おともだち






「〜〜〜!!」

タバサは相変わらずピンチだった。
どんなにもがいても襲ってきた男から逃れることが出来ない。
しかも相手も余裕が無いのか、ただ一言も喋らないのだ。それに両隣の蛇の威圧感も強烈過ぎる。
それが余計に恐怖心を煽る。タバサの表情は相手への恐怖を形容していた。

だがその時、アシュトンの後ろから飛び掛ってくるような人影が見えた。




―――――数分前。
M.O.M.O.は、一人でとぼとぼと道を歩いていた。
自分の見知った人はいないし、そしてあの時……急に起こった騒動に寒気すら感じた。
一体何故こんな所に呼び出されたんだろうか、そう考えながら歩いていると……。

「あれ……?」

ふと道の先を見ると、男の人が何かをしている。
そしてそのすぐ下を見ると、見知らぬ女の子が襲われているではないか。
それを見て彼女は焦った。いきなり自分の目の前もあのような人間が現れたら、という恐怖に駆られる。
だが同時に目の前の女の子も助けなければとも思う。

そして彼女は決意した。支給品を確認する。
握ったものは、フライパン。

フライパンを構え、彼女はこっそりと男の背後に近づいてゆく。
そして距離を詰め、フライパンを上段に構えたかと思うと、おもいっきり男を撲りつけた!



思惑通り。
男は短い悲鳴を上げて…その場で倒れた。
子どもの腕力といえど、はやり何の備えも無い状態での奇襲攻撃は、受ける方にはキツかった様だ。

そしてそのまま襲われていた女の子に手を伸ばす。
女の子は呆然としていた。状況を完全には理解していないらしい。

「あなたは……」
「M.O.M.O.って言います!あの…早く逃げましょう!」
「え?あ……うん!」

女の子は手を取り、一緒に走り出した。


何も考えず、地図も見ず、彼女らはいつの間にか先程いた場所より北にある森にいた。
ぜーはーぜーはーと息を切らし、そこに座り込んだ。

「あの…モモちゃん、私はタバサっていうの」
「タバサさんですか。可愛い名前ですね」
「そ…そうかな?まぁ、それは良いとして……助けてくれて、ありがとう」

そう言って女の子――タバサは安堵の溜息をついた。
と同時に、唐突にタバサの両目から涙が零れだした。

「え?タバサさん…大丈夫ですか?もしかして、モモが強く引っ張りすぎちゃいましたか!?」
「ううん…違うの……。安心したら……涙が………。ごめんね、心配…かけて……」

目の前で泣き出したタバサを心配しておろおろするモモ。
だがそれを見て、タバサはもう一度…今度は微笑みながら「大丈夫」と言った。

「あの…モモちゃん、良かったら……その……」
「どうしたんですか?」
暫くして……少し落ち着いたのか、タバサは改めてモモに「あるお願い」をすることにした。
「良かったら……私と一緒に行かない?それで、この嫌なお遊びを止めるの!……どう?」

それを聞いたモモは驚いたようにタバサを見た。
その反応を見たタバサは、「駄目なのかな…」と肩を落としかけた。
だがモモは明るい笑顔で、
「え?当たり前じゃないですか。それにモモも同じ事言おうと思ってましたから!」
そう言って更に明るい笑顔で、また同じように手を差し伸べた。

「じゃあモモとタバサさんは、今日からお友達です!だから、お友達の印に……ね?」
「……うん!モモちゃんと私は、お友達!宜しくね」
差し出されたモモの手をタバサはもう一度握り締めた。
先程と違う、握手という形で、優しく……そっと。


 名前 タバサ 【ドラクエ5】
 行動目的 M.O.M.O.と共にこのゲームを止めさせる
 所持品 点棒(スーチーパイ)
 現在位置 アリアハン西の平原から北の森

 名前 M.O.M.O. 【ゼノサーガ】
 行動目的 タバサと共にこのゲームを止めさせる
 所持品 フライパン
 現在位置 同上

 名前 アシュトン・アンカース 【スターオーシャン】
 行動目的 不明(後頭部強打により気絶中)
 所持品 なし
 現在位置 アリアハン西の平原



前話   目次   次話