マスラ
「あふぅっ……ひゃっ、あんっ! ……あぅっ……っあ」
大陸の西端部に位置する山麓。山々の間に、女の嬌声がこだまする。
それほど大きな声と言うわけではない。他の音が一切していないせいもあるのだろうが――
多分、主催者の悪趣味な仕掛けだろう、と橘千晶は踏んでいた。
「い、やぁぁっ……あんっ! きゃうっ! ゃぁああっ!」
声はどんどん激しさを増していく。けして耳に心地よいわけではない。
千晶が求めるのは快感にむせぶ声ではないのだから。
「はぁっ……いやっ、やめ、やめて……うぁんっ!」
「うるさいわね……さっさと、イッてしまえば良いのに」
参加者の女性の膣内に挿れている右手の動きを速める。
じゅぷっ、じゅぷ、じゅっぷ、じゅっぷ、じゅぷ。
水音を立てながら抽送を続ける。そこには相手を気遣う思いやりも優しさも無い。
機械的で単調な繰り返しだった。それでも、体の敏感な部分を強引に揺さぶる刺激は
この女性に相当の快感を与えているようだった。
「ああっ! あううっ! ひうっ! ひあぅっ! ひぁ…………ふぐぁっ!?」
「煩いって言ってるでしょう?」
高らかに高らかに山中に響いていく声が千晶には耳障りだった。
女の喉に手をかける。ゆっくりと力を篭めていくと、ある所で声を出すのを停めた。
満足して右手の動きを再開する。一層乱暴に、より強引に。
再び女が声をあげる雰囲気だったので、持っていたハンカチを口の中に押し込んだ。
安心して責めに没頭できるようになると、彼女を観察するゆとりもでてきた。
黒い長髪の女は、髪を振り乱し喘いでいる。その喘ぎ声はハンカチに塞がれ、
意味をなしているものではなかったが。
服はずたずたに引きちぎられ、胸乳がたぷんたぷんと揺れている。
その頂点では桜色の突起が自己を盛大に表現していた。男なら興奮を
催さぬはずが無いその光景にも、その趣味の無い千晶にとっては無用のものだった。
水色を基調とした服は今や見る影もない。一瞬の内に千晶が剥ぎ取ってしまった、
その結果だった。細い切れ長の臍の周りには玉のような汗が浮かび、弾けていく。
すらっとした長い足、引き締まったふともも。十人の男がいれば十人とも振り返るような、
そんな女性だった。ヒロインと呼ぶにふさわしい人間がいるなら、それは彼女だった。
「あなたみたいな美しい存在を壊してしまうのは私の流儀に反するんだけどね……
仕方ないわよね、これはそういう趣向なのだから」
「強さと美しさを兼ね備えた存在こそが、私の世界の住人としてふさわしい。
あなたのような人がヨスガには必要だったんだけどな……。残念ね」
残念なようにはとても見えない表情と口調で言葉を放つ。
いたぶりを受けている少女の耳に届いているのかいないのか、
快楽に蕩けかけている顔に変化は無い。
「……ねえ、あなたは自分がなんのために生まれてきたか考えた事がある?
あなたにはしたいこと、やりたいことがあるかしら? ……私はね、それを見つけたの。
それを手に入れるためには、苦痛に堪え、辱めに耐え……
……他人を蹴落とさなければいけないのよ。だから、私はやるの。ねえ聞いてる?」
くちょりくちゅり。乱暴な手つきから一転して、仔猫を可愛がるように
陰唇の襞一枚一枚をなではじめる。千晶の黒い腕と対比して、鮮やかな赤い花弁が
より一層際立った。
「私は変わったわ。疫病を司る祇園神社の祭神、ゴズテンノウ。
破壊神スサノオと同一視される事もあるわ。……ああ、あなたは外人だから
わからないかもね? ……そうね、あなたがさっき召喚した大きな獣と似たようなもの、
とでも思ってくれればいいわ。とにかくね。私は力を得たの。ゴズテンノウの精を受け、
生まれ変わった。その結果がこれ」
己の白髪の一房が金色の瞳にかかる。左手で髪の毛をかきあげ、汗も拭い取る。
その肌は恐ろしいほどに白かった。見る者には蝋人形を連想させる肌。
それも顔の上半分だけで、口元から右腕にかけては樹皮のような黒い硬質の皮膚が覆っていた。
その異形の右手が、今は花弁を浅くなぞっている。先ほどまでの陵辱の証が赤い血となって
膣から流れ落ちていた。
「……美しいでしょう? 力ある者は美しいわ。わたしはこの力で世界を創るの。
強いもの、美しい者だけによって築かれる楽園を……その楽園ができたら、
あなたもその一人に加えてあげるわ。だから……早くイッてよ。私の為に」
右腕を少女の膣に当てがう。右腕が伸縮し、先がどんどんとその中へと
入って行く。内側で暴れ狂う千晶の腕の一部は、少女の理性を確実に破壊していた。
塞いだ口から媚声が零れ落ちる。口の内側が唾液に塗れ、ハンカチを湿らせている。
体はびくんびくんと跳ね回っていた。ハンカチを噛ませていなければ舌を噛んでいたかも知れない。
「初めに出会ったのがあなたで良かった。あなたは戦える人だったし……それに、
素晴らしく美しくもあった。私が力を振るう相手としては、うってつけだったわ。
あなたと戦えてよかった。……もう、思い遺す事はないでしょう?
少しの間ひどい目にあうかも知れないけど……再び会うまで、我慢していてね」
自分勝手な事を言うだけ言い終えると、後はもう喋らずに腕だけを動かしていた。
あるときは強く、あるときは弱く。その度に少女は跳ね続け、口から喘ぎ声をもらす。
千晶も先ほどまでよりかは鬱陶しさが軽くなっていた。
口吻で秘所やその他の部位を舐めることこそついになかったが、それ以外は誠心誠意を持って
よがる彼女に応対をした。右腕で膣内をえぐりながら、空いた左手で乳房をまさぐることさえした。
程よい大きさの乳は手に吸い付いて離さなかった。掌を押し上げる乳首に愛おしさのようなもの
が生まれ、指の腹で転がし、軽くつねり、爪を立てないように、傷をつけないようにそうっと引っかく。
その度に見せる少女の反応が可愛らしく、微笑ましかった。もし自分にそういう感情が
一片でも残っていたら――魅了されていたかもしれない。どちらにせよ、
この後少女を襲う運命に変わりはなかったのだが。
そして、遂にその時が来た。少女の体が絶頂を迎えたその瞬間、肉体が光の粒子となって
空中に溶けていった。
「さよなら」
千晶の手向けの言葉と共に。
千晶は結局最後まで少女の名前を――リノア・ハーティリーと言う――知らなかった。
山に響いていた声はもうしない。鳥の音も虫の音もなく、山は静けさを保っていた。
涼しい風が運動で火照った汗を冷やす。だるそうに千晶は切り株に腰を下ろした。
少女の力を奪った戦闘と、その後の責めの疲労がそれなりに残っている。
「あー、しんどい……一人イカせるのがこんなに面倒くさいなんて知らなかったわ……
全く、これを後何十人も続けろっての? 冗談じゃないわよね」
ぶつくさと言いながら、すぐに戦闘になったので確認していなかった
自分の支給品と奴隷へ堕ちてしまった少女の支給品を検分する。
自分のものはT字の剃刀だった。シェービングクリームと一セットになっている。
顔を顰める。何故こんなものが支給されたのかわからなかった。
女ばかりが集められた大会で男が使う髭剃りがどうして必要になるのだろうか?
T字型のものでは武器にはならない。参加者同士で殺し合わせるつもりは
無いと言うことか。リリスとやらの行動は一々徹底している。
自分が犯し、壊した少女に渡された武器は杖だった。
杖身が翠色に塗られ先端には宝石が埋めこまれている。
同封されていた解説書にはこう書かれてあった。「へんげのつえ」と。
「ふふふ…………あははは! これは良いわ……これはきっと、私の為に用意されてたもの!
そうに違いない……これがあれば、できる! 私の望む世界だって創れるわ、きっと!」
念じて杖を振る。ボワンとした間の抜けた音と共に白い煙が千晶を包みこんだ。
煙が晴れた後には、魔丞化する前の己の姿があった。
「これで適当に油断させて、二人きりになって……それから襲えば良いわね。
さっきみたいな戦いが何度も会ったら……それでも負けるとは思わないけど、
あの私の姿は不利だもの。きっと注目だってされてたろうしね……
この姿の私でも、充分美しいわ。ねえ、あなたもそう思うわよね?」
不意に、千晶は大声で叫んだ。変化の杖で一本の木を指し示す。
「いつから覗いていたの? きっと最初から見ていたんでしょう?
だったらわかるわよね。あんたが私に敵わないってこと……
それと、私が女をいたぶるのが不得手だってことも」
上機嫌で言葉を放つ。
「私と組ませてあげる。戦うのは私。美味しい所はあなたにあげるわ。
ねえ、やるでしょう? 別に断っても私は構わないんだけどね」
その時は殺すから、と何の衒いもなく言ってのける。
女は怖い、と木の影から出てきたスペランカーは思った。
従わなければ自分は殺されるだろう。ただ。
自分に女を犯すような体力があるのだろうか?
名前 橘千晶【メガテン3】
行動目的 ゲームに乗り、戦う。できるなら一対一で。犯すのは誰かに任せる
所持品 T字剃刀、シェーバー、へんげのつえ(後述)【ドラクエ3】
現在位置 大陸西側の山
名前 スペランカー【スペランカー】
行動目的 死にたくない。生き延びたい
所持品 なし
現在位置 大陸西側の山
変化の杖について
原作と違い、変化できるのは一人だけ。一人につき一日三回。変化する為には
自分の変身したい物を頭に強く、細部まで思い浮かべられなければならない。
変化は数時間の間続くが、若干のタイムラグがある。任意に変化を解く事も、
変化を繰り返す事も可能。モシャスではないので他人の精神的技能に依存する能力を使用できない。
肉体的身体能力は変化した対象と同一になる。自分の精神的技能を使うためには
元の姿に戻る必要がある。
サイズが違いすぎるものには変化できない。
【リノア(FF8) 脱落】
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