りても奴の方が速いんだが。徐々に距離を離されてる。流石はチョコボか・・・
「ハァッ、ハァッ、ッかぇせボケェッ!!」
「・・・あ、これ俺のな。渡すの忘れてたよ」
奴は俺の怒号に反応したのか、いきなり振り返って自分のザックをブン投げてきた。
―それはモロに俺の顔面に直撃した。
「ブヘッ!!」
「・・・わりぃ。それじゃ」
「・・・・・・おんどりゃぁぁぁぁぁぁッ」
俺はキレた。理性を失った。
もう奴をとっ捕まえて説教かますことしか頭に無くなった!
「さっさと大人しく捕まれやッ、チョコボ頭ァァァァッ!!」
相変わらず奴は俺の怒号をシカトし、猛スピードで走り続ける・・・
もう俺の体力は限界に近づいていた。年か。
そんな時、いきなり奴が走りをやめ、動きを停止した。
「よっしゃッ!!とっ捕まえてやるからソコ動くなッ・・・!!」
奴にまさに肉薄しようとする、その刹那、
「来 る な ッ !!」
ビビッた。無愛想だった奴がいきなり怒鳴った。それもかなりの剣幕で。
「ななななんだ・・・ふぉげぇっ!!」
また奴に突き飛ばされる。無防備だった俺は派手に空中を舞い、背後の巨木に叩きつけられた。
悶絶しそうになるが、気合で持ち直し立ち上がろうとしたときだった。
奴が上空に飛び上がった、その瞬間―
グゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
・・・さっきまで俺と奴がいた場・・・地面が渦状にうねり出した。アリ地獄・・・そんな生易しいもんじゃねぇ
まるで地震の様な轟音と共に、ソレは地面をかきまわし出した。
「・・・出て来いッ」
いつの間にか俺の横に着地していたチョコボ頭がそう叫ぶと、さっきまでの激しい流砂が急にピタリと止んだ。
そして10メートル近くある、草木が茂る森の地面に似つかわしくないクレーターのようなモノがぽっかりと・・・
目の前に広がる光景に思わず体が震えだした。そして・・・
「ファファファ・・・」
奇襲者は奇妙な笑い声を出しながら俺達の眼前に現れた
どっかのご大層な魔導師の様な・・・もっと違う、禍々しい“何か”なのか。
その顔はゴッツい鉄仮面に覆われていて確認できない。
だが、一つ確実に言える。ヤバい。それもかなり、だ
急に生暖かい風が周囲に吹く。森がざわめき出す。
・・・生きた心地がしない。それだけの重圧をあの魔導師風の男は放っていた・・・
「アンタは速く逃げろ・・・」
そう言うと奴は“俺の”大剣を片手軽々と担ぎ上げ、アレに跳びかかっていった―
それを迎え撃つ魔導師。懐から取り出したのは・・・短剣だった。
とてもじゃないが、あの大剣を受けれるような代物ではない。
・・・そこから凡人の俺には信じられない様なバトルが展開された。
二人の武器がぶつかり合う衝撃音が信じられないほどの速度で鳴り響く。
あのチョコボ頭は踊っているかのようにあの大剣を振り回しだした。
あまりの太刀の速さに残像が見える。周囲の木々がまるでバターをスライスするかのように吹き飛ぶ。
―太刀の嵐だ。
それに対しあの魔導師は短剣一本。防ぎきれていない。・・・チョコボ頭が圧倒的に押している!!
そしてついに魔導師の体が浮き上がり、背後の大木に叩きつけられた。・・・一撃がまともに入った!!
「防御魔法か・・・」
不意にチョコボ頭がそう嘆く。
・・・?いつの間にか魔導師の周囲には黄色い障壁みたいなものが出現していた。
あの大剣相手にここまでやれたのはコレのおかげだったらしい。だが、もうネタはバレた!
「やっちまえ!!チョコボ頭ッッ!!」
「・・・止めろ、その呼び方は」
そうクールに俺の発言をいなすと、アイツは剣を上空に掲げた。
「破光撃!!」
アイツがそう叫んだ次の瞬間、もの凄い振動と共に大地が舞い上がった。
―スゲェ!こんな技持ってんなら最初っから使えよ・・・と思ったけど口には出さない。
はもう勝利を確信していた。安心しきっていた。戦いはまだ終わっていなかったのに
急に視界が光で埋め尽くされた。知ってる・・・この魔法はッ・・・!!
「・・・フレア」
またも鳴り響く轟音。そして、投げ出される俺の体。
気づいた時には地面に倒れこんでいた。視界は舞い上がる土埃ばかりでなにがなんだか・・・
「ウォォォォォォァアッ!!」
木霊する爆音の中で、アイツの怒号が聞こえた。その声色にさっきまでの冷静さは・・・無い
連続する爆音と怒号。震える大地。泣き叫ぶかのように轟く木々の裂けるような音。
・・・それらが俺を恐怖に落としいれ、倒れたままの体を硬直させる。
「生きてるかッ!?」
チョコボ頭の声だ。こんな状況なのに・・・アイツはまだ俺のことを気にかけやがる!!
なのに俺は戦いもしねぇで・・・なさけねぇ・・・なさけねぇんだよッ!!!!!!
震える足に拳を叩き込み、俺はなんとか立ち上がった。
そして・・・不意に視界が開けた。そして見えたのは空中で剣を振りかぶったまま静止しているチョコボ頭。
物理法則をあからさまに無視しているその奇妙な光景に、俺は又もや硬直した。
「10・・・」
「9・・・」
「8・・・」
・・・微かに声が聞こえる。聞き覚えの無い声が。
「5・・・」
「4・・・」
・・・止めろ。
「3・・・」
「2・・・」
止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めてくれェェェェェェェッ!!!!!
「1・・・・・・」
―それは一瞬の出来事だった。空中で静止していたチョコボ頭の体が・・・粉々に砕け散った。
その様はまるで絵画の様な・・・あまりに非現実的過ぎた。
あまりの光景にしばらく思考が停止する。そして・・・また思考が活性化する。
全てを理解してしまった俺は・・・・・・気が付くと走っていた。全速力で。走ること以外の思考は完全に停止していた。
吐き気がした。呼吸がうまく出来ない。走っている足が徐々に痛んでくる。
「ハァッ・・・ハァッ、もうッ・・・嫌だッ。嫌だッ!止めてくれよォッ!!」
言葉が勝手に口から出てくる。おかしくなっちまったのか、俺は
―足が急に走りを止めた。気が付けば森の外に出ていた。
自分の呼吸音だけが周囲に木霊する。そして間髪をおかずに背後から足音が・・・聞こえてきた
死を覚悟しながらゆっくりと振り向いく。
・・・
あの魔導師では無かった。短髪の軽薄そうな男が両手を上げながら近づいてきた。
「さっきの爆発音凄かったな。あれ、アンタか?」
「・・・そんな風に見えるか?俺は・・・」
あの一部始終を思い出す。そして体の中から熱いものがこみ上げてくる。
「俺はッ・・・一人の人間をぉ・・・見殺しにしたんだよッ・・・!!ウゥエェェェッ」
見知らぬ人間の前で言葉と共に胃液を撒き散らす。どこまでも情けない・・・
しかし、その男は黙って俺を見つめていた。そして・・・ザックを差し出してきた
「これ・・・アンタのか?さっき諸を探索したら見つけたんだが。」
それは・・・見覚えのある。かつて俺の顔面に投げつけられたモノだったからだ
それをその男から奪うかのように取り上げ、中身をブチまけた。
・・・出てきたのはトランプだった。
そりゃ交換したくな・・・そう思いかけた時。
盾が出てきた。これがアイツの二つめの支給品だった。
・・・あまり武具に関しては精通していない俺でも解る。相当なモノだと言うことが。
それは見慣れない装飾をされていたが、立派な造りをしていた。
これをゴミ扱いしてあの武器の変わりに俺によこしたと・・・?
―アイツは、どこまでもあまちゃんだった。
そう思うと笑いが止まらなくなった。そして涙も・・・
「なんか・・・ワケありみたいだな。」
この男は俺のこの様子を見て全てを察したらしい。
「あぁ・・・」
その時、俺の眼前にはアイツの姿が映っていた。
勇敢にも、あの魔導師に単独で立ち向かい、散っていったアイツの勇士が―
「・・・決めた」
「・・・なにを?」
「俺は・・・止めさせるよ。この・・・ふざけたゲームを・・・よ!!」
男は驚いている。当たり前か・・・さっきまで泣き喚いていた人間がそんなこと言うんだもんな。
だが、すぐに俺も驚かされるハメになった。
「・・・俺はバルフレアだ。アンタと同じ気持ちだよ。だから、アンタについて行く。いいか?」
バルフレアもまた、あの一部始終を目撃していたのだ。二人に感付かれないように、絶妙な距離を保って。
それを可能にしたのは彼の唯一の支給品だった。クラウドのザックを拾ったのも偶然ではなかった。
そしてウェッジと同じく、クラウドを見殺しにしてしまったことを後悔していたのだ。
「・・・!?良いのかよ?」
「一度決めたことは撤回しない。俺のポリシーの一つだ。」
「へッ・・・俺はウェッジだ。ヨロシクな!!」
―こうして、新たなコンビが誕生した。
【C-2/北部平原/朝】
【ウェッジ@FF8】
[状態]:かなりの疲労
[装備]:倍速の腕輪
[道具]:トランプ、源氏の盾
[行動方針]:ゲームを止めさせる
【バルフレア@FF12】
[状態]:健康
[装備]:対人レーダー
[道具]:無し
[行動方針]:ゲームを止めさせる
[備考]レーダーは首輪に反応します。効果は20〜30メートル程
【エクスデス@FF5】
[状態]:?
[装備]:マインゴーシュ
[道具]:金の砂時計(残り2個)、謎の薬
[行動方針]:???
[備考]謎の薬が入ったウェッジのザックを回収。ハードブレイカーはその場に放置。
【クラウド@FF7 死亡】
【残り95人】
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