ふたりいっしょじゃだめですか?






「はあああぁぁぁぁ……」
レーベ村の民家。なるべく人目につかない影になっている場所に座り込み京子は5度目の溜息をついた。
上を見上げると真っ青な心も晴れ晴れになりそうな空が見えてくる。
「はあああぁぁぁ……」
再び心の憂鬱を奮発して乗せた重い溜息を出す。
別に彼女は普段からこんなに溜息をつく人間ではない。むしろ明るいのだ。
「神様、仏様、キリスト様、私何か悪いことでもしたんでしょうか?」
小学校の頃先生の花瓶を割ったのを黙っていたことですか?
はたまた中学の頃、クラスのイケメンが女子の縦笛舐めていたことを言いふらしたことですか?
それとも『ごめんなさい、ショートカットでセーラー服が似合っててずっと待ってくれてる人が好みなんです』発言のことですか?
心当たりのあり過ぎて何が原因が分からない。
「ふぅ。ここでしょげても仕方がないですよね、今の私は“京様”なんですから」
彼女の言う“京様”。炎を扱う格闘家。草薙京。別名炎の貴公子。
残念なことに既に売却済みだが、彼女が心から愛している人物だ。
彼なら少なくともここでしょんぼりとはしていないだろう。
「そうだそうだ! まずは状況打破の為に行動! 何なら本家に負けない程美人を見つけて彼女にしちゃいましょう!」
と、気を取り直して動き出そうとした時だった。

どどどどどどどどどどどどどどどどどど……

「何、あの土煙……牛?」
京子は最初そう思ったが、よくよく見るとどうやら違うらしい。
まっすぐにこちらに向かっているので即座に姿形が分かってくる。
「……なーんだ人ですか……って、ひとぉ!?」
じーっと見ていていた京子は安心して焦った。搭載されている危機察知レーダーがとてつもない勢いでアラームを鳴らし始めている。
しかし、表向きに死角となっているこの場所をあんな遠くから発見できるとは、随分と立派な視力の持ち主だ。
日本野鳥の会に所属している人間なのだろうか?などと、余計な詮索を京子はしてしまった。

「やばいです! まずいです! ここは戦術的撤退をーー!」
京子の判断は早かった。
流石に相手も500メートル徒競走の終盤に入ったせいか勢いも弱まっている。今なら何とか逃げれるかもしれない。
「とぅおつげきいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーー!!!!」
だがその時、長年に渡って培われていたレーダーのアラームがピタリと止んだ。
「すいませんすいませんマジすいません、俺だってこんな真似したくないんです本当です嘘じゃないんです!」
「……」
「言わないで下さい! 頼むから何も言わないで下さい! 俺だって新婚初夜まで貞操を守るのが相手への礼儀派なんすよ!」
「……」
「色々とこちらにも事情があるんです! だからお願いしますこの通りですやらして下さーーーい!!」
「……」
10メートル程あった距離を一気に縮め、滑り込み一番自分を押し倒してきた男に京子は思った。
――――今日は天中殺か何かですか?
「………あれ?」
一通りわめき散らし改めて京子の顔を見た男は呆けた声を出している。
「……」
そして次の台詞で地雷を踏んだ。
「草薙さんどうして女の子になってるんですか!? まさか水を被るとそうなびゅべぶるぅっっ!!?」
ズッガーーーーーーーーーーーーーーン!!!
カウンター気味に男の鼻先にめり込んだ拳の威力は凄まじく、きりもみ回転しながら彼は地面に叩きつけられた。


「本当にすいませんでした……」
30分後、男――矢吹真吾は、正座をさせられ頭を下げていた。
「真吾……テメー何馬鹿なことやってんだコラ」
そして京子にぎゅうぎゅうと足で踏まれ説教されていた。
「大体なぁ、謝りながら女を口説く馬鹿がどこに居るんだ!? 男ならもっと堂々とやれ!
 だからプロフィールの大切なものから彼女が抜けちまうんだぞ、このヘタレ!」
「はい、仰るとうりっす……それで、何で女の子になっちゃたんですか?」
ちなみに真吾は目の前の人間が草薙京じゃないとまだ気づいていない。遊ばれているのにも気づいていない。
――勝手に人を犯そうとしておいてコレだ。どうしてくれよう。
そう思いながら、引きつった笑いを押さえて京子は溜息をついた。

「はあ……まだ判らないんですか?」
「え、え、はい?」
「やっぱり忘れちゃってる?」
「………。………あー……ああ! コスプレイヤー京子、さん?」
「そうです、全く本物とコスプレを間違えるなんて、京様の弟子としてまだまだですよ?」
ニヤリと笑いながら見下ろす。金魚の様にパクパクと口を開けてる馬鹿面を。
「騙すなんて酷いじゃないっすか! ていうかさっきのは演技じゃなくて素じゃないんすか!?」
そう叫ぶ真吾に京子は腕を組んでしばし熟考し、やがて、ぽむ、と手を叩いてこう言った。
「まあ、アレです。やはり京様に近づくにはこれ位の渇が入れられなきゃが駄目だと思うんです。つまんないこと気にすると知恵熱が出ますよ?」
「うわぁ京子さん、自己中って言葉知ってるんですか? 誠心誠意でプレゼントフォウユーします」
切って返すように真吾は言うが、京子はニコニコと笑って取り合わない。
「ていうか俺、一応襲う人としてここに連れて来られたんすよ? 危険なの分かってます?」
余りにも舐められている気がしたので念のため真吾は聞く。
「そうでしょうか? 真吾くんに私をどうこうするのは無理だと思いますよぉ?」
あくまで丁寧口調で笑顔なのは変わらない。だが、明らかに遊んでいる感が拭えない。
「へ、へえ……だったらさっきの続きしますよ。やっちゃいますよ。いいんですか?」
両手をわきわきさせながら一歩二歩距離を近づける真吾。一応体力的には真吾の方が上なので、本気になれば力づくでどうとでもできる。
だがそれを見た京子は、
「……眼科ですか? それとも脳外科ですか?」と、可哀想な子を見る様な顔で呟いた。
その意味不明な言葉に真吾の足が止まる。
今ここで京子を襲うのと、目か脳に異常があると思われることに何の繋がりがあるのか判らず考える真吾。
それを見ながら顔からニヤニヤという効果音を出す京子。

「………。
 ………………。
 ……………………。ハッ!!!」
やっと京子の真意に気づいた真吾は驚愕した。クスリと嘲笑が聞こえる。
「お気づきですか? 私は今、誰の格好をしていますか? 真吾くんはさっき、私を誰と間違えましたか?」
「く…草薙さ…」
「そう! そのとーり!! 故にこの姿の私に欲情出きて? 師匠と同じ服装の私を汚せられるのかしらねぇええっ!!」
ズッギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
「ぬ、ぬおああああぁぁぁぁ!! 無理っ、不可能っっ、インポッシブルだっっっ!!!!」
妙に高飛車口調の京子に誇らしく指を指され、その場に崩れ落ちた真吾はダンダンと地面を叩く。それは敗北の瞬間でもあった。
「俺にはできない……ノンケでも食ってしまう様な駄目人間な真似など……っ!」
第三者から非常に馬鹿らしいやり取りだが、あくまで本人達は真剣だったことを付け加えておく。

「…で、これからどうするんすか?」
「決まってます、この状況を何とかするしかない! まずはそれからです」
「何とかって言われてもなぁ…ここが幻で作られた世界っていうのは分かりますけど」
「「……うーん……」」
結局二人して禅でも組むがごとく座り、顔を合わせながら悩む。
あの主催者の少女を何とかするには、戦力的にも圧倒的に不利なのは目に見えている。
それに他の参加者だって男女問わず何をしてくるか分からない。逃げ道が分かってもその前に脱落しては意味が無いのだ。
時が流れていき、沈黙だけが続く。


ぽくぽくぽく、ピカッ!

「はい矢吹隊長、考えがあります」と、片手をあげる京子。
「何で一休さんから豆電球に……まあ、それはいいか。どんな意見っすか?」
「自分の身を守る為にまずは特訓した方がいいと思いまーす」
「なるほど、まずは生き残らないといけませんからね。それは同感です」
出てきた意見を言葉のとうりに受け取った真吾は深くうなづく。
「分かりました、だったらまずは京子さんのパワーアップの為に俺が普段からやっているトレーニング方法を教っぶりぇふ!」
台詞の途中で放り投げられた学ランやらシャツやら靴やらの直撃を顔面に受けて、真吾はぶっ倒れそうになった。
「へ? コレ何で……」
すか、と真吾は言葉を続けようとしたが続けられなかった。
話の相手がトランクス一丁で赤い靴下を脱いでいたからだ。

何故特訓で脱ぐ。
何故グローブや靴下まで脱ごうとする。
何故ノーブラ。
何故下がトランクス。
――――――。
混乱してフリーズした脳を何とか再起動させて、真吾は自分が置かれている状況を把握しようとしている。
「いっ、いいいや、いやいいえいあいゆあやいあいああ!!??」
そして間の抜けた叫び声を出してビキリと固まった。
「……? 京様ってトランクス派じゃないの?」
「あのっ、何っ、せ、せせせせつせつ説明を要求ししましままっっ!!」
「何って……特訓ですよ特訓。真吾くんあまりこういうの慣れてなさそうだし、私もどこら辺が弱点かわからないんですよね。
 だからここはギブ&テイクでお互い経験値稼ぎ、超一石二鳥の作戦だと思いません?」

「いやいや、経験値ってどこのパラメータなんですかっ! 京子さんの脳内世界で理論出さないで下さい!」
「嫌なんですか? 真吾くんのためになるかと思ったんですけど……」
栗色の前髪を揺らし小首を傾げながら聞いてくる、しかもど真ん中直球。
ここまで身体はってもらわれると逆に断りづらい。というより断ったら色々と負けな気がする。
(……まあ、ルールがルールなだけにいざという時に困るかもしれないよなぁ)
「ここまで脱げば京様を連想しないでしょうし、練習台だと思って深く考えないで下さいよ、ね?」
「……わかりました。かなり不本意ですが男矢吹真吾、その特訓付き合わせて頂きますっ!」
「よーしっ、その意気その意気! お互い頑張っていきましょう!」
バンバンと背中を叩かれた真吾は正直複雑な気分だった。





「はあああぁぁ……」
一時間前の京子と同じ位深い溜息。といっても、それを吐いたのは京子ではない。
「……バンダナ、バンダナ……あれー? バンダナが無い……」
その後ろできちんと服を着直した京子が何やら探し物をしている。
「やっちまいましたよ、草薙さん」
正直、色々と頭が痛くなる様な経験だった。本当に頭が痛くなるかと思った。
実際に負担がかかったのは頭では無いのだが、そこはまあ考えないでおく。
(……キツイっていうか、よく入ったというか……まさかあんな無茶な催促されるとは思わなかったっすよ、いやマジで)
さっきまで血やら粘膜やらに塗れていたある一部分を見ながらそう思う。一応ふき取ったがやはり拭いきれていない部分もある。
(………!? うっわ、やべえ!)
回想してたら無意識に下半身に血が向かっていた様だ。自分の超反応に前かがみになりながらも真吾は正直呆れていた。

「すいません、私のバンダナ知りませんか?」
「えっ、いいいやそのあの!」
神のタイミングで後ろから覗き込む京子。当然超反応が見られてしまうので慌てる真吾。
「……」「……」

「あの、京子さんすいまs「嫌です」

「まだ何も頼んでないじゃないっすか! ていうか京子さん最初からバンダナ付けっ放しですよ!」
「何ですと!? どうしてそこを突っ込まないんですか! 何の為に素っ裸になったと思うんですか!?」
「いやーバンダナまで外すとさすがに京子さんぽく見えないというか何というか……」
「……」「……」「………」「………」
チラチラと下半身に向かっている視線に耐えられなくなり真吾が口を開こうとした瞬間、
「わかりました、次の選択肢から選んで下さい」
真吾の目前に5本の指を突きつけ京子はこう言った。
「@手、A口、B胸、C足、D見てるだけ。何番がいいですか?」

真吾が選択肢を決めたのは1分25秒後だった。まだまだ彼には経験が足りないらしい。

 名前 コスプレイヤー京子 【KOF】
 行動目的 脱出方法を探す ついでに彼女も作る
 所持品 銀製の鎖(長さ1m50p、首輪に取り外し可能)
 現在位置 レーベ村民家の中

 名前 矢吹真吾 【KOF】
 行動目的 脱出方法を探す
 所持品 なし
 現在位置 レーベ村民家の中


ひとりでやっちゃだめですか?



――ここは一体何処なのだろう。 桃色の髪を風に揺らしながらレナは平原を歩いていた。 空を見上げると、そこには綺麗な蒼が広がっている。あの中を飛龍に乗って飛べたらどんなに気持ちいいだろう。 今すぐ私をここから連れ出してくれたらどんなに楽になれるだろう。 あの少女――確か名前はリリスといっただろうか――の言ったアトラクションの舞台ということは分かる。 だが、この美しい景色の中で淫靡でいて残酷な狂宴が行われるとしたら、それはとても悲しいことだ。 「どうか無事でいて……クルル」 レナはかつて旅をした仲間の名前を呼ぶ。 かつて数々の困難を乗り越えてきた仲間も今はどこでどんなことになっているかさえ分からない。 そして、きゅっと両腕を胸に持っていき眼を閉じながらもう一人の名を呼んだ。 「……姉さん」

ふと前方に村らしきものをレナは発見した。
今は少しでも手がかりがほしい。何かあるかもしれないとレナは探索を始めた。
人の気配など無いように思えるが、どこに誰が居るかわからない。建物の影に隠れながら慎重に移動する。
「……っ……ぁ……」
!?
(……人の声?)
辺りを見回すが人の気配は無い。だが、確かにそれらしきものが聞こえたのだ。
(…確か…この民家から……)
民家らしき建物に近づき、こっそりと開いていた窓からそーっと覗き込む。
(……っ!?)
そこには予想できなかった光景が繰り広げられていた。

「……それで、ど、どうですか?」
「普通に揉むのは割と平気みたいですね。あ、でも右の方が摘まれるのに結構弱いと思います。
 後はうなじとへそと内股と足の小指の裏……んー、何か弱点多すぎじゃないっすか?」
部屋に居るのは若い男女が二人。年が若いので少年少女といった方が正しいか。
ここからでは顔がよく見えないが、少年の方は首を傾げていながら何かの手帳を見ている。
「う、うるさいですっ。そこら辺は気合で何とかしますっ!」
対する少女の方はここからでもよく見える。何故か堂々と全裸だ。
(あ、あの人……)
レナがこの世界に来る直前、彼女の声で眼が覚めたのを覚えている。
(それじゃ、横に居るのがキョウサマとかいう人なのかしら?)
出て行って声をかけてみたいが、横に居る人物とどういう関係か気になるしさすがに今は不味い様な気がする。
時間を見計らおうとここから立ち去ろうとしようとした時、

「え、ちょ……ひゃあ!」
「……ちゅ……んむ……んー、やっぱり舐められる方が弱いっすね」
思わず叫びそうになったレナは咄嗟に両手で口元を押さえ、その場にしゃがんだ。
「こ、こら、誰がもう一度やっていいって……っくうん!」
わざと音を立てているのか秘裂が舌で蹂躙される音がここまで聞こえてくる。
「あ、スイマセン。ちょっと確かめてみたいことがあるんですけどいいっすか?」
「……ん、う…何?」
「多分京子さんが一番弱いのってここの裏側ですよね」
「え、あ、クリトリス? ……そこは、ちょっと、厳しいです」
「だから思ったんですけど、こうやってから……」
「ひぅっ……!?」
「それでさっき言った右の方を……」
「ひぁっ、あ、くあっ、ちょっ、それ止め……あっ、あああああッ!」
嬌声というよりは叫び声に近い声が響く。
何が行われているかここでは全く見えないが、あまり知識の無いレナでも想像はついた。
「えーとメモメモ。別々の弱点を同時に攻撃されるのが一番危険……と、オッケー。
 大分参考になりましたよ……って、京子さん大丈夫ですか!?」
今度はペチペチと頬を叩いている音が聞こえてきた。

(………)
レナは動けないでいた。
見てはいけないものを見てしまった罪悪感。
それと同時に何やらちりちりと疼いている。
何やら部屋の中では騒がしいやり取りがされていたがレナの耳には全く届かない。
そろそろと無意識に右手を伸ばし胸全体を手のひらでさする。
胸を撫でる手には柔らかな乳房の感触が伝わり、身体には吸い付くような僅かな刺激が走る。
「……はぁ……っ、んん……」
もっと動かしたくなってくると服の存在が煩わしくなってくる。レナの服がするりと脱げ落ち、薄い肩と淡い膨らみが露出した。

「ん、ちゅっ…れろ、はむ。んっ、んんー……ぷはっ」
グローブに包まれた甲の部分を舌先でなぞり、唾液でぬめる露出した指先を口に含む。
そのまま指を2、3本口内に収め更に唾液と追加して絡める。
「……マジでやる気ですか」
その言葉に、一旦指から口を離した京子は悪戯っぽく笑った。
「はい、大マジですよ。だからちょっと手伝って下さい……ずぢゅっ、ん、ちゅぅっ……!」

いつだったか戦闘で軽く指を切った時、姉のファリスに指を舐められて酷く混乱した。
部屋の中の光景を見ながらレナはそのことを思い出していた。
指先に触れる柔らかい感触。じっと見つめる長い睫毛に縁取られた瞳。かすかに触れた柔らかい長い紫色の前髪。

「……姉さん」
とろんとした瞳で頬を上気させレナは切なそうに呟いた。
手を疼きの収まらない所、下腹部へとあてがう。

そのまま太股をなぞって服の下にある下着に指を這わせる。
「…んっ!」
膣口らしき所を指でなぞり軽く回す。どこか湿った音が聞こえるの気のせいにする。
「んくっ、あぁっ……つぅう……」
胸は指で押すだけで形を変えて先端を尖らせていた。
ふと、部屋の中の方に視線を向けたレナは眼を見開く。
愛液をびゅるびゅると噴き出している秘裂を押し開き、飲み込まれていく明らかにオーバーサイズな片腕が見えた。

「ひ、ぎ、……〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
「……う……あ…」
まるでつぶされてしまいそうな強烈な圧迫感を腕に感じて真吾は声を上げた。
だんだんと指が埋っていき腕が秘裂を割って挿入される光景は、快楽を誘う様にもグロテスクにも見えた。
シーツに置かれた両手が白くなるほど強張り、爪をたててシーツを引っ掻き回す。
「大丈夫ですか、京子さん!?」
「ぅう、あっ、ばっ、か、下手に、うごか、あ、あぎゅううぅっ!!!」
思わず不安になり問いかけようとして覗き込んだ途端、京子は苦しげな声を上げた。快楽よりも苦痛の色が濃い。
「す、スイマセン! ……って、え、えぇ!!??」
鮮やかな真紅の雫が太腿を伝っているのが真吾の視界に入る。
「…まさか、どこか裂けたりとか!?」
「きっと……初めて、だから、じゃっ…ぅんッ!」
さらりととんでもないことを口にする。
「そ、そういえば何か破れる感触が……」
「ら、らぶん、それ…あ、やぁ…〜〜〜〜〜っっっ!!!」
頭を振ってひたすらに耐える。息をするだけでも痛みが響くのか、会話すらままならない。

「……も、もうやめた方がいいんじゃないですか?」
「や、やらっ……つぅ…それは、やだッ……!」
京子はぼろぼろと涙を流しながら哀願している。
空気を求めて喘ぎながら挿入されていない方の腕を求めながら呟く。
「もう、少しだけ……おねが、いぃ……」
「…分かりました」
京子の求めていた片腕を差し出し、思う存分摩らせてやる。これだけでも精神安定剤になるのだから不思議だ。
「あ、あ…グローブ、京さまの、京さまのぉ…」
虚ろな視線を向けながら、涎を垂らしながら必死にグローブを両手で撫でる。
「ぐ……」
容量以上のものを無理矢理に捻じ込まれた裂け目から与えられる感覚は、快楽とは程遠く寧ろ血の気が失ってくる。
その感覚に真吾は眩暈がしそうになったが構わず腕を動かし始めた。
「ひひゃうっ、んぅうっ、ぐろーぶがはいっていきゅよぅう……」

「……ぅう……つ。ひぅ……っ!」
異様な光景にレナの理性は飛びそうになっていた。
完全に脱げた衣服からはみだした胸の先端にある乳首は尖っており、秘部からは彼女が指を動かすたびにぐちゃぐちゃと音が響いていた。
荒々しい息を抑えるようにするがその間も手は止まらない。
既に股間部分は湯気が出そうなほど潤っており愛液がとろりと糸を引きながら漏れ出している。
「や、ひんごく……ろこ、ろこさわって、あきゅううぅぅっ!!?」
「こうやって気を紛らわせないと、ショック死するかもしれないじゃないですか!」
聞こえてくる声に興奮してさらに指を押し進めると、安々と飲み込んでいった。
レナは空いた手で乳房を押し潰す様に揉もうとした。が、次の瞬間その手が止まる。
「……どうしたの、真吾くん?」
「いや、何かさっきから誰かに見られているような……」
(……!!!)

思わず部屋の中から見えない位置へ這いずる様に移動する。
ぢゅぷ、という音と共に指が引き抜かれてそこから愛液がぼたぼたとしたたり落ちた。
秘部を見ると膣口が口を開けたように広がり、ピンク色の肉がヒクヒクと動いている。隠しようがないのは火を見るより明らかだった。
「……ん〜、気のせいっすかねぇ?」
部屋の中からは見られないが、窓から身を乗り出して見回せば一目瞭然だろう。
(どうしよう、こんな、こんな姿見られたら……!)
レナの頭は既にまともな判断が出来ず、ぐるぐると思考が歪みながら浮かんでは消える。


ここであの二人に見つかったら笑われて軽蔑されてしまう。
姉であるファリスにも知られ変態と罵られてしまう。
いやその前に、彼らに自分の恥ずかしい所を晒し者にされて思う存分に嬲られる。
「あははは、すっごいビクビクしてるじゃないっすか」
「えへへ、この人おしりの穴まで見られて感じてるよ?」
王女の身分でありながら性器やじっくりと見られてしまい、笑われる。
どの位いやらしくて淫乱なのか隅から隅まで調べられて、その度に喘ぎ声を上げ涎を垂れ流す。
もう恥ずかしくて身体が芯から熱くなっているのに。それが堪らなくなってきてどうしようもない。
そして我慢ができなくなって彼らの前で自分を慰めてしまうのだろう。性器にもアナルにも指を入れて、そしてもっと軽蔑されて……


「んふあぁあっ!!」
妄想から気づいた時には既に指をさっきよりも激しく動かしていた。

「や、っあ、あううっ! あ、あ、あ、あぁああうっ!」
ひくひくと身体を動かしながらレナの眼は力を失い床に倒れこむ。
「み、見られちゃう、私、私みられちゃうよぉ……ひっんっ!」
それが分かっていても、いや分かっているからこそ指が止められない。
既に二人はこちらを気にしていないのにレナは気づかなかった。もうそんなことは頭に入っていなかった。

「あぁあ、あひぃっ、姉さん、ねえさぁんっ……ふあああぁぁ!!」
脳裏の奥で白い火花が散ったような衝撃があり、レナの意識はそこで途絶えた。


「ぶふぅーーっっ!?」
「のわっ! 何やってんすか!?」

興味本位で舐めたモノのマズさに京子は思わず噴出しのたうち回った。
ちなみに例によって素っ裸である。今度はバンダナも外したが靴下を脱ぎ忘れる大ポカをしている。
「…ぐ、ぐぞま゛、げま゛ず……」
「何てモン口にしてるんすかっ、そこまでサービスしなくていいっすよ!」
そうでなくても勢い余って色々と汚してしまっている。これ以上は真吾にとって申し訳ないレベルだ。

「あははは、それにしても凄い汚れちゃいましたね……でもこれでグローブの件はチャラですよ?」
おもちゃの様に指で精液を絡めながら笑う。真吾にとっては目に毒というかやり場に困る光景だ。
「……あの、本当に良かったんですか?」
草薙京本人が無理だから、せめて関連のある物に処女を捧げる。健気と言うか飛躍しすぎと言うかそんな精神を前に言えなかった事柄を言ってみた。
「このグローブ、確かに前の持ち主は草薙さんですけど俺だって使いこんでるんすよ?
 貰ったその日から殆ど外してませんから、俺の汗とか涙とか血とかそんな感じのエキスが染み込んでて……」
「アーアーきこえなーい」
「うわ、そう来ましたか」
「そんなことよりも真吾くん、お願いだからこの特訓のことは京様には絶対に黙ってて。ね?」
「分かってますよ、誰にも話しませんから。むしろ話せないっすよこんなこと」
顔を合わせてくすくすと笑いあう二人。彼らの口から真実は誰にも知らされないだろう。



だが彼らは知らない。この特訓が一人の少女を奴隷へ堕としたということを。

【レナ(FF5) 脱落】



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